御器谷法律事務所
最高裁判所 平成22年6月17日判決
売買契約の対象となった新築建物に建て替えざるを得ないほどの重大な瑕疵があった場合に、被告となった工事施行者等において、買主が居住していた利益を損益相殺の対象とすることはできない。

《事案の概要》

《主な争点》
建物引き渡し後に買主が居住している利益をもって、損益相殺等の対象として損害額から控除できるか
[一審]建て替え費用相当額の損害を認定したうえ、損益相殺肯定
 (居住利益は、附帯請求の遅延損害金に見あう程度 →口頭弁論終結時までの遅延損害金との相殺)
 *Y主張によれば、居住利益は、
 仮住まい費用(月20万円)×5年10カ月(引渡時から二審の弁論 終結時)=1400万円
[二審]損益相殺否定 → 各1564万円余+遅延損害金の請求認容

《裁判所の判断》上告棄却 → 損益相殺否定
 「売買の目的物である新築建物に重大な瑕疵がありこれを建て替えざるを得ない場合において、当該瑕疵が構造耐力上の安全性にかかわるものであるため建物が倒壊する具体的なおそれがあるなど、社会通念上、建物自体が社会経済的な価値を有しないと評価すべきものであるときには、上記建物の買主がこれに居住していたという利益については、当該買主からの工事施行者等に対する建て替え費用相当額の損害賠償請求において損益相殺ないし損益相殺的な調整の対象として損害額から控除することはできないと解するのが相当である
 前記事実関係によれば、本件建物には、二(3)のような構造耐力上の安全性にかかわる重大な瑕疵があるというのであるから、これが倒壊する具体的なおそれがあるというべきであって、社会通念上、本件建物は社会経済的な価値を有しないと評価すべきものであることは明らかである。そうすると、被上告人らがこれまで本件建物に居住していたという利益については、損益相殺ないし損益相殺的な調整の対象として損害額から控除することはできない。」

裁判官宮川光治の補足意見
 「建物の瑕疵は容易に発見できないことが多く、また瑕疵の内容を特定するには時間を要する。賠償を求めても売主等が争って応じない場合も多い。通常は、その間においても、買主は経済的理由等から安全性を欠いた建物であってもやむなく居住し続ける。そのような場合に、居住していることを利益と考え、あるいは売主等からの賠償金により建物を建て替えると耐用年数が伸長した新築建物を取得することになるとして、そのことを利益と考え、損益相殺ないし損益相殺的な調整を行うとすると、賠償が遅れれば遅れるほど賠償額は少なくなることになる。これは、誠意なき売主等を利するという事態を招き、公平ではない。重大な欠陥があり危険を伴う建物に居住することを法的利益と考えること及び建物には交換価値がないのに建て替えれば耐用年数が伸長するなどと考えることは、いずれも相当でないと思われる。」     
以 上
 

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