御器谷法律事務所

拘束条件付取引


1. 拘束条件付取引とは、
 排他条件付取引再販売価格維持行為のほか、事業者が相手方とその取引の相手方との取引その他相手方の事業活動を、独占禁止法上不当に拘束する条件をつけて、その相手方と取引することを意味します(一般指定第13項)。
 この拘束条件には、販売地域の制限としてのテリトリー制、販売先の制限としての一店一帳合制、販売方法の制限等が典型的なものとしてあります。
 拘束条件付取引は、契約自由の原則により行れることがあり、独禁法上公正競争を阻害するおそれがあるものとして「不当性」が認められる場合に、不公正な取引方法と認められます。そして、この公正競争阻害性を判断するには、拘束の形態やその程度のみならず事業者の市場における地位等を考慮し、具体的な行為態様に応じた具体的ファクターが考えられるものとされています。

2. 販売地域の制限
別稿のテリトリー制をご覧下さい。

3. 販売先の制限
 メーカーが製造する製品は、一般的にはメーカー→卸売業者→小売業者→一般消費者と流通することが多くあります。
 このような流通過程において、メーカーがその取引先である卸売業者に対して、その取引先である小売業者を指定し、その小売業者は定められた卸売業者とだけしか取引できないようにする制度があり、これを「帳合取引」(ちょうあいとりひき)と言っています。特にこの中でも小売業者の仕入先である卸売業者を一社に特定するとき、これを「一店一帳合制」と呼んでいます。
 一店一帳合制は、一般的には有力メーカーにおける流通の系列化の際利用されることが多く、製品の品質管理やアフター・サービスの実施には有用であるものの、独禁法上は取引先選択の自由が奪われ同一ブランド内の卸売業者間の競争や小売業者間の価格競争が減殺されるおそれがあります。
 従って、帳合取引においては、価格維持のおそれがみられる場合には公正競争阻害性を有するものと考えられています。
 特に公取委で従前問題となった事例には、帳合取引が再販売価格維持行為と結びついたものがあります。

4. 販売方法の制限
 公取委は、この点につき「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」(流通・取引慣行ガイドライン)において、次のように述べています(要約)。
 メーカーが小売業者に対して、商品の説明販売を指示する等により販売方法を制限することは、商品の安全性の確保、品質の保持、商標の信用の維持等、当該商品の適切な販売の合理的な理由が認められ、かつ、他の取引先小売業者に対しても同等の条件が課せられている場合には、それ自体は独禁法上問題となるものではない。
 しかし、メーカーが小売業者の販売方法に関する制限を手段として、小売業者の販売価格、競争品の取扱い、販売地域、取引先等につていの制限を行っている場合には、別途それらについての考え方に従って、排他条件付取引や再販価格の拘束や拘束条件付取引に関する違法性の有無が判断される。

