御器谷法律事務所

業務提携と独占禁止法の規制

1. 業務提携とは、
  一般的には、複数の企業が、その業務の一部である製造や販売、輸送、資材等の購入、部品の仕入、技術、開発、研究等につき共同して事業を行う合意を指すことが多いでしょう。
 この業務提携によって、企業はコストを削減し業務の合理化等を図れるメリットがあります。
反面、この業務提携によって、企業が販売価格を合意したり、市場の分割をすると独占禁止法上のカルテル(不当な取引制限)等となり重大な法令違反を惹起することにもなります。
 なお、業務提携は、その企業における「重要な業務執行の決定」と考えられる場合においては取締役会の決定事項とされています(会社法第362条第4項)

2. 業務提携と独禁法上の規制
(1) 業務提携を規制する直接の独禁法上の規定はありません。
しかし、業務提携の具体的内容如何によっては、独禁法が禁止するカルテル(不当な取引制限)、不公正な取引方法、私的独占に該当する場合がありますので、十分に注意しなければなりません。
 また、具体的な業務提携について、独禁法違反の有無を事前に確認するために公正取引委員会に相談することはよくあることです。実際、このような業務提携に関する相談は、公正取引委員会において「相談事例集」として公表もされています。
(2) 業務提携が独占禁止法上問題となるおそれがあるものを、カルテル(不当な取引制限)、不公正な取引方法、私的独占の順に概観してみましょう。
   1) カルテル(不当な取引制限)について
 企業間の業務提携によって最も懸念されるのは、価格カルテルや生産カルテル、さらに市場分割カルテルでしょう。業務提携により企業間において意思の連絡のもと価格や生産さらに市場分割について合意することはカルテルとなりますので十分注意しなければなりません。
 また、企業間で業務提携が行われている際に、その対象である商品や役務について官公庁の入札が行われるときは、入札価格やその入札条件を合意することは入札談合となりますので、決して行ってはなりません。
 このような価格カルテルや入札談合の成立については、参加企業間における情報の交換が「意思の連絡」とみなされることがありますので、この場合の情報交換は最小限のものとする、又は、完全な情報遮断(ファイアーウォール)を講ずることが必要となってきます。
  2) 不公正な取引方法について
 企業間の業務提携の具体的内容によっては、参加企業以外の企業を排除するボイコット、他者との取引を制限する拘束条件付取引、再販売価格維持行為、不当な取引妨害等の独禁法が禁止する不公正な取引方法に該当する場合がありますので、十分注意する必要があります。
  3) 私的独占について
 企業間の業務提携の具体的内容により、事業者が結合ないし通謀して、他の事業者の事業活動を排除又は支配することによって、市場における競争を実質的に制限することとなる場合には、独禁法が禁止する私的独占に該当する場合があります。
 この場合においては、業務提携をした企業の市場シェア、提携した業務の具体的内容、排除ないし支配された他の事業者の具体的状況、市場における支配力の有無等が総合的に判断されることになります。
(3) 業務提携の具体的内容如何によっては、企業間の業務についての共同という合意のみならず、この業務提携に端を発し、さらに子会社の設立や共同出資会社の設立、さらに合併等に発展することもあるでしょう。
 そして、そのような場合には、独占禁止法上は「株式保有の規制」や「合併の規制」等別途規制されることとなりますので、各該当箇所の規制をご参照下さい。

3. 業務提携に関する公取委の「相談事例集」
 業務提携と独占禁止法に関しては、公正取引委員会より「相談事例集」として公表されていますので、参考のためこれらをご紹介します。
 いずれも公取委のホームページの「相談事例集」の業務提携に関するものと思われるものの要旨を引用しています。
(1)平成12年度-輸送用機械の資材及び部品の共同購入
 競争関係にあるメーカーが合理化を推進するために、共同で資材及び部品の購入を行うことは、独占禁止法上問題ないと回答した事例
  一般に、製品の販売分野における参加者のシェアが高く、製品製造に要するコストに占める共同購入の対象となる資材及び部品の購入額の割合が高い場合には製品の販売分野において、また、共同購入の対象となる資材及び部品の需要全体に占める共同購入参加者のシェアが高い場合には当該資材及び部品の購入分野について、独占禁止法上問題が生じる。
ア 本件相談においては、製品の販売分野についてみると、1)A社ら4社の製品製造に要する資材及び部品の購入額に占める共同購入による購入額の割合は7~8%と低く、製品製造コスト全体に占める割合は更に低くなること、2)その他の生産活動、販売活動等については各社独自に実施すること、3)共同行為に参加していない有力なメーカーが存在することから、製品の販売分野における競争に与える影響は小さく、独占禁止法上問題ないものと考えられる。
イ また、資材及び部品の購入分野についてみると、1)共同購入の対象となる資材及び部品は汎用品等であること、2)当該資材及び部品のメーカーのA社ら4社への依存度が低いことからすれば、当該資材及び部品の需要全体に占めるA社ら4社の共同購入に係るシェアの合計は低くなるものと考えられることから、独占禁止法上問題ない。

