御器谷法律事務所

独占禁止法に基づく差止請求
 ‐ついに出た仮処分決定-

1. 独禁法に基づく差止請求‐導入後10年の状況

 独占禁止法第24条は、独禁法に基づく私人の差止請求を規定していますが、この条文は、平成12年の独禁法改正により、平成13年4月1日より施行されるに至ったものです。
 そして、その施行後10年を経過した状況をみると、この差止請求を認容した仮処分や判決例が一件も存在しないことに驚かされます。
 独禁法第24条がその目的とした、独禁法違反に対する事前の被害救済が裁判の場においては、ここ10年間全く実現されていなかったのです。
 この10年間の判例を概観すると、各差止請求訴訟において、独占禁止法上の不正な取引方法の成立そのものを否定する例を多く見受けます。そして、裁判所においては、不公正な取引方法の各要件事実について余りに詳細な主張及び立証を求め、極めて高いハードルを課していたものと感じられます。

2. ついに出た認容決定
 私達が代理人をつとめていた妨害排除禁止仮処分申立事件において、平成23年3月30日、東京地方裁判所民事第8部は、ついに独占禁止法に基づく差止請求権を被保全権利とする仮処分事件についてこれを認容する仮処分決定を下しました。
 この仮処分決定の概要は、次のとおりです。
(1)主文
 Yは、Xのドライアイス販売事業にかかる顧客に対して、以下のいずれかを告げることによって、Xと上記顧客との間の取引を妨害してはならない。
  (1) XがYとの間の契約上の競合避止義務に違反した旨
  (2) Xがドライアイスの供給を行うことができなくなる旨
  (3) Xは近々倒産する旨
(2)争点
 1) 競争関係の有無
 両社は、国内の角ドライアイス加工製品及びペレットドライアイスの販売市場において、競争関係にあるというべきである。
 2) 不当な取引妨害の有無
 これらの諸点に照らすと、XがZとの間で行ってきたペレットドライアイスの製造受託を含む取引は、本件競合避止義務に違反するものではなく、少なくとも、Yにおいて上記取引を了知した上でこれを容認し、XのためにZとの契約内容の助言までしていたにもかかわらず、これを解除するのは信義則に反し許されない。
 そうすると、これら告知は「Xに対する誹謗中傷にあたり、Yは、Xの独自販売ルートにおける顧客やZに対し、Xを誹謗中傷して取引を停止するよう働きかけたものであるから、上記行為は、それ自体、公正な競争を阻害するものであるというべきである。」
 3) 差止要件の有無
 Xの年商の大半はドライアイス事業によって占められており、Zとの取引が停止されると、顧客に販売するドライアイス加工製品の原料である角ドライアイスを確保することができず、ドライアイス事業を継続することは著しく困難となること等を指摘することができる。
 これらの諸点に加え、・・・Yの取引妨害行為の態様、経緯等も併せ考慮すると、Xがこれによって利益侵害を受け、著しい損害を被る恐れがあることは明らかというべきである。
 4) 保全の必要性の有無
 Yの取引妨害行為を受けて、Zが平成23年3月末をもってXとの一切の取引を停止する旨を通告していることに鑑みると、Xに生ずる著しい損害又は急迫の危険を避けるため、これを必要とするとき(民事保全法23条2項)に当たり、保全の必要性があるというべきである。

3. 本仮処分決定の意義
 私達は、本件仮処分申立事件につき、その申立の理由として独占禁止法第24条と不正競争防止法第3条を選択的に主張してきました。
 そして、本決定において東京地方裁判所は独占禁止法第24条に基づく差止請求を認めたのは、本件事案における市場及び市場の画定並びに市場におけるシェア、そしてドライアイス取引の特徴、さらには本件の債権者と債務者との具体的な関係、さらには本件の債権者とZとの間における具体的な取引関係等を勘案し、そこに独占企業における独占力の行使のもとに中小企業である本件債権者がその不当な取引妨害行為によって市場そのものから排除されようとする事案に対して、裁判所がその実体を見極め、独占禁止法違反行為に対する被害の事前救済を認めたものであり、画期的な決定として高く評価され得るものであると確信するものであります。
 また、私たち債権者代理人においても、独占禁止法に基づく差止請求が実務上 認容された新たなステージを切り拓くことができたものであり、これに関与したものとして誇りに思うところであります。

 この独占禁止法に基づく差止請求‐ついに出た仮処分決定‐につきましても、遠慮なく当事務所にご相談下さい
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