「正義の女神像」だれに対しても偏見を抱いていないことを示すため目隠しをしています。人種、宗教、政治信念ではなく、裁判の結論は証拠に基づいて決められるのです。そして、その証拠の重みを知るために、はかりを持っています。
御器谷法律事務所

米国知的財産権の最新事情

1. ニューヨーク州南部地区地裁、日本の弁理士による法的助言は弁護士・依頼者間の秘匿特権により保護されると判示(12月21日)
※1
 ニューヨーク州南部地区地裁は、国際礼譲に鑑み、日本の弁理士による法的助言が弁護士・依頼者間の秘匿特権により保護されるため、開示の対象外であると判示した。
 本件において、原告である日本のEisai社は、被告・Dr. Reddy Laboratories社を相手方として特許侵害訴訟を提起した。情報開示手続きの一貫として、原告は弁護士・依頼者間の秘匿特権を根拠に一定の書類の開示を拒否したところ、被告は当該書類の開示を義務付けるよう同地裁に申立てた。Fox補助裁判官は、日本の弁理士による法的助言が秘匿特権付情報であるため、情報開示の対象外であると判示した。被告は、同判決を控訴した。
 ニューヨーク州南部地区地裁は、外国の特許出願における特許エイジェントと依頼者間のコミュニケーションが秘匿特権付情報であるか否かを判断するに当たり、国際礼譲に鑑み、当該外国法を考慮に入れなければならないと判示した。第一、1998年民事訴訟法改正以降、日本法は弁理士の作成した書類に秘匿特権を付与したことには異論がないとされた。これにもかかわらず、被告は日本の弁理士の秘匿特権とアメリカの弁護士・依頼者間の秘匿特権が異なると主張した。これに対し、ニューヨーク州南部地区地裁は、外国とアメリカの秘匿特権の内容が同じである必要はないと判示した。また被告は、弁理士・依頼者間の秘匿特権は絶対的なものではなく、特権の目的および開示の必要性の比較考量を義務付けていると主張した。これに対し同裁判所は、比較考量が義務付けられている証拠として被告は、秘匿特権の例外が示されている事件を引いているが、比較考量テストが設けられている事件を引いていないと判示した。最後に、被告は当該情報が日本法の下で秘匿特権付情報であったとしても、その遡及的適用がアメリカの政策に違反すると判示した。これに対し同裁判所は、改正民事訴訟法が秘匿特権付情報を遡及的に適用することを明記しており、また手続法を遡及的に適用することが正義の基本原則またはアメリカの公共政策に違反するものではないと判示した。これらの理由により、ニューヨーク州南部地区地裁は、被告の情報開示請求の申立てを却下した。

2. カリフォルニア州北部地区地裁、Sony Computer Entertainment America社に対し600万ドルの損害賠償を認める(12月27日)※2
 カリフォルニア州北部地区地裁は、原告・Sony Computer Entertainment America社のプレーステーション・ビデオ・ゲームの著作権保護措置の迂回技術を販売した被告・Steven Filipiak氏に対し600万ドルの損害賠償支払いを命じた。
 本件において、2002年より被告はプレーステーションの海賊版を利用可能にしたコンピューター・チップをインターネット上で販売した。その後、同コンピューター・チップの販売売り上げが上昇し、被告は定職を辞めて第二のウエブサイトを開発した。
 2006年6月12日、被告はプレーステーションの迂回防止技術の販売を止めることに合意したが、その合意を破り迂回防止技術を販売し続けた。2006年6月14日、原告は被告がデジタル・ミレニアム著作権法に違反し、原告の著作権保護措置を迂回したとしてカリフォルニア州北部地区地裁に提訴した。同地裁は被告が著作権保護措置の迂回技術を販売しないという合意内容を意図的に破ったと認定した。これらの理由により、同地裁は、被告がデジタル・ミレニアム著作権法に違反したことを認めたと認定した。
 なお同地裁は、被告が2002年から2004年6月12日の間、著作権保護措置の迂回防止技術を7,039個、および2004年6月12日から2004年6月14日の間、同技術を155個販売したと認定した。原告は、2004年6月12日以前に販売した技術について一個当たり800ドルの法定損害賠償、6月12日以降に販売した技術について一個当たり2,500ドルの法定損害賠償を請求した。デジタル・ミレニアム著作権法は各迂回技術の販売について200ドルから2500ドルの法定損害賠償を認めている。同地裁は、法定損害賠償額を決定するに当たり、ライセンス取り決めを避けることにより被告が節約したライセンス料、侵害行為に伴う被告の利益、原告の喪失利益、侵害行為の意図、および抑止力強化を考慮に入れることができると判示した。
 同地裁は、被告がデジタル・ミレニアム著作権法を意図的に違反したことが明確であるため、原告の請求が正当であると判示した。同地裁は、迂回技術の販売数の予測が正確でなくても、その予測が合理的であると判示した。また同地裁は、2004年6月12日以降に販売された迂回技術の法制損害賠償額を引き上げることは、被告が同迂回技術を販売しないことに合意していたため、合理的であると判示した。これらの理由により同地裁は、2004年6月12日以前の侵害行為について563万ドル、6月12日以降の侵害行為について38万7千5百ドルの損害賠償支払いを命じた。