(2)平成16年度-医療用医薬品の物流部門に係る業務提携
 医薬品メーカー2社が、医療用医薬品の物流部門を共同化することは、ファイアウォールを設置することにより情報が遮断され、提携両者間の製造・販売部門における競争関係が確保される場合には、直ちに独占禁止法上問題となるものではないと回答した事例
 医療用医薬品Xの販売市場における、本件提携後におけるA社及びB社の販売シェアの合計は約60%となる。
 しかしながら、
ア 本件については、提携の対象が共同配送・保管に限られ、医療用医薬品Xの供給に要する費用に占めるこれらの費用は5%にとどまり、両社間の価格競争の余地が無くなるとまでは認められないこと、
イ また、共同配送等を通じて自社の販売情報が相互に利用できる場合、これらは競争を回避するための手段として用いられるおそれがあるが、本件については、情報遮断のための措置を講じるとしており、この措置が確実に実施されるのであれば、このようなおそれがあるとは認められないこと
などから、医療用医薬品Xに係る一定の取引分野における競争が実質的に制限されることはなく、直ちに独占禁止法上問題となるものではない。

(3)平成17年度-競合する電子部品メーカー間の部品の供給
 電子部品メーカーが、急激な需要増加に対応するため、自社による生産に加えて競争事業者から部品の供給を受けることは、直ちに独占禁止法上問題となるものではないと回答した事例
1) 本件の対象製品は、部品Xのみであるが、部品Xが単体で販売されることはなく、部品Yと組み合わせた電子部品甲として販売されることから、本件では、電子部品甲の販売における競争に及ぼす影響について検討する。
2) 一般に、競争事業者間における部品の供給が直ちに独占禁止法上問題となるものではない。ただし、当事者間で製造に係る情報が共有されることで価格や供給量、販売先の調整がなされたり、一方当事者と競争関係にある事業者との間の部品の購入や供給契約の締結等について他方当事者に制限を課すなどして、当該製品の販売市場における競争が減殺される場合には、不当な取引制限(独占禁止法第3条)又は不公正な取引方法(第13項・拘束条件付取引)として問題となるおそれがある。
3) 電子部品甲の販売市場は、当事会社を含めた5社のみが供給する寡占市場である。このような状況で、本件部品の供給が実施されることにより、A社及びB社の間で部品Xに係る情報が共有され、さらにB社における部品Xの供給能力が限界に達するおそれもあることから、両社間において価格や生産数量の調整を容易にすることが懸念される。
4) 本件部品の供給により、A社の電子部品甲の販売価格のうち、B社から供給を受ける部品Xの購入価格が占める割合は60%にのぼることから、両社間において電子部品甲の販売価格の調整等を容易にすることも懸念される。しかし、A社が販売する電子部品甲に用いる部品Xのうち、B社から供給を受ける数量の割合は15%にとどまり、残りの部分については何らB社からの影響を受けるものではない。
 また、電子部品甲は、最終製品であるデジタル家電機器乙に用いられるところ、デジタル家電機器乙においては、同等の機能を有するデジタル家電機器丙や丁との間で、性能や価格等における熾烈な競争が行われている状況にある。
 さらに、A社及びB社は、互いに販売価格や取引先などには一切関与せず、また他社から部品を購入したり、他社との部品の供給契約を結ぶことについて制限を課すものではない。
5) また、本件部品の供給により、A社は自社の追加投資を要せずに供給量を増加させることができ、B社においても自社工場の稼働率の向上が見込めることから、両社のコスト削減効果が、最終的にデジタル家電機器乙の価格の低下につながるなど、消費者利益の向上も期待される。
6) 以上の状況を勘案すれば、本件部品の供給によって電子部品甲の販売に係る公正な競争が阻害されるおそれがあるとは認められず、直ちに独占禁止法上問題になるものではない。
 ただし、本件部品の供給を契機として、両社間で電子部品甲の生産数量の調整等の競争回避的な行為がなされる場合には、独占禁止法上問題となるおそれがある。

 この業務提携と独占禁止法の規制につきましても、遠慮なく当事務所にご相談下さい

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