米国知的財産権の最新事情
1. 第10巡回裁判所、著作権登録が著作権侵害訴訟の要件であると判示(7月26日)※1
第10巡回裁判所は、建築家事務所である原告・La Resolana Architectsが著作権侵害訴訟を提起した時点で著作権登録が完了していたとする証拠能力ある証拠を示さなかったため、本件提訴を却下した地裁判決を承認した。
本件において、不動産会社である被告・Clay Realtors および原告・La Resolana Architectsは、ニュー・メキシコ州Angel Fire市において原告が1996年また1997年にデザインした設計をベースにした不動産開発プロジェクトを検討していたが、それは契約締結に至らなかった。しかし2003年10月、原告の代表者は、Angel Fire市において被告が販売しているタウンハウスを発見し、それが原告の設計に顕著に似ていると思った。2003年11月6日、原告は必要書類、手数料および著作物の複製物を著作権局に郵送し、登録申請を行った。著作権局が同著作権申請を受理した通知を原告が受け取った後、原告は被告が原告の著作権を侵害したと主張し、ニュー・メキシコ州地区地裁に提訴した。
被告は、原告が著作権申請を行ったが、まだ著作権局より著作権登録書を受領していないと主張し、提訴却下を申立てた。これに対し、原告は2004年1月22日が著作権の承認日であり、また2003年11月9日が著作権の有効的な登録日であると記述されている著作権局の2004年3月10付け書簡を示し、被告の申立てに反対した。同地裁は、著作権局の同2004年3月10日付書簡が容認性のない伝聞証拠(unauthenticated hearsay)であるため証拠能力がなく、従って提訴時に設計が登録されていなかったと判示し、再訴可能な訴え却下を言い渡した。
控訴審において、第10巡回裁判所は、通常、著作権局の同2004年3月10日付書簡が登録を示す十分な証拠であるが、原告が証拠に関する地裁判決の部分を控訴しなかったため、登録が済まされていないとする認定を受け入れざるを得ないと判示した。また第10巡回裁判所は、著作権が正式に登録されていなければ、原告は著作権侵害訴訟を提起することができないと判示し、同地裁判決を承認した。すなわち著作権法は、著作権者が侵害行為から保護を受けるため著作権局への著作物の登録が必要であると定めたとされた。なお差止めを含む全ての救済措置は、著作権者の著作権登録を要件としているとされた。議会は、これらの権利および救済措置が著作権登録を促す「アメ」であり、また著作権登録が完了するまで連邦管轄権が及ばないということが「ムチ」であると考えたであろうとされた。
2. 連邦巡回裁判所、BlackBerryに対する特許侵害判決を承認(8月2日)※2
連邦巡回裁判所は、Blackberryの製造業者であるResearch in Motion社が原告・NTP社の特許を侵害したと判示したヴァージニア州東部地区地裁の判決の大部分を承認した。
本件において、ヴァージニア州アーリングトン市に本拠を置く原告は、電子メール・システムに関係する5つの特許を有している。他方、被告は小型無線装置で電子メールの受信を可能とするBlackberryを製造しているカナダの会社である。原告は、被告が原告の特許を侵害したと主張し、同地裁に提訴した。陪審員は、原告勝訴の評決を下し、5370万ドルの損害賠償を命じた。また同地裁は、同評決を受け、侵害行為に対する終局的差止めを命じた。
控訴審において、被告は、Blackberryシステムのリレー・コンポネント(relay component)がカナダに存在するため、同システムが米国内に存在しておらず、また処理方法(method Claim)の一部がカナダで行われているため米国内で行われていないと主張した。従って被告は、特許法第271条A項が特許侵害の要件としている米国内における「使用」が満たされていないと主張した。特許法第271条A項は、米国内において、特許権者の許諾無しで、特許発明を製造、使用、販売のための提供、販売すること、または米国内に輸入することは、特許を侵害すると定めている。なおリレー・コンポネントは、利用者の電子メール・システムのプロセッサーからBlackberryシステムの無線ネットワークへ電子メールを転送するシステムの一部である。
連邦巡回裁判所のパネルは、米国内で使用する同システムまたは同処理方法の一部が米国外に存在するが、使用の所在地、およびシステム全体の機能が米国内に存在するため、特許法第271条A項に基づく侵害の認定が妨げられないと判示し、被告の主張を却下した。
被告は、連邦巡回裁判所のパネルが米国外における行為に対し特許侵害を認定したと主張し、連邦巡回裁判所全員の審理を請求した。連邦巡回裁判所全員は、米国内の顧客が米国内でBlackberryシステムを使用した場合、電子メール・システムの使用の所在地が米国内であると判示し、システムのクレームに関する連邦巡回裁判所のパネルの判決を承認した。
