御器谷法律事務所

独占禁止法における「事業者」

1. 独禁法における「事業者」とは、
 「商業、工業、金融業その他の事業を行う者」(§2・(1))とされています。具体的には、「なんらかの経済的利益の供給に対応し反対給付を反復継続して受ける経済活動」(東京都と畜場事件−最判平成元年12月14日)を行う者と解されています。
 これは、独禁法が公正且つ自由な競争の促進を目的(§1)とすることから、その規制の対象である事業者概念もこの公正・自由な競争秩序を阻害する経済活動を行う者を対象とするからです。
 この「事業者」は、営利性は必要とされず、その主体の法的性格も問わないことから、個人、法人、協同組合、国、地方公共団体などで上記経済活動を行う者を広く指すものとされています。

2. 事業者性が問題となる事例
(1) 自由職業(医師、弁護士、建築士等)−profession
自由職業も対価を授受する経済活動を行い、料金の統一や新規参入の妨害等の弊害があり、欧米でも自由職業への適用があることから、事業者性を認め独禁法を適用しています。
1) 観音寺市三豊郡医師会事件−東京高判平成13年2月16日
「医療の提供が、非営利事業で、価格競争の働く余地が少ないとはいえ、・・・医療の分野においても、提供する医療の内容、質において競争原理の働く局面は多く、公正かつ自由な競争によって、需要者の利益を確保し、医療サービスの健全な発展を促進する必要があるのであり、医療の提供が独禁法の適用対象となることは明らかである。」
2) 日本建築家協会事件−公取委審判審決昭和54年9月19日
3) 弁護士会の弁護士報酬会規も撤廃されました。
(2) 国、地方公共団体
これらも上記経済活動を行っている場合には、事業者性を認められることがあります。
1) 国につき、お年玉付き年賀葉書事件−最判平成10年12月18日
2) 地方公共団体につき、東京都と畜場事件−最判平成元年12月14日
(3) 学校法人、宗教法人
これらも収益事業を行っている場合には、事業者性が認められます。
(4) プロスポーツ選手、俳優、タレント
独立した経済的活動主体として活動しているときは、事業者性を認められることがあるでしょう。
(5) 事業者性が一般的には否定される事例
1) 社会福祉事業や慈善事業の本来の事業であれば、対価性を有しないことから事業者性が否定されるでしょう。
2) 労働者や消費者は、一般的には事業者性が否定されています。

3. 判決、審判例
(1) 観音寺市三豊郡医師会事件−東京高裁 平成13年2月16日判決
 医療の提供が、非営利事業で、価格競争の働く余地が少ないとはいえ、医療の分野においても、提供する医療の内容、質において競争原理の働く局面は多く、公正かつ自由な競争によって、需要者の利益を確保し、医療サービスの健全な発展を促進する必要があるのであり、医療の提供が独禁法の適用対象となることは明らかである。
 医師会としては、地域の医療状況等に関する情報を提供したり、合理的な範囲内で圧力・強制にわたらない助言・指導・意見表明を行うことが許されるにとどまり、医療機関も、医療法の公的規制の枠内で、自由競争の原則を通じて医療役務の提供の質的向上等を図ることが求められている。

(2) 私製年賀葉書業者による損害賠償請求事件−最高裁 平成10年12月18日第三小法廷判決
 郵便法の諸規定からすると、国が独占的に行う郵便の業務とは、信書及びその他の一定の物件の送達とこれに付随する郵便切手類の発行・販売を指すものであり、郵便葉書の発行・販売は、郵便の業務と関連するものの、郵便の業務そのものには含まれず、国の独占に属するものではないといわなければならない。したがって、郵便葉書の発行・販売という事業に関する限り、被控訴人国もまたその事業の主体として独占禁止法の事業者に該当し、私製の郵便葉書の製造・販売を業とする事業者である控訴人らと競争関係に立つものというべきである。

(3) 豊田商事事件−大阪高裁平成10年1月29日判決、東京地裁 平成4年4月22日判決
 豊田商事が行っていた豊田商法は、・・・純金の売買契約及び準消費寄託契約である純金ファミリー契約の締結を内容とするものであり、経済的利益の供給に対して、それに対応する経済的利益の反対給付を受ける行為を反復継続して行う形式をとっているから、少なくとも外形上は、独禁法及び景表法の事業者性の前提となる事業に該当するものということができる。

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