御器谷法律事務所

エッセンシャル・ファシリティ


1. エッセンシャル・ファシリティ
 ある一定の事業活動を行うにあたっては必要不可欠な施設ないし設備であり、同種の設備を設けることが経済上ないし技術上不可能又は著しく困難と考えられる設備のことを、一般的には指します。
 Essential Facilityのカタカナ表記であり、日本では「不可欠設備」ないしは「不可欠な施設」とも呼ばれることがあります。
 このエッセンシャル・ファシリティが、電話や電気、ガス等の事業分野においてかねてより公共事業とされ、独占事業であることが当然ともされていました。しかし、現在においては他の競争事業者との間で、このエッセンシャル・ファシリティの開放等の問題が生じ、独占禁止法における自由且つ公正な競争の確保の見地から独禁法との関係の調整等の問題が発生しています。

2. 内閣府の総合規制改革会議
 例えば、平成14年7月23日の総合規制改革会議の「中間とりまとめ」の中にも「経済活性化のために重点的に推進すべき規制改革」として、次のとおりの指摘が出てきています。
・第3章 活性化に資するビジネス・生活インフラ整備
1)公共事業関係
 我が国産業の競争力向上のためには、国民生活及び産業活動の基盤となるいわゆる「公益事業分野」において、料金の低廉化及びサービスの多様化・質的向上による消費者選択の拡大を図り、高コスト構造を是正することが重要である。
 公益事業分野の中でも、巨額の初期設備投資を必要とする電気通信事業、電気事業、ガス事業、運輸事業といった分野(以下「ネットワーク事業分野」という)では、サービス提供に不可欠な設備(いわゆる「エッセンシャル・ファシリティ」)が既存事業者によって所有される等自然独占性がある程度残らざるを得ない側面がある。
 このため、エッセンシャル・ファシリティの公平かつ公正な利用に関する条件等競争ルールを整備し、業種を越えた参入を含めた新規参入を促進すとともに、その遵守状況の監視機能を確立し、事前規制から事後規制への移行を促進することが重要である。
2)エッセンシャル・ファシリティの開放
提供義務
 エッセンシャル・ファシリティは、サービス提供事業者にとって利用せざるを得ない不可欠な設備であることから、その新規参入を促進する上では、合理的な理由がある場合を除き提供を義務付ける等、その公平な利用を保証することが必要である。<
a) 電気通信事業分野では、全電気通信事業者に対し接続を義務付けるとともに、東・西NTTの地域通信網及び一定シェアを有する携帯電話会社の設備について、接続約款策定・認可または届出・公表を義務付ける接続ルールが設備されている。
b) 電気事業分野の託送制度について、既存事業者及び新規参入者双方の利用上の公平性の確保のための制度設備について検討すべきである。[平成14年度中に検討・結論]
c) ガス事業分野では、託送制度の対象は大手都市ガス4事業者に限定されているが、自由化が進展するガス市場において競争が真に機能するよう、早期に、託送制度の適用対象を他の一般ガス事業者さらには他のガス供給用の導管を保有する事業者にも拡大すべきである。[平成14年度中に検討・結論]

3)エッセンシャル・ファシリティの利用料金等[平成14年度から検討・結論]
 エッセンシャル・ファシリティを独占的に所有する事業者が、エッセンシャル・ファシリティを開放する場合の利用料金については、以下のとおりとする。エッセンシャル・ファシリティの利用料金のうち従量部分は、限界費用に基づくことを原則とすべきである。特に、混雑がある場合には、既得権を不当に重んじることなく、エッセンシャル・ファシリティの社会的に見て最も価値のある使い方を図るため、混雑料金あるいは入札で、エッセンシャル・ファシリティの使用料を決めることを原則とすべきである。
 エッセンシャル・ファシリティについては、厳格な分離会計に基づき、その利用料金の適正性を行政がチェックできる制度とともに、その料金の適正な水準を担保する仕組みを設けることが必要である。

3. 電気通信事業分野における競争の促進に関する指針(公取委、総務省)
 この指針においては、電気通信事業分野におけるエッセンシャル・ファシリティについても独禁法との関係について、次のとおり述べられています。
 このような電気通信事業分野の特殊性や同分野が独占から競争への過渡的状況にあることを前提にすれば、電気通信事業分野における公正な競争をより積極的に促進していくためには、規制緩和の促進と競争の一般的ルールである独占禁止法による競争制限行為の排除に加えて、電気通信事業法(昭和59年法律第86号)において、公共性・利用者利益の確保の観点から必要な規制を課すとともに、公正競争促進のための措置を講じていくことが必要である。
 このため、電気通信事業分野における競争を促進するためには、両法の果たす役割を踏まえ、独占禁止法及び電気通信事業法を適正に運用していくことが必要となる。
電気通信設備の接続及び共用に関連する分野
独占禁止法における考え方
(1) 電気通信役務を提供するに当たっては必要不可欠であるが、投資等を行うことにより同種の設備を新たに構築することが現実的に困難と認められる設備(以下「不可欠設備」という。)がある。このような場合において、電気通信事業者にとっては当該設備への接続が行えなかったり、接続の手続が遅延したりすれば、新規参入や新規事業展開が困難となる。また、当該設備のうち必要となる機能等だけに限定した接続ができない場合には、更なるコスト負担を強いられることとなる。さらに、当該設備への接続が一部の電気通信事業者にしか行われない場合には、電気通信事業者間の公正な競争条件を確保できないこととなる。
(2) このような状況の下、例えば、不可欠設備を有する電気通信事業者が、他の電気通信事業者に対し、その保有する加入者回線網の接続やコロケーションの取引を拒絶し、又はそれらの取引の条件若しくは実施について自己又は自己の関係事業者に比べて不利な取扱いをすることは、他の電気通信事業者等の新規参入を阻害し、円滑な事業活動を困難にさせるものであり、これにより市場における競争が実質的に制限される場合には、私的独占に該当し、独占禁止法第三条の規定に違反することとなる。市場における競争が実質的に制限されるまでには至らない場合であっても、上記のような行為により、公正な競争を阻害するおそれがある場合には不公正な取引方法に該当し、独占禁止法第十九条の規定に違反することとなる。
 また、移動体通信サービス事業者の保有する電気通信設備については、投資等を行うことにより同種の設備を新たに構築することが現実的に困難なものと一概に認められるものではない。しかしながら、移動体通信サービスを行う際には市場において相対的に高いシェアを有する移動体通信サービス事業者との接続が不可欠と認められる場合があること、電波の割当て枠に限りがあることから同サービス市場への参入が行われにくいという現状等を踏まえると、市場において相対的に高いシェアを有する移動体通信サービス事業者が、他の電気通信事業者との接続を拒否等することは、上記と同様に独占禁止法上問題となる。

4. EUとアメリカのE.Fに対する対応
 EUにおいては、エッセンシャル・ファシリティについてその開放を是認する例があると指摘されています。
 しかし、アメリカにおいては、2004年のVerizon Communications vs
Trinko事件においては最高裁判所はエッセンシャル・ファシリティの開放に対し
 て否定的な見解を表明しています。

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