5. 判例、審決等
(1) 資生堂東京販売事件-最判平成10年12月18日
「メーカーや卸売業者が販売政策や販売方法について有する選択の自由は原則として尊重されるべきであることにかんがみると、これらの者が、小売業者に対して、商品の販売に当たり顧客に商品の説明をすることを義務付けたり、商品の品質管理の方法や陳列方法を指示したりするなどの形態によって販売方法に関する制限を課することは、それが当該商品の販売のためのそれなりの合理的な理由に基づくものと認められ、かつ、他の取引先に対しても同等の制限が課せられている限り、それ自体としては公正な競争秩序に悪影響を及ぼすおそれはなく、一般指定の13にいう相手方の事業活動を『不当に』拘束する条件を付けた取引に当たるものではない。」
(2) 和光堂事件-最判昭和50年7月10日
「公正な競争を促進する見地からすれば、取引の対価や取引先の選択等は、当該取引当事者において経済効率を考慮し自由な判断によって個別的に決定すべきものであるから、右当事者以外の者がこれらの事項について拘束を加えることは、右にいう『取引』の拘束にあたることが明らかであり、また、右の『拘束』があるというためには、必ずしもその取引条件に従うことが契約上の義務として定められていることを要せず、それに従わない場合に経済上何らかの不利益を伴うことにより現実にその実効性が確保されていれば足りるものと解すべきである。」
(3) 富士喜・江川企画事件-最高裁平成10年12月18日第三小法廷判決
「メーカーや卸売業者が販売政策や販売方法について有する選択の自由は原則として尊重されるべきであることにかんがみると、これらの者が、小売業者に対して、商品の販売に当たり顧客に商品の説明をすることを義務付けたり、商品の品質管理の方法や陳列方法を指示したりするなどの形態によって販売方法に関する制限を課することは、それが当該商品の販売のためのそれなりの合理的な理由に基づくものと認められ、かつ、他の取引先に対しても同等の制限が課せられている限り、それ自体としては公正な競争秩序に悪影響を及ぼすおそれはなく、一般指定の13にいう相手方の事業活動を『不当に』拘束する条件を付けた取引に当たるものではない。」
「特約店に義務付けられた対面販売は、化粧品の説明を行ったり、その選択や使用方法について顧客の相談に応ずる(少なくとも常に顧客の求めにより説明・相談に応じ得る態勢を整えておく)という付加価値をつけて化粧品を販売する方法であって、・・・被上告人が対面販売という販売方法を採ることにはそれなりの合理性がある。」「そして、被上告人は、他の取引先との間においても本件特約店契約と同一の約定を結んでおり、実際にも相当数の資生堂〔花王〕化粧品が対面販売により販売されていることからすれば、上告人に対してこれを義務付けることは、一般指定の13にいう相手方の事業活動を『不当に』拘束する条件を付けた取引に当たるものということはできないと解される。」
(4) 富士フイルムX線フィルム事件-公取委昭和56年5月11日勧告審決
「富士は、エックス線フイルムの販売に当たり、正当な理由がないのに、富士エックスレイに対し、その取引先販売業者に販売価格を維持させる条件をつけて同社と取引しているものであり、また、富士エックスレイは、エックス線フイルムの販売に当たり、正当な理由がないのに、その取引先販売業者に対し、その取扱商品、販売地域及び販売価格を拘束する条件をつけて当該販売業者と取引しているものであって、これは、いずれも、不公正な取引方法(昭和28年公正取引委員会告示第11号)の8に該当し、独占禁止法第19条の規定に違反するものである。」
(5) 東北セルラー事件-公取委平成9年11月5日勧告審決
「東北セルラーは、東北セルラーが販売するセルラーブランド電話機について、取引先代理店が新聞折り込み広告、新聞広告、店頭等において表示する価格を、また、取引先代理店を通じて、取扱店が新聞折り込み広告、新聞広告、店頭等において表示する価格を、それぞれ制限していたものであり、これらは、取引先代理店の事業活動を不当に拘束する条件を付けて、当該相手方と取引していたものであって、不公正な取引方法(昭和57年公正取引委員会告示第15号)の第13項に該当し、独占禁止法第19条の規定に違反するものである。」
(6) ホビージャパン事件-公取委平成9年11月28日勧告審決
「ホビージャパンは、取引先卸売業者にマジックを供給するに当たり、並行輸入品取扱業者等にはマジックを販売しないようその事業活動を不当に拘束する条件をつけて当該卸売業者と取引しているものであり、これは、不公正な取引方法(昭和57年公正取引委員会告示第15号)の第13項に該当し、また、ホビージャパンは、マジックについて、正当な理由がないのに、小売業者に対して希望小売価格を維持させる条件をつけ、また、取引先卸売業者に対して同卸売業者をしてその取引先小売業者に希望小売価格を維持させる条件をつけ、マジックを供給しているものであり、これらは、それぞれ、前記不公正な取引方法の第12項に該当し、いずれも独占禁止法第19条の規定に違反するものである。」
(7) 山口県経済連事件-公取委平成9年8月6日勧告審決
山口県経済連は、会員農協に農薬及び肥料を供給するに当たり、会員農協とこれに農薬又は肥料を供給する自己の競争者との取引を不当に拘束する条件を付けて会員農協と取引しているものであって、これは、不公正な取引方法(昭和57年公正取引委員会告示第15号)の第13項に該当し、独占禁止法第19条の規定に違反するものである。
(8) 旭電化工ほか事件-公取委平成7年10月13日勧告審決
旭電化工業株式会社はエポキシ系可塑剤について、オキシラン化学株式会社はエポキシ化亜麻仁油について、「長春石油化学股份有限公司に対し、ライセンス契約終了後における我が国向けの供給を制限していたものであり、これは、ライセンス契約の相手方の事業活動を不当に拘束する条件を付けて、当該相手方と取引していたものであって、不公正な取引方法(昭和57年公正取引委員会告示第15号)の第13項に該当し、独占禁止法第19条の規定に違反するものである」。

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