御器谷法律事務所

独禁法の域外適用


1. 独禁法の域外適用とは、
 一般的には、外国企業が行う国内外の競争制限行為によって、日本の市場が影響を受ける場合に、その外国企業に対して独占禁止法を適用することができるか否かを問う問題と考えられます。
 例えば、複数の外国企業がカルテルを行い、日本に対して高い価格の商品を輸出した場合に、国際カルテルとして日本の独禁法を適用することができるか、又、海外の企業同士が合併をして日本に対してその高いシェアを背景として強い価格支配力を行使することが予想される場合に、この合併に対して日本の独占禁止法を適用することができるか等の問題です。

2. 実体と手続−2つの問題
 この「独禁法の域外適用」には、次の実体上の問題と手続上の問題との2つの問題があるとされています。
(1) 実体上の管轄権=立法管轄権
これは、外国企業のどのような競争制限的行為に対して、日本の独占禁止法を適用していくか、という問題です。
この点については、外国企業の行為の一部が日本国内で行われれば独禁法を適用しようとする「客観的属地主義」の考え方と、外国企業の行為が海外で行われた場合においてもその競争制限的な効果や影響が日本の市場に及ぶときは独禁法を適用しようとする「効果主義」の考え方があります。
(2) 手続上の管轄権=手続管轄権
 これは、外国企業に対して実体上独禁法を適用する場合において、書類の送達等どのような手続をとって独禁法を適用していくかという手続上の管轄権の問題です。
 この点については、外国企業が日本に営業所や事務所を有しない場合においては、日本における代理権限をする弁護士への送達が可能とした事例があります(ノーディオン事件)。
 また、独禁法第70条の17は、書類の送達について民事訴訟法第108条を準用し、外国においてすべき送達は、公正取引委員会がその国の管轄庁又はその国に駐在する日本の大使、公使若しくは領事に嘱託してするものとされています。なお、公取委から送達する文書が課徴金納付命令等の命令や強制をともなう場合においては、その送達をする前に相手国の同意を必要とするとの取り扱いが指摘されています。

3. 実体上の問題
(1) 外国企業の競争制限的行為に対する独禁法の適用については、客観的属地主義の考え方と効果主義の考え方とがあることは前述のおとりです。
そして、実務においては、従前からの客観的属地主義的取り扱いから、効果主義的考え方へと軸足を移そうとの動きを見ることができます。これは、後記のノーディオン事件においても見受けられるところであり、また、企業結合規制においても特に外国企業を除外しておらず(例、第9条2項、第15条1項等)、さらにアメリカやECやカナダとの間に独禁法に関する協力協定を締結していること等からも是認することができるでしょう。
(2) 2007年12月には、英豪系の鉄鉱石大手であるBHPビリトンとリオ・ティントとの買収計画につき、そのシェアが50パーセントを超えること等から、国際鉄鋼協会も反対し、公取委が日本市場への競争制限的効果を懸念し、ヨーロッパやオーストラリアの競争当局と審査に向けた協議に入った、との新聞報道がありました。

4. 審決例
 ノーディオン事件−公取委 平成10年9月3日勧告審決
 カナダに本店を有するノーディオン社は、ガン診断薬の原料であるモリブデン99の世界シェア、トップの外国企業であり、このノーディオン社が日本企業との間に同社が取得、使用等するモリブデン99はその全量をノーディオン社から購入しなければならないとの全量購入契約を日本で締結し、この排他的購入契約が独禁法の私的独占に該当するとされました。
 「ノーディオンは、日本メジフィシックス及び第一ラジオとの間において、それぞれ、平成八年から一〇年間、その取得、使用、消費又は加工するモリブデン99の全量をノーディオンから購入する義務を課す契約を締結して、他のモリブデン99の製造販売業者の事業活動を排除することにより、公共の利益に反して、我が国におけるモリブデン99の取引分野における競争を実質的に制限していたものであり、これは、独占禁止法2条5項に規定する私的独占に該当し、独占禁止法3条の規定に違反するものである。」
(1) 手続上の問題−文書の送達
 公取委がノーディオン社の日本における代理人弁護士に送達し、ノーディオン社もこれを承諾。
(2) 実体上の問題
日本で契約が締結されたことから客観的属地主義の立場からも独禁法の適用はあった事例。
但し、ノーディオン社の契約が日本における競争制限的効果を重視して私的独占と評価した点より効果主義的立場を公取委は表明したとの理解もあり。

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