米国知的財産権の最新事情
1 第二巡回裁判所、法人による著作物の単なる入手がアクセスに関する事実の争点を示さないと判示(12月3日)※1
第二巡回裁判所は著作物の受取人と侵害者との関係が示されない場合、法人による斡旋されていない著作物の単なる入手が著作物のアクセスについて十分な事実の争点を示さないと判示した。しかし、第二巡回裁判所は映画タイタニックのテーマ・ソングを巡り原告は被告の従業員が原告の音楽テープを受け取りまた時々受け取った音楽テープを被告関連の作曲家に手渡していた証拠を示し、また被告は被告関連の作曲家が原告の音楽テープをアクセスしなかった証拠を示さなかったため、著作物の受取人と侵害者との関係が示されたと判示し、被告勝訴の略式判決を取消した。
本件において原告・John Jorgensen氏は作曲家であり、Long Lost Loverという歌を作曲し、著作権を登録した。原告はJames Horner氏またWill Jennings氏 が作曲し、歌手のCeline Dion女史が歌った1997年アカデミー賞を受賞した映画タイタニックのテーマ・ソングであるMy Heart Will Go OnまたChris Lindsey氏、Aimee Mayo女史またMarv Green氏が作曲し、カントリー・ミュージックのグループであるLonestarが歌った曲のAmazedが原告の著作権を侵害したと主張した。原告はAmazedの歌についてCareers BMG Music Publishing社などまたMy Heart Will Go Onの歌についてSony Music Entertainment社などに対し著作権侵害訴訟を地裁に提起した。地裁は、被告の侵害者が原告の著作物をコピーしたという直接証拠がなければ原告は侵害者が原告の著作物に対しアクセスがあったという状況証拠を示すことにより著作物のコピーを認定することができると判示した。しかし原告は侵害者が原告の著作物をアクセスした単なる可能性(bare possibility)ではなく、合理的な可能性(reasonable possibility)を示さなければならないとされた。本件において地裁は侵害者が原告の著作物をアクセスした合理的な可能性が原告により示さなかったため、被告勝訴の略式判決を下した。
控訴審において第二巡回裁判所は、原告がSony Music Entertainment社のバイス・プレジデントであるLeeds氏に音楽テープを手渡した事実についてアクセスに関する事実の争点が存在すると判示した。つまりLeeds氏は原告の音楽テープを受け取ったことを認め、音楽テープを聴いたことを否定しまたMy Heart Will Go Onの作曲家を知っていることを否定したが、同社のアーチスト・演奏者部(Artists & Repertoire)に対し原告の音楽テープを渡すと原告に伝えたことについて触れなかった。Leeds氏は単に興味のある音楽テープをアーチスト・演奏者部に渡す可能性があるとしか証言しなかった。なおLeeds氏はアーチスト・演奏者部が関連作曲家などに対し音楽テープを時々渡していることも認めた。そこで第二巡回裁判所は、原告が被告に音楽テープを手渡した時からMy Hear Will Go Onが作曲された時までHorner氏またJennings氏が被告のアーチスト・演奏者部と関係していたか否かが残された問題であると判示した。この点、原告は実際のアクセスを示す必要がなく、むしろ侵害者が原告の著作物を耳にする機会があったと示せば十分であり、これについて原告は十分に事実の争点を示したとされた。しかし、コピーの状況証拠を立証するためには原告はアクセスと類似性(similarity)の両方を示されなければならないところ、第二巡回裁判所は侵害していると主張されている歌が原告の歌と実質的に似ていないと判示した。従って第二巡回裁判所はAmazedの歌について被告勝訴の略式判決を承認し、またMy Heart Will Go Onの歌について被告勝訴の略式判決を取り消し、差し戻した。
2 ニューヨーク州南部地区地裁、代替的デザインはトレード・ドレスの機能性と関係があると判示(2003年12月8日)※2
ニューヨーク州南部地区地裁は、原告・Maharishi Hardy Blechman社が原告の高級軍事スタイル・パンツであるSnopantsのトレード・ドレス(trade dress)(製品のパッケージに使われる宣伝用印刷物や包装など全般の形態を意味し、容器や包装の輪郭、大きさ、形、色、デザイン印象、感触、素材なども含まれる「商品の洋服」という概念。判例法では、商品もしくは役務の全体的な概観もしくはイメージと広く解釈されている。)が機能的でないという証拠を示したが、それが本質的識別性(distinctiveness)を有し、また一貫性(consistency)を有すると示していないため、ランハム法(Lanham Act)第43条に基づく原告によるトレード・ドレス侵害の主張を却下した。
原告の商品・Snopantsはドローストリングまたボタンの凝ったシステムを有している。Snopantsは内側また外側のレッグ・シームにあるボタンにつけ、また巻き上げられたパンツ・レッグを支える内側のエポレットを利用することにより短くすることができる。幾つかのSnopantsは片方の足の裏に熱烈な竜の縫取りがされている。被告・Abercrombie & Fitch社は75ドルで小売販売され、Snopantsと同様にロールアップ型また竜の縫取りがされているShi Ding Roll Up Pantsを販売している。またこのパンツのステッチ・スタイルまたポケット・アレンジメントはSnopantsのものと似ている。
