御器谷法律事務所

排他条件付取引


1. 排他条件付取引とは、
 事業者が、独占禁止法上「不当に」、取引の相手方が競争者と取引をしないことを条件として、当該相手方と取引をし、競争者の取引の機会を減少させるおそれがある行為、のことを言います(一般指定第11項)。
 独禁法上不公正な取引方法の一種として禁止されています。
 このような排他条件付取引は、現在の取引社会においては特約店契約や専売店制として多く見受けられるものであり、即違法として禁止されるものではありません。独禁法上「不当に」行われた場合にのみ違法なものとして禁止されます。

2. 具体例
 排他条件付取引には、次のような具体例があります。
(1) 特約店契約
 メーカーが販売業者との契約において、そのメーカーの商品を積極的に販売する義務を負うとの条件のもとに継続的商品供給契約を締結することがあり、これを「特約店契約」と呼ぶことがあります。
(2) 専売店制
 メーカーが販売業者との契約において、そのメーカーの商品のみを積極的に販売し、他の競争メーカーの商品を取り扱わない旨を合意し、継続的商品供給契約を締結することがあり、これを「排他的特約店契約」やより端的に「専売店制」と呼ぶことがあります。
(3) 一手販売契約
 買主において、売主からその販売する商品の全部を一手に購入する契約を締結し、他の競争者には販売させないこととする場合、これを「一手販売契約」ないし「全量購入契約」と呼ぶことがあります。
(4) 一地域一専売店制
 売主と買主との継続的商品供給契約において、相互にその相手方とのみ取引をし、他の競争者との取引をしない旨を合意する場合、一つの販売エリアにおいてメーカーの販売系列はその販売業者のみとなることから、これを「一地域一専売店制」と呼ぶことがあります。

3. 行為要件
(1) 競争者と取引しないことを「条件として」
 この点は、契約書による明示の合意のみならず、暗黙の合意でもよく、又、メーカーのリベート政策(占有率リベート等)による事実上の拘束でもよいものとされています。
(2) 競争者の取引の機会を減少させる「おそれ」
 現実に取引の機会が減少したとの結果の発生を要するものではなく、そのおそれ、いわば可能性ないし蓋然性で足りるとの指摘があります。

4. 公正競争阻害性
(1) 公正取引委員会の「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」(いわゆる流通・取引慣行ガイドライン)においては、「市場における有力メーカー」が、競争品の取扱いを制限し、これにより「新規参入者や既存の競争者にとって代替的な流通経路を容易に確保することができなくなるおそれがある場合」に、公正競争阻害性を有し違法となることを明示しています。
 そして、この「市場における有力メーカー」とは、「シェアが10%以上、又はその順位が上位3位以内」が一応の目安としています。
(2) なお、次の場合には、公正競争阻害性を有しない、との指摘をする見解があります。
1) 特許やノウハウの実施にともなう排他的条件の特約。
2) 材料を外注先に提供して、その外注先からその材料により製造した商品を排他的に取得する場合。
3) 新聞や自動車の販売ルートにおいて、流通の系列化が従前より進んでおり、専売店制に独禁法上の合理性が是認される場合(この点は様々な見解あり)。

5. 判例、審決
(1) フランスベッド事件−公取委勧告審決 昭和51年2月20日
 「フランスベッド株式会社は、自社製ベッドの販売に当たり、正当な理由がないのに、チェーン会(フランスベッド株式会社が全国を10地区に分け、それぞれの地区において取引先小売業者を同社と一定額以上の取引を行っている家具又は寝具、あるいはその双方を扱う小売業者を会員とする「みのる会」等のチェーン会。会員総数は、昭和50年9月末日現在2525名)の会員である小売業者の販売価格を拘束する条件をつけて、当該小売業者と取引しているものであり、これは、不公正な取引方法(昭和28年公正取引委員会告示第11号)の8に該当し、また、正当な理由がないのに、昭和42年4月からフランスベッド株式会社と一定額以上の取引をしているチェーン会の会員が他社製ベッドを取り扱わないことを条件として、当該小売業者と取引しているものであり、これは、前記不公正な取引方法の7に該当し、いずれも、独占禁止法第19条の規定に違反する」
(2) 大分県酪農業協同組合事件−公取委勧告審決 昭和56年7月7日
 大分県酪農業協同組合は、大分県内の乳業者に対し、生乳を供給するに当たり、正当な理由がないのに自己の競争者から生乳の供給を受けないこと及び自己から生乳の供給を受けていない乳業者の飲用乳製品を取り扱わないことを条件として取引しているものであり、これは、不公正な取引方法(昭和28年公正取引委員会告示第11号)の7及び8に該当し、独占禁止法第19条の規定に違反するものである。
(3) 東洋精米機製作所事件−東京高判 昭和59年2月17日
 「公正競争阻害性の有無は、結局のところ行為者のする排他条件付取引によって行為者と競争関係にある事業者の利用しうる流通経路がどの程度閉鎖的な状態におかれることとなるかによって決定されるべきであり、一般に一定の取引分野において有力な立場にある事業者がその製品について販売事業者の中に相当数の者との間で排他条件付取引を行う場合には、その取引には原則的に公正取引阻害性が認められるものとみて差し支えないであろう。しかし、右のような場合であっても、一定の取引分野の市場構造の特殊性等からして、すでに各販売業者が事実上特定の事業者の系列に組み込まれており、その事業者の製品だけしか取り扱わないという実態になっているなど特段の事情が認められる場合は、排他条件付取引に公正競争阻害性が認められないとされる余地が生ずるものと解される」
(4) マイクロソフト事件−公取委 平成10年12月14日勧告審決
 「マイクロソフト社は、取引先パソコン製造販売業者等に対し、不当に、表計算ソフトの供給に併せてワープロソフトを自己から購入させ、さらに、取引先パソコン製造販売業者に対し、不当に、表計算ソフト及びワープロソフトの供給に併せてスケジュール管理ソフトを自己から購入させているものであって、これは、不公正な取引方法(昭和57年公正取引委員会告示第15号)の第10項に該当し、独占禁止法第19条の規定に違反するものである。」
(5) 東芝エレベータテクノス事件−大阪高裁 平成5年7月30日判決
「本件各部品とその取替え調整工事とは、それぞれ独自性を有し、独立して取引の対象とされている。・・・そして、安全性確保のための必要性が明確に認められない以上、このような商品と役務を抱き合わせての取引をすることは、買い手にその商品選択の自由を失わせ、事業者間の公正な能率競争を阻害するものであって、不当というべきである」

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