御器谷法律事務所

FX被害の救済

1. FXとは、
 Foreign eXchangeの略であり、一般的には外国為替(かわせ)証拠金取引のことを指します。証拠金を業者に担保として預託し、差金決済(実際に外貨の授受を行われず、反対売買による差額の授受により決済を行う方式)によって外国為替の売買が行われます。通常の為替取引と異なり、外貨を買ってから、売るという取引のみならず、外貨を売ってから、買うという取引も可能となっています。また、日本円を証拠金として預託した場合でも、米ドルを売って、英ポンドを買うといった取引も可能となっています。レバレッジ(てこの原理)と呼ばれる仕組みを利用することによって、証拠金の数倍から数十倍もの金額の外貨売買が可能であり、少ない元手で大きな利益を上げることができますが、その反面、リスクも大きいものとなっています。

2. 具体例
 例えば、1ドル100円の時に、証拠金を100万円預託した上、レバレッジを10倍と設定した場合、100万円×10=1000万円分=10万ドル分の為替取引を行うことができます。その後、1ドルが110円になった後、差金決済を行うと、110円×10万ドル=1100万円、1100万円-1000万円=100万円の利益を得ることができます。これに対して、1ドルが90円になってしまうと、90円×10万ドル=900万円、900万円-1000万円=-100万円となり、預託していた証拠金は没収され、100万円の損失が生じることになります。

3. FXに対する法規制
 このようにFXはハイリスク・ハイリターンな取引であるため、現在では金融商品取引法によって規制されていて、登録された業者にのみ外国為替証拠金取引の取り扱いが許されています(同法第2条9項・第29条・第2条8項1号・第2条21項1号・第2条8項2号・第2条22項1号)。
 外国為替証拠金取引業者は、「金融商品取引業者」として、同法第3章第35条以降の規定によって、主として下記の行為が禁止されています。
(1) 顧客に対して、契約の内容を書面にして交付しないで、契約を締結すること(書面交付義務、同法第37条の4)
(2) 顧客に対し、「絶対儲かる」「絶対損はしない」等、虚偽の事実、若しくは断定的な意見を用いることによって、契約を締結させること(虚偽事実の告知・断定的判断の提供、同法第38条1号・2号)
(3) 勧誘を要請していない者に対して、電話や自宅訪問などの方法による勧誘を行うこと(不招請勧誘、同法第38条3号)
(4) 勧誘をするに先立って、顧客に対して、その勧誘を受ける意思の有無を確認することをしないで勧誘を行うこと(顧客の意思の確認義務、同法第38条4号)
(5) 一度勧誘を受けた顧客が、いったん契約の締結を拒んだ場合に、再度同じ契約の勧誘を継続すること(再勧誘の禁止、同法第38条5号)
(6) 顧客の財産状況、投資経験等に照らし、不当な投資の勧誘を行うこと(適合性原則、同法第40条)
*以上の禁止行為について、顧客がプロ投資家である場合など、法令が適用されない例外的場合もあります。

