御器谷法律事務所

6. 取締役の説明義務


1.
取締役等の説明義務とは、
 株主総会において、株主から特定の事項(報告事項や決議事項等)について説明を求められたときは、取締役らがこれについて必要な説明をしなければならないことを、一般的には意味しています(会社法第314条)。

2. 会社法の規定
(1) 会社法第314条
 取締役、会計参与、監査役及び執行役は、株主総会において、株主から特定の事項について説明を求められた場合には、当該事項について必要な説明をしなければならない。ただし、当該事項が株主総会の目的である事項に関しないものである場合、その説明をすることにより株主の共同の利益を著しく害する場合その他正当な理由がある場合として法務省令で定める場合は、この限りでない。
(2) 会社法施行規則第71条
法第314条に規定する法務省令で定める場合は、次に掲げる場合とする。
1  株主が説明を求めた事項について説明をするために調査をすることが必要である場合(次に掲げる場合を除く。)
 当該株主が株主総会の日により担当の期間前に当該事項を株式会社に対して通知した場合
 当該事項について説明をするために必要な調査が著しく容易である場合
2  株主が説明を求めた事項について説明をすることにより株式会社その他の者(当該株主を除く。)の権利を侵害することとなる場合
3  株主が当該株主総会において実質的に同一の事項について繰り返して説明を求める場合
4  前3号に掲げる場合のほか、株主が説明を求めた事項について説明をしないことにつき正当な理由がある場合

3. 判例等
(1) ブリヂストン退職慰労金決議取消請求事件
−東京地判昭和68年1月28日
 右に説示した点を取締役及び監査役の説明義務の面から検討する。
(一) 株主にとっては、利益処分は重大な利害関係を有する事項であり、取締役及び監査役への報酬額は株主への配当額に直接影響するのであるから、株主総会決議において個別の額や総額を決定しない場合、支給基準によって具体的な金額を知りうるのでなければ、本来利益処分の承認決議について賛否を決しがたいというべく、支給基準について説明を求めうるのは当然というべきである。
(二) そして、商法二六九条、二七九条一項との関係からも、支給基準を定めて取締役会等に一任することがお手盛り防止の趣旨に反せず、したがって株主の利益に反しない理由を説明する必要があるというべきであり、具体的には、2で説示した点からすれば、会社に現実に一定の確定された基準が存在すること、その基準は株主に公開されており周知のものであるか又は株主が容易に知り得ること、及びその内容が前記のようにして支給額を一意的に算出できるものであること等について説明する必要があるというべきである。
(三) 被告は、また、退職慰労金に関する内規に基づく慰労金額が本件総会時においては明示不可能であったか、又は調査しなければ説明しえなかったことを理由に、説明拒絶について正当の事由があったと主張するが、具体的金額が明示できないか、明示するには調査が必要な時は、その理由と、株主総会の場で明示しなくとも株主の利益に反しない理由とを説明すべきであり、被告主張の理由が説明義務を否定する根拠となるものではない。

(2) 九州電力事件
−福岡地判平成3年5月14日
 取締役等の説明義務を定める商法二三七条ノ三第一項但書において、「其ノ事項ガ会議ノ目的タル事項ニ関セザルトキ」は説明することを要しない、と規定している。すなわち、質問が当該総会の目的事項に関連するものである場合に取締役等の説明義務が生ずるところ、総会の目的には、決議事項のみならず報告事項も含まれるから、取締役等の説明義務は、右両事項に及ぶが、説明義務違反の存否は、個々の目的事項と質問との関係で論ずるべきである。
 すなわち、ある目的事項について株主が賛否の態度を決定するために通常必要な説明をすべき義務が尽くされなかったことにより、看過することのできない瑕疵が目的事項の決議に及ぼされるがゆえに、当該目的事項の決議が取り消されるのであって、仮に報告事項について取締役等の説明義務違反があっても、それによって当該取締役等に過料の制裁が課せられるのは格別(商法四九八条一項一七号ノ二)、説明義務違反という瑕疵がない別の目的事項の決議についてまで、これを理由に決議を取り消すことはできないと解するのが相当である。言い換えると、株主総会決議取消訴訟において、取締役等の説明義務違反が問題となるのは、それを理由として取消しが求められている総会の目的事項である決議事項に関連する質問に限られると解すべきである。
 説明義務の範囲・程度
 株主総会の権限は、決議により会社の意思を決定することであり、取締役等の説明義務は、株主総会における決議事項につき、株主が賛否を決するために合理的判断をなすために必要な資料を提供するところにあると解される。とすれば、取締役等の説明義務は、合理的な平均的株主が、株主総会の目的事項を理解し決議事項について賛否を決して議決権を行使するにあたり、合理的判断をするのに客観的に必要な範囲において認められるものと解すべきである。
 株主総会において、目的事項につき取締役等に対して多数の株主が説明を求めていれば、ある程度時間を要することがあっても、取締役等はこれに対する説明義務を尽くすべきである。しかしながら、株主総会も一つの会議体であって、議長は商法二三七条ノ四第二項に定める議事整理権に基づき、他の株主に質問の機会を与えることができるよう、また、合理的な時間内に会議を終結できるよう、各株主の質問時間や質問数を制限することができると解されるし、相当な時間をかけて既に報告事項の合理的な理解のために必要な質疑応答がされたと判断したときは、次の目的事項に移行すべく質疑を打ち切ることができるものと解される。

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