御器谷法律事務所

独禁法と集団訴訟

1. 独占禁止法と私人による被害の救済
 独占禁止法は、その規制の対象として私的独占、カルテル(不当な取引制限)、不公正な取引方法といういわゆる三本柱を中心とし、公正取引委員会を中心とした行政法規としての性格を有しています。
 しかし、このような私的独占、カルテル、不公正な取引方法により被害を被った事業者や消費者に対する私的救済方法として、独禁法は事前の救済方法として差止請求を、事後の救済方法として損害賠償請求制度を設けています。
(1) 独禁法に基づく差止請求‐法第24条
 独禁法に基づく差止請求(法§24)とは、不公正な取引方法によってその利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある者が、これにより著しい損害を生じるおそれがあるときに、当該独禁法違反行為を行っている者に対し、その侵害行為の停止又は予防を請求することができる権利のことです。
 独禁法違反行為に対して私人による差止請求を認めた趣旨は、先ず被害者の救済を目的とするものであり、又、公正且つ自由な競争を結果として促進し、私人による独禁法の実現(エンフォースメント)を確保することにあります。特にこの差止請求にあっては、不公正な取引方法を対象とした比較的小規模な独禁法違反行為に対しても行使できることが期待されています。
(2) 独禁法に基づく損害賠償請求‐法第25条
 事業者や事業者団体が私的独占、カルテル(不当な取引制限)、不公正な取引方法、法§6違反の国際協定等をし、これによって被害者に損害を被らせたときは、被害者はその損害を賠償する請求をすることができます(法§25・(1))。 無過失責任とされています(法§25・(2))。
 なお、民法第709条により、被害者は独禁法違反を理由として不法行為による損害賠償を請求することもできます。この場合、被害者が、事業者ないし事業者団体の独占禁止法違反行為、故意又は過失、権利侵害ないし違法性、損害、因果関係の主張・立証をする必要があります。
 
2. 独占禁止法による被害回復の現状
 独禁法の運用の実態を見ると、カルテル規制、特に談合の取り締まりを中心として、公取委による排除措置命令と課徴金納付命令が際立って目立っている感じがします。
 そして、このような公取委中心の行政規制の中で、被害者の救済は実現されていないのではないかとの重大な疑義を感ぜざるをえません。
 特に、独禁法に基づく差止請求においては、平成13年施行以来これに関する認容判決が未だなく、又、独禁法第25条や独禁法違反を理由とする民法第709条に基づく損害賠償請求訴訟においても数件認容判決があるにとどまる状況であります。
 つまり、独禁法違反行為による私人の被害回復は、決して十分なものではないと断言せざるをえない状況であります。
 
3. 独占禁止法への団体訴訟制度の導入
 独禁法への団体訴訟制度の導入については、立法論として賛否の見解が存するところであります。
 日弁連は、消費者や事業者につき、その資力や取引関係から訴訟提起が困難であり、消費者団体や事業者団体へ団体訴訟制度の導入を可としています。
 これに対して経団連は、消費者被害の間接性、課徴金との二重処罰性等を理由として、団体訴訟制度の導入を否としています。
 
4. 価格カルテルと被害の回復
(1) 価格カルテルにおいては、事業者が意思の連絡のもとに販売価格の値上げをする事例が典型例として想定されます。
 このカルテルが公正取引委員会によって認定された場合、公取委はこれらの事業者に対してカルテル合意の取りやめである排除措置命令を科し、且つ一定割合の課徴金納付命令を科します。
 この課徴金は、国庫への納付となり、決して被害者への被害弁済にはあてられません。そうすると、カルテルにより高い価格で商品やサービスを購入した事業者や消費者は、その被害を回復されないままの状態となり、その被害の回復は被害者の自己責任の問題となってしまいます。
(2) 価格カルテルという独禁法違反行為によって被害を被った事業者や消費者は、多数に及ぶものの、その個々の被害額は少額なものかもしれません。また、このような被害者である事業者や消費者は、被害者意識が乏しいかもしれません。さらに、被害者としての事業者や消費者は、カルテル事業者に対して損害の賠償を請求したり訴訟を提起したりすることが、事業者にあっては取引の関係上憚られることがあり、又、消費者においてはそのアクセスの方法等もなく費用もかかり避けようとするかもしれません。
 しかし、多数の少額の被害も集まれば大きな額となるものであり、その分配のルールが明示され、訴訟へのアクセスも確保されるものであれば、カルテル被害者の集団訴訟として損害賠償請求をすることは、被害の回復を実現し、且つ企業の独禁法コンプライアンスを具現するとの見地からも十分意味のあるものと考えられます。

 この独占禁止法と集団訴訟につきましても、遠慮なく当事務所にご相談下さい

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