4. 裁判例
(1) FXが公序良俗に反する取引であることを理由に預託金の返還を認めた事例(仙台地裁平成19年9月5日判決)
「本件の外国為替証拠金取引は、為替取引の裏付けがない差金決済取引であり、インターバンクレートを参考にすると言うものの、その基準自体明確ではなく、被告会社が一方的に定め、かつ、予測することのできない為替レートの変動によって、証拠金の約10倍という高額の損益が生じるという著しく射倖性が高い取引である。−−−被告らは、外国為替証拠金取引が一般人の行う利殖行為として、経済的意義を有する経済的取引として捉えられるものであると主張するが−−−本件取引が経済的合理性を有する取引であったことを認めるに足りる証拠はない。
 そうすると、本件取引は、顧客である原告と被告会社間の賭博性を有する取引であるといわざるを得ず、公序良俗に違反する取引であるということができる。」
(2) FX業者の勧誘行為が適合性原則に反することを理由に損害賠償請求を認めた事例(東京地裁平成19年7月30日判決)
「本件外国為替証拠金取引は、被告会社の設定するレートによる相対取引であり、被告会社と顧客とを比べると、顧客に損失の生じる可能性が高いといえるから、顧客には、知識、情報、これらを的確に分析して自己の行動を判断する能力、十分な分析をなしうる時間、経験、財産等が必要であるところ、原告が、上記のような心身及び財産の状況にあったことに照らせば、原告は、本件外国為替証拠金取引当時、その内容を理解することはできなかったというべきであり、また、受給年金のみを糧とする生活では、その収入のほとんどを、生活費として費消することになり、投機行為を行うような十分な財産を有していたということはできないことに照らせば、原告は、上記の能力を備えていなかったというべきであるから、被告会社がそのような状況にある原告を勧誘し、取引を行わせた行為は、適合性原則に反し、不法行為に該当するといわなければならない。」
(3) 適合性原則及び説明義務違反を認めず、損害賠償請求を棄却した事案(東京地裁平成19年7月11日)
「原告は、原告が同取引をする不適格者であり、被告従業員は、このような原告に対し、危険性の告知等を含めた十分な説明をせず、利益面だけを強調して同取引を行わせたもので、適合性原則及び説明義務に違反しており、違法であると主張する。
 しかし、上記認定のとおり、原告は、被告従業員の最初の勧誘から約3か月を経て約諾書等を提出し、更にその後8か月を経て本件取引を開始していること、それに至るまでの間、頻繁に被告従業員の説明等を受け、同取引の仕組みや危険性等が明記された取引のガイドや約諾書(約款)を受領していること、原告が被告に提出した約諾書・通知書にも商品先物取引の経験が2年間あることを自ら記載し、アンケートに対しても各項目について理解した旨の回答をしていること、これらの当時、74歳と高齢ではあったが、記者等のいくつかの職を経験したうえで大同生命保険相互会社の営業部門に勤務し、固定給と歩合給により年間2000万円以上という高額の収入を得る能力を有していたこと、本件取引中にも指値注文や多数回の出金をしていることなどからすれば、原告には被告従業員の説明や被告から受領した書面の記載の意味内容を的確に理解し、同取引の危険性も十分に理解できていたことは明らかであり、本件取引程度の範囲においてこれを行うに十分な資力も有していたものというべきである。」

5. 判例の評価
 金融商品取引法施行前の事案において、FXが公序良俗に反することを理由に顧客の損害賠償請求を認めた上記(1)の裁判例でありますが、現在でも取引形態によっては、FXは、公序良俗に反する取引に当たる可能性もあるかもしれません。
 また、仮に公序良俗に反しないとしても、上記(2)の裁判例のように業者による禁止行為を理由に顧客の損害賠償請求が認められる可能性があります。
 なお、上記(3)の裁判例を見れば分かりますように、顧客の年齢が高齢というだけでは、適合性原則違反とは判断されず、資金力や取引能力等を総合考慮することによって、判断がなされています。

6. FXと税金
 FXで利益を得た場合、この利益に対してそれぞれ税金が発生し、納税する必要が生じます。株取引とは異なり、源泉徴収はなされていません。
 FXでの利益は雑所得に分類されるので、FXでの利益及びその他の雑所得の合計が20万円を超える場合には、確定申告を行う必要があります。
 FXで約4億円を稼いだ主婦が脱税で逮捕され、有罪判決を受けたという事件も起きており、FXを行う方は注意が必要です。

7 .FXへの規制の強化
 高いレバレッジの取引においては、顧客が多大な損害を被るおそれがあること、過当投機のおそれがあることなどを理由に、レバレッジを規制しようとする動きがあります。金融庁は、レバレッジを2010年8月1日に50倍に規制しました。さらに、2011年8月には25倍にレバレッジの上限を設定する予定です。

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