しかし連邦巡回裁判所全員は、方法の使用のクレームおよびシステムの使用のクレームが本質的に異なるものであり、各処理段階が米国内において使用されていなければ、同方法が米国内で使用されていると解釈することができないと判示した。従って、連邦巡回裁判所全員は、各処理段階がカナダに存在するインターフェースのスイッチを使用するため、同方法が米国内で使用されていると解釈することができないと判示し、方法のクレームに関する連邦巡回裁判所のパネルの判決を覆した。なお連邦巡回裁判所全員は、地裁のいくつかのクレーム解釈に関する判決を覆し、または差し戻した。さらに連邦巡回裁判所全員は、損害賠償命令および終局的差止め命令を取り消し、事件を地裁に差し戻した。
3. 第4巡回裁判所、宣教師・ Falwellに対する批判的ウエブサイトが商標権侵害に該当しないと判示(7月28日)※3
第4巡回裁判所は、全国的に知られている宣教師・Falwellに対する原告・Christopher
Lamparello氏の批判的なウエブサイトが商標権法または反サイバー不法占拠消費者保護法(AntiCybersquatting
Consumer Protection Act)に違反しないと判示し、地裁判決を覆した。
本件において、原告は、被告である宣教師・Falwellが同性愛者および同性愛に対する批判的な意見をインタービューで述べていることを聞いた。その後の1999年2月に、原告は、Fallwell.comという被告に対し批判的なウエブサイトを登録した。原告の批判的なウエブサイトは、同ウエブサイトが被告と関係ないという但し書きを記述し、また被告の正式なウエブサイトであるFallwell.comへのリンクを含めた。
被告が原告に対しFallwell.comという批判的なウエブサイトの使用を停止するよう請求した後、原告はヴァージニア州東部地区地裁に対し商標権侵害がないとする宣言的判決の言い渡しを請求した。これに対し被告は、原告がランハム法および反サイバー不法占拠消費者保護法などに違反したと主張し、反訴を申請した。
同地裁は、被告勝訴の略式判決を下し、また原告に対しFallwell.comのドメイン名の所有権を被告に移転するよう命じたが、損害賠償支払いまたは弁護士費用支払いを命じなかった。両当事者は、第4巡回裁判所に同地裁判決を控訴した。
控訴審において、第4巡回裁判所は、インターネット利用者は被告が原告の批判的なウエブサイトを支持していると思うおそれがないため、ランハム法違反の要件である混同の蓋然性が存在しないと判示した。すなわち、被告のウエブサイトは、原告のウエブサイトと似ておらず、正反対のアイディアを示しており、また顧客を奪うために登録されてはいないとされた。
なお第4巡回裁判所は、(1)原告が単に批判を目的としてFallwell.comのドメイン名を登録したため悪意を持っておらず、また(2)被告に対しFallwell.comのドメイン名を販売しようとはしておらず、または無数のドメイン名を登録してはいないため、反サイバー不法占拠消費者保護法に違反していないと判示した。反サイバー不法占拠消費者保護法は、商標権が付されているドメイン名を登録し、かかるドメイン名を商標権者に対し販売しようとする不正行為の防止を目的としている。しかし反サイバー不法占拠消費者保護法は、商標権者に対する批判の防止を目的とはしていないため、原告の批判的なウエブサイトは同法に違反しないとされた。
(問い合わせは、ニューヨーク州弁護士・佐藤 潤(junsato_us@yahoo.com)までお願いします。)
※1La Resolana Architects v. Clay Realtors Angel Fire et al., No. 04-2127, 2005 WL 1745587 (10th Cir. July 26, 2005) ; 10th Circuit Rules Plaintiffs Must Register Copyrights Before Suing, 12 No. 10 ANDREWS INTELL. PROP. LITIG. REP. 6 (August 25, 2005).
※2NTP Inc. v. Research in Motion, Ltd., No. 03-1615, 2005 WL 1806123 (Fed. Cir. Aug. 2, 2005); Fed. Cir. Affirms Infringement by Blackberry Maker, 12 No. 10 ANDREWS INTELL. PROP. LITIG. REP 8 (August 25, 2005).
※3Lamparello v. Falwell et al., Nos. 04-2011 and 04-2122, 2005 WL 2030729 (4th Cir. Aug. 24, 2005); Jerry Falwell Loses Bid to Shut Down ‘Gripe’ Site, 12 No. 11 ANDREWS INTELL. PROP. LITIG. REP 2 (Sept. 13, 2005).
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