ニューヨーク州南部地区地裁はランハム法第43条がパッケージまたはトレード・ドレスを保護しているところ、トレード・ドレスには商品デザインも含まれるように解釈されるようになったと指摘した。ランハム法第43条の下でトレード・ドレス侵害から回復するため、原告は(1)トレード・ドレスが本質的識別性を有し、または市場において二次的意味(secondary meaning)を取得し、(2)トレード・ドレスが機能的ではなく、また(3)原告の商品が被告のものと混同される蓋然性があることを立証しなければならないとされた。ニューヨーク州南部地区地裁は本質的識別性には一般性(genericness)、具体性(specificity)また一貫性(consistency)という三つの関連法理が含まれると指摘した。第一、一般的なトレード・ドレスまたは商品に一貫して適用されないトレード・ドレスは本質的識別性を有さないため保護の対象にはならないとされた。第二、原告はトレード・ドレスのデザイン要素を具体的に立証しなければならないとされた。第三、原告は商品ライン全体を通じてトレード・ドレスが一貫性のある視点を示すと立証しなければならないとされた。審理において、被告は原告の9つのトレード・ドレスの要素がパンツの質また見た目を改善したとするデザイナーの証言を根拠にトレード・ドレスが機能的でないことを原告は証明していないと主張した。他方、原告は各9つのトレード・ドレスの要素について代替的デザインが存在するため、競争者が原告のトレード・ドレスの要素をコピーしなくても相当に不利にはならないと主張した。これに対しニューヨーク州南部地区地裁はトレード・ドレスが商品の使用ないし目的に影響を与え、または商品のコストないし品質に影響を与える場合に機能的であると判示した2001年TrafFix Devices事件最高裁判決※3を引用し、トレード・ドレスが機能的であるか否かの審査において代替的デザインの可能性が考慮に入れられると判示し、原告の主張を支持した。しかしニューヨーク州南部地区地裁は原告のトレード・ドレスには識別性がなく、またSnopantsが9つのトレード・ドレスの要素全部を含んでいないため全体の見た目(look)に一貫性がないと判示し、被告勝訴の略式判決を下した。
3 連邦巡回裁判所、小規模主体を誤って主張した被告に対し不正行為基準が適用されると判示(12月9日)※4
連邦巡回裁判所は特許権者が特許管理費用(maintenance fee)の支払いについて小規模主体(small entity)であると誤って主張しても不正行為が行われていなければ、許されると判示した。
本件において被告・Lex Computer & Management社は20人以下の従業員を有する会社であり、1993年に500人以上の従業員を有するAdobe Systems社に対し自社特許(4,538,188)の通常実施権を付与した。被告は第一回目、1993年の第二回目また1998年の第三回目の特許管理費用の支払い申請において被告が小規模主体であるため特許管理費用の減額を求めた。特許商標庁は被告の各申請を受け入れ被告の特許を更新した。1998年7月、Ulead Systems社は被告の特許(188)が無効であるため、その特許が侵害されていない主旨の宣言的判決を求めた。被告は特許管理費用の減額を誤って支払ったことを是正するため差額を支払い、特許商標庁は差額支払いを受け取り、2001年に被告の位置付けを大規模主体に変更することに合意した。
地裁は被告が不正行為を行ったため特許権を行使することができず、また不誠実に小規模主体を申請したため特許の期限切れを是正することができないと判示し、原告勝訴の略式判決を下した。
控訴審において、連邦巡回裁判所は、被告が500名以上の従業員を有するAdobe社に対し通常実施権を付与したため小規模主体としての位置付けがなくなったことは明らかであると判示した。しかし連邦巡回裁判所は、不正行為を認定するため重要な事実の不当表示、重要な事実の情報開示の欠如または重要な情報の誤った資料提出およびだます意図(intent to deceive)の存在が認定され、またそれらの比較衡量が行われる必要であると判示した。なおこれらは明白かつ確信を抱くに足りる証拠(clear and convincing proof)により証明されなければならないとされた。本件において連邦巡回裁判所は、被告が小規模主体であると表示したことは特許商標庁が特許管理費用の減額を受け入れる重要な事実ではあったが、だます意図について実質的な争点が存在するため、審理が必要であると判示した。第一、被告の社長は特許権者が大規模主体に対し通常実施権を付与すれば、小規模主体としての位置付けを失うとは知らなかったと主張した。第二に、被告の特許弁護士は特許法を承知しているが、当該取引に関与していなかったため被告が500名以上の従業員を有する会社に対し通常実施権を付与したとは知らなかったと主張した。これらの事実を根拠に連邦巡回裁判所は地裁の略式判決を取り消した。
(問い合わせは、ニューヨーク州弁護士・佐藤 潤(junsato_us@yahoo.com)までお願いします。)
※1 Copyrights/Access: Bare Corporate Receipt of Work Does Not Raise a Triable Issue of Access, 67 PATENT, TRADEMARK & COPYRIGHT JOURNAL 152, December 19, 2003.
※2 Trade Dress/Functionality: Alternative Designs are Relevant to Issue of Trade Dress Functionality, 67 PATENT, TRADEMARK & COPYRIGHT JOURNAL 151, December 19, 2003.
※3 TrafFix Devices v. Marketing Displays, 523 U.S. 23 (2001).
※4 Patents/Inequitable Conduct: Inequitable Conduct Standard Applies to Errors Claiming Small Entity Status, 67 PATENT, TRADEMARK & COPYRIGHT JOURNAL 149, December 19, 2003.
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