御器谷法律事務所

排除型私的独占


1. 排除型私的独占とは、
 事業者が他の事業者の事業活動を排除する行為(排除行為)により、公共の利益に反して、一定の取引分野における競争を実質的に制限する行為を指します(法2条5項)。
 規制の対象となる排除行為は、その方法等に限定はなく「他の事業者の事業活動の継続を困難にさせたり、新規参入者の事業開始を困難にさせたりする行為であって、一定の取引分野における競争を実質的に制限することにつながる様々な行為」等と広く定義されています。

2. 平成21年独占禁止法改正
 これまで、排除型私的独占を行った事業者に対しては、公取委の出す排除措置命令によって違反行為を取りやめさせることが、その規制の中心でした。
 しかし、平成21年独占禁止法改正により、排除型私的独占の規制に違反した企業に対しても課徴金が課されることとなりました(法第7条の2第4項)。

3. 課徴金の算定方法
 排除型私的独占に対する課徴金は、問題とされた一定の取引分野において違反行為者が供給した商品・役務の売上額と、他の事業者が当該商品・役務を供給する場合に他の当該事業者に対して供給した当該商品・役務(又はその原材料)の売上額の合計の6%(小売業は2%、卸売業は1%)が課されます(法7条の2第4項)。
 課徴金算定の基準となる売上は、違反行為の始期から終期の全てが対象となりますが、その期間が3年を超える場合は、違反行為の終期から遡って3年間がその対象となります(法7条の2第1項、第2項)。

4. 排除型私的独占ガイドライン
 自由主義経済においては、事業者間での正当な競争の中で、市場から脱退する者が出ることは、予定された事象であり、独禁法もこれを前提としていますので、正当な競争が行われた結果、ある事業者が市場から脱退し、特定の事業者が市場を独占することとなっても、独禁法違反とはなりません。
 こうしたことから、排除型私的独占は正常な競争活動との境界が曖昧となり、規制にあたっては企業の競争を却って萎縮させないよう配慮される必要があります。
 そこで、公取委では、排除型私的独占ガイドラインを公表して、取締りの執行方針や違反行為の類型を明らかにしています。
 ガイドラインの内容は、概要以下のとおりです。
(1) 公取委の執行方針
 商品シェアが概ね2分の1超、かつ、国民生活に与える影響が大きい事案を優先的に審査。
 但し、この基準に合致しない事案でも審査を行う場合や、排除型私的独占には該当しない場合でも不公正な取引方法等に違反する場合があるので、注意を要します。
(2) 典型的な排除行為の類型化
 これまでの事件で問題となった行為を中心に、排除行為として典型的な行為として以下の4つに類型化し、それぞれの行為類型ごとに排除行為該当性の判断要素を公表しています。
 ア 商品を供給しなければ発生しない費用を下回る対価設定
 例えば、原価を下回る価格で商品を供給する行為が該当し得、これによって、自らと同等又はそれ以上に効率的な事業者の活動を困難にさせる場合には、当該行為は排除行為と判断されます。
 排除行為該当性の判断にあたっては、1)商品にかかる市場全体の状況(商品差別化の程度、流通経路、市場の動向参入の困難性等)、2)行為者及び競争者の市場における地位(シェア、順位、ブランド力、供給余力、事業規模、全事業に占める商品の割合等)、3)行為の期間及び商品の取引額・数量、4)行為の態様(行為者の意図・目的、広告宣伝の状況等)等が判断要素として考慮されます。
 イ 排他的取引
 相手方に対し、自己の競争者との取引を禁止し、又は制限することを取引の条件とする行為が該当し得、他に代わり得る取引先を容易に見いだすことができない競争者の事業活動を困難にさせる場合には、当該行為は排除行為と判断されます。
 排除行為該当性の判断にあたっては、1)商品にかかる市場全体の状況(市場集中度、規模の経済、商品の特性、商品差別化の程度、流通経路、市場の動向、参入の困難性等)、2)行為者及び競争者の市場における地位(シェア、順位、ブランド力、供給余力、事業規模、等)、3)行為の期間及び相手方の数・シェア、4)行為の態様(取引の条件・内容、行為者の意図・目的等)等が判断要素として考慮されます。
 ウ 抱き合わせ
 事業者が、ある商品(主たる商品)の供給に併せて他の商品(従たる商品)を購入させる行為が抱き合わせに該当し得、従たる商品の市場において他に代わり得る取引先を容易に見いだすことが出来ない競争者の事業活動を困難にさせる場合には、当該行為は排除行為と判断されます。
 排除行為該当性の判断にあたっては、1)主たる商品及び従たる商品にかかる市場全体の影響(市場集中度、商品音悪性、規模の経済、商品差別化の程度、流通経路、市場の動向、参入の困難性等)、2)主たる商品の市場における行為者の地位(行為者の主たる商品のシェア、順位、ブランド力、供給余力、事業規模等)、3)従たる商品の市場における行為者及び競争者の地位(行為者及び競争者の従たる商品のシェア、順位、ブランド力、供給余力、事業規模等)、4)行為の期間及び相手方の数、取引数量、5)行為の態様(抱き合わせによって組み合わせた商品の価格、抱き合わせの条件・強制の程度、行為者の意図・目的等)等が判断要素として考慮されます。
 エ 供給拒絶・差別的取扱い
 例えば、商品の供給先事業者が市場で事業活動を行うために必要な商品について、合理的な範囲を超えて供給拒絶等をする行為は、排除行為に該当し得るとされています。
 排除行為該当性の判断にあたっては、1)川上市場及び川下市場全体の状況(川上市場及び川下市場における市場集中度、商品の特性、規模の経済、商品差別化の程度、流通経路、市場の動向、参入の困難性等)、2)川上市場における行為者及びその競争者の地位(川上市場における行為者及びその競争者の商品シェア、順位、ブランド力、供給余力事業規模等)、3)川下市場における供給先事業者の地位(川下市場における行為者及びその競争者の商品シェア、順位、ブランド力、供給余力事業規模等)、4)行為の期間、5)行為の態様(行為者の川上市場における商品の価格、供給先事業者との取引の条件・内容、行為者の意図・目的等)等が判断要素として考慮されます。
(3) 一定の取引分野における競争の実質的制限
 排除行為によって一定の取引分野における競争が実質的に制限されたか否かを判断するための考慮要素が記載されています。
1) 一定の取引分野については排除行為によって影響を受ける範囲を言うとして、具体的行為や取引の対象・地域・態様等に応じて決定する、
2) 競争の実質的制限については、行為者の地位及び競争の状況、潜在的競争圧力、需要者の対抗的な交渉力、効率性、消費者利益の確保に関する特段の事情等を総合的に考慮する、とされています。

5. 企業の実務対応
 上記のとおり排除型私的独占につき公取委はガイドラインを公表してその執行方針及び違反行為として典型的な行為を明らかにしています。
 しかし、直接はこれらに該当しないような行為でも、例えば、取引先へのリベートの供与が、取引先に対する競争品の取扱いを制限する効果を有すると判断され、排他的取引であると判断される場合なども考えられます。
 したがって、特に、公取委が優先的に審査するとしている、商品のシェアが2分の1を超えるような地位を有する企業は、上記ガイドラインの中で類型化されているような行為に類するような行為は勿論、同等の効果を持ちうる行為を行う際にもこれまで以上に慎重な検討を要します。

 この排除型私的独占につきましても、遠慮なく当事務所にご相談下さい
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