御器谷法律事務所

不当な顧客誘引

1. 不当な顧客誘引とは、
 正常な商慣習に照らして不当な利益をもって、競争者の顧客を自己と取引するように誘引すること、を意味します(一般指定第9項)。
 公正な競争は、本来商品やサービスの性能や価格によってなされるべきものでありますが、不当な利益をもって顧客を誘引しようとする行為は顧客の正当な選択の自由を奪うものであり、競争手段の不公正さを顕著に示すものと考えられるでしょう。

2. 行為要件
 不当な「利益」とは、金銭のみならず物品等の経済的利益一般を指すものとされています。
 具体的には、景品の提供が問題とされることが多く、この点については景表法が独禁法の特別法として制定されていますので、景品等への規制は景表法が優先して適用されます。
 また、証券取引に際して大口顧客に対してなされる証券会社のいわゆる「損失補填」が不当な利益にあたるとして問題とされた野村證券事件があります。

3. 公正競争阻害性
 不当な利益による顧客誘引は、不当な利益を顧客に提供して顧客の正当な商品等の選択の自由を奪うものであり、競争手段の不公正さに公正競争阻害性を見い出すことができます。
 そして、その「不当」性は、独禁法上の正常な商慣習に照らして是認されうるか否かによって決せられるものとされています。

4. 審決、判決等
(1) 野村證券事件−公取委勧告審決 平成3年12月2日
 証券会社が証券取引に関して一部の大口顧客に対して行ったいわゆる「損失補填」は、投資家が自己の判断と責任で投資をするという証券投資における自己責任原則に反し、証券取引の公正性を阻害するものであって、証券業における正常な商慣習に反するものと認められる。
 証券会社は、顧客との取引関係を維持し、又は拡大するため、一部の顧客に対して損失補てん等を行っていたものであり、これは、正常な商慣習に照らして不当な利益をもって、競争者の顧客を自己と取引するように誘引しているものであって、不公正な取引方法の第9項に該当し、独占禁止法第19条の規定に違反する。

(2) ゆうパック差止請求訴訟−東京地判 平成18年1月19日
 日本郵政公社が行うゆうパック事業につき、ヤマト運輸が「不当廉売」及び「不当な顧客誘引」を理由として提起した独禁法第24条に基づく差止請求が棄却された事例

「不当な顧客誘引」について
 「このような行為が不公正な取引として規制されているのは、顧客の勧誘は、競争の本質的な要素であり、それ自体は非難されるものではないけれども、本来的な取引対象である商品又は役務以外の経済上の利益を提供することにより顧客を誘引する不公正な競争手段が用いられると、商品又は役務の価格や品質による本来の能率競争が行われないおそれがあるばかりか、消費者による適正な商品又は役務の選択が歪められるおそれがあり、公正かつ自由な競争が阻害されるからであると考えられるから、一般指定9項の「不当な利益」とは、経済上の利益をいうと解すべきである。」
 「以上によれば、被告が株式会社ローソンに対し不当な利益を提供しているとは認められないから、その余の争点について判断するまでもなく、被告が一般指定9項所定の不公正な取引方法に当たる行為を行っていると認めることはできない。」

 この不当な顧客誘引につきましても、遠慮なく当事務所にご相談下さい
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