ストックオプション(一時所得)
| 米国親会社から付与されたストック・オプションの権利行使益が一時所得に該当するとされた事案 |
| 東京地方裁判所 平成15年7月29日判決 |
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《事案の概要》 原告の所得税申告に対し、被告が、原告に生じたストック・オプションの権利行使益が一時所得でなく給与所得に当たるとして更正処分等を行ったことから、原告が、これらの処分は違法であると主張し、被告である税務署長に対し、ストック・オプションの権利行使益を一時所得として算定した金額等を超える部分の取り消しを求めた事案。
《主な争点》 原告が自己の勤務する会社の米国親会社から付与されたストック・オプションの権利行使益である本件権利行使益が、給与所得、一時所得又は雑所得のいずれに該当するか
《本判決の判断》
原告の請求を認容
1.
ストック・オプションの権利を行使するものは、株価が多様な要因に基づいて変動することを前提として、株価の動向を予測しながら、自らの判断において、権利行使の時期を選択し、実行するのが一般的であると考えられる。
そのため、仮に付与会社から同一内容のストック・オプションを与えられたとしても、これを行使して得られる現実の権利行使益は、これを行使する者ごとに異なるものであり、個々の具体的な権利行使益発生の有無及び教授する権利行使益の額は、前述のとおりの多様な諸要因によってその時々に形成された株式の時価及び権利者自身の判断による権利行使の時期という、多分に偶発的、一時的な要因によって、定まるものである。
従って、原告に生じた本件権利行使益は、それが米国親会社から付与された本件ストック・オプションを行使して得られたものであったとしても、その具体的な経済的利益の額が上記のような諸要因によって形成された株式の時価の変動と原告自身の権利行使の時期に関する判断とに大きく基因するものであることを捨象し、これをもって米国親会社から原告に対して与えられた経済的利益であると評価することは、相当でないというべきである。
2. 原告が、親会社に対して労務を提供する義務を負っていたものとは認められないし、現実に、親会社との間で、何らかの空間的、時間的な拘束を受けて継続的ないし断続的に労務を提供する関係にあるとか、原告の子会社に対する勤労が、親会社に対する労務の提供と同視すべきような事情も認められないから、
仮に原告の勤務先以外の第三者である親会社から本件権利行使益の給付を受けたとしても、それが「雇用契約またはこれに類する原因に基づき使用者の指揮命令に服して提供した労務の対価として使用者から受けた給付」(最高裁判所昭和56年4月24日判決、所得税法28条1項【給与所得】)であるとは認めることはできない。
3. 上記のいずれの点からしても、本件権利行使益は雇用契約又はこれに類する原因に基づき使用者の指揮命令に服して提供した労務の対価として使用者から受ける給付に当たるとは認められない。
4.
本件権利行使益が、本件ストック・オプションに係る親会社の株価の変動及び原告自身の権利行使の時期に関する判断によってその発生の有無及び金額が決定付けられた、偶発的、一時的な性質を有する性格を有する経済的利益であることは前述のとおりであり、所得税法34条1項にいう「一時の所得」に該当するものというべきである。
さらに、本件権利行使益が労務その他の役務の対価としての性質を有しないことは前述のとおりであり、資産の譲渡の対価に当たらないことは明らかである。
したがって、本件権利行使益は、所得税法34条1項所定の一時所得に該当するものというべきである。
本件権利行使益が一時所得に該当することは上記のとおりであるから、本件権利行使益が雑所得に該当するものということはできない。
《関連判例》 ストック・オプションで得た利益を「給与所得」と認定した裁判例
・横浜地方裁判所平成16年1月21日判決
・東京地方裁判所平成16年1月30日判決