3. 第2巡回裁判所、Microsoft社がPocketMoneyのマークを侵害していないと判示(1月5日)※3
 第2巡回裁判所は、被告・Microsoft社が“Microsoft Money for Pocket PC”のマークの使用が原告・Catamount Software社の”PocketMoney”のマークを侵害していないと判示し、地裁判決を承認した。
 本件において、原告は手のひら端末で機能するファイナンシャル・マネジメント・ソフトウエアにおいて“PocketMoney”というマークを使用している。他方被告は、“Pocket PC”というウインドウズCEオペレーティング・システム上で機能する手のひら端末で使用するプログラムに”Microsoft Money for Pocket PC”というマークを使用している。原告は、被告が原告の商標権を侵害したと主張し、ヴァーモント州地区地裁に提訴した。同地裁は、”Pocket”が記述的(descriptive)であり、“money”が記述的また暗示的(suggestive)の境界線に存在しており、また”PocketMoney“が暗示的であると判示した。従って、消費者混同の蓋然性が立証されれば、侵害行為が認定されるとされた。
 同地裁は、消費者混同の蓋然性が立証されていないと判示した。すなわち同地裁は、Microsoft社のマークが”Microsoft Money”と“for Pocket PC”という二つの部分により構成されていると判示した。後者の部分はプログラムが機能するハードウエアのタイプを示しているため、消費者は前者の部分に注目を当てるであろうとされた。なお”Microsoft Money for Pocket PC"のマークにMicrosoftという表現が含まれているため、消費者は同マークと”PocketMoney”が関係しているとは思わないとされた。原告は、両商品間における実際の消費者混同の事例を示したが、これらの証拠は限定的であり、また広範な問題にいきわたっていないとされた。
 最後に、同地裁は、原告が1億3500万ドルの損害賠償を裏付ける証拠を示していないと判示した。同地裁は、被告が被告の製品を発売した後、原告の売り上げが顕著に上昇したため、原告は損害を示すことができないと判示した。これに対し、原告は被告が被告の製品を発売しなかったら、原告の売り上げがもっと上昇していたであろうと主張したが、同地裁はこの予測が完全に思索的であると判示した。控訴審において、第2巡回裁判所は、“for Pocket PC”が被告の手のひら端末上で機能するソフトウエアを示しているため、被告が当該表現を使用できなければ被告は被告の商品を消費者に説明することが困難になると判示した。これらの理由により、第2巡回裁判所は地裁判決を承認した。


(問い合わせは、所属法律事務所Donald Frum・NY州弁護士・佐藤 潤(junsato_us@yahoo.com)までお願いします。)

※1Eisai Ltd. v. Dr. Reddy’s Laboratories, 2005 WL 3527138 (SD of New York, Dec. 21, 2005).
※2
Sony Computer Entertainment America v Filipiak, 2005 WL 3556676 (ND of Calif. Dec. 27, 2005).
※3
Macia III v. Microsoft Corp., 2006 WL 41301 (2nd Cir. Jan. 5, 2006).


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