株式の譲渡制限がある会社において、会社が譲渡の相手方を指定したばあいは、譲渡通知の日から10日以内であっても先買権者指定請求を撤回できないとされた事案
《事案の概要》
(1) Y(株主)が会社に対し、その保有する株式につき承認請求(商法§204ノ2T)
(2) 会社は、Yの譲渡を承認せず、Xを先買権者に指定する旨Yに通知(§204ノ2X)
(3) Yが、上記会社、Xに対して(1)の請求撤回の意思表示
(4) Xが裁判所に対し、本件株式売買価格決定請求(§204ノ4)
《原決定》
Yの撤回の意思表示によりXの売買請求により本件株式について売買が成立したものとは認められない、と判断。Xの請求を棄却。Xが即時抗告。
《本決定の判断》
原決定取消。
本件株式の売買価格について十分な審理をさせるため、本件を差し戻し。
(結論)Yの本件会社やXに対する先買権者指定請求の撤回は何ら効力のないものであり、Xの売渡請求によって株式の売買が成立したものと認めるのが相当であると考える。
(理由)
1. 株式の譲渡制限がある会社において、株主による株式の譲渡承認請求と共になされる先買権者指定請求は実質的にみて株式売却の申込みに当たり、会社から指定された先買権者による売渡請求はこれに対する承認に当たるものとみることができ、この2つの意思表示が合致することによって株式の売買が成立するものと考えられる。
2. 民法は、承諾期間を定めて申込みをした場合には、承諾期間中は撤回を許さず(521条1項)、承諾期間を定めずに申込みをした場合にも、相当の期間は撤回できない旨規定する(524条)。そして、後者の相当の期間とは、被申込者が諾否を考慮し、かつ承諾の通信をするのに必要な時日を基礎として決すべきものと解されている。
この申込みの拘束力の法理は、株主が株式の譲渡承認請求等をし(申込み)、会社が株主の希望する者への譲渡を承諾せず先買権者を指定し、先買権者が売渡請求(承諾)するという本件の場合にも相当する。
3. 先買権者が株主に対する商法204条ノ2第5項の通知の日より10日以内に株主の売渡請求することができる旨規定している商法204条ノ3第1項の規定は、先買権者に対し、指定を受けてから10日以内に株式を買うか否か決定するための考慮期間(承諾期間)を付与したものと解するのが相当である。してみると、上記通知の日から10日間は株主の先買権者指定請求(申込み)は拘束され、その間は同請求(申込み)を撤回することが許されないということになる。