「正義の女神像」だれに対しても偏見を抱いていないことを示すため目隠しをしています。人種、宗教、政治信念ではなく、裁判の結論は証拠に基づいて決められるのです。そして、その証拠の重みを知るために、はかりを持っています。
御器谷法律事務所

米国知的財産権の最新事情

1 第9巡回裁判所、ジャズをサンプルしたラップの歌の使用が軽微と判示(11月4日)※1
 第9巡回裁判所は、ラップ・グループである被告・Beastie Boysがジャズ作曲家である原告・James W. Newtonの歌の3つの音を使用したことが軽微であるため、原告の著作権が侵害されないと判示し、地裁判決を承認した。
 原告は”Choir”という歌を作詩作曲したジャズフルート奏者および作曲家である。1981年、原告は”Choir”を演奏し録音した後、ECM Recordsにその録音(sound recording)をライセンスした。録音だけがライセンスの対象になり、原告は”Choir”の歌の著作権を保持した。1992年、被告は”Pass the Mic”の歌の作曲においてECM Recordsから当該録音の一部を使用するライセンスを取得したが、原告からその根底となる歌のライセンスを取得しなかった。被告は6秒間にわたる3つの音のサンプルを歌から電子的にとり、それを”Pass the Mic”の歌で40回以上も繰り返した。
 原告は被告が原告の著作権を侵害したとして地裁に提訴した。地裁は歌の音には保護を受ける程に十分な創作性がなく、また十分な創作性があったにしても、その使用が軽微であるため、その根底となる歌のライセンスを取得する必要がないと判示した。
 控訴審において第9巡回裁判所は、歌に十分な創作性があるが、その使用が軽微であるため、原告の著作権が侵害されていないと判示した。この点に関し、第9巡回裁判所は音楽を鑑賞する平均的な者が使用に気がつかなければその使用は軽微であると判示した。第9巡回裁判所は、被告が録音を使用するライセンスを取得していたため、歌の3つの音の使用が侵害を構成する程に実質的であるか否かを判断しなければならないと判示した。ここでは原告は、被告が原告の歌全体の本質または構造を使用せずに原告の歌の一部を厳密にコピーしたと主張した。このような事件においては、類似性が相当に高いため実質的要素または取るに足りない要素について類似性があるか否かが問題になるとされた。また類似性の実質性はコピーされた部分の量的および質的重要性を考慮に入れることにより判断され、被告が使用した部分は量的にも質的にも重要でないとされた。すなわち量的重要性について使用された3つの音が原告の歌で一回しか現れておらず、また質的重要性について歌の3つの音が他の部分よりも重要であるという証拠がないとされた。従って第9巡回裁判所は歌を鑑賞する平均的な者が被告の歌を聞き、それにより原告が3つの音の作曲家であると認識しないと判示した。

2 第9巡回裁判所、商標の機能性について代替的デザインの入手可能性が要素になる可能性があると判示(11月4日)※2
 第9巡回裁判所は、原告の自転車用ボトルの形が機能的であり、従ってそのデザイン登録商標が無効であると判示した地裁判決を承認した。
 原告・Talking Rain Beverage社は飲料を販売するボトルの形について登録商標を有する。原告のボトルは自転車のボトル・ホルダーに簡単に入り、またつかみ易くするため上から1/3のところがへっこんでいる。原告は、被告・South Beach Beverage社がSoBeという飲料を販売するボトルが誤認を招くほどに登録商標のボトルと似ていると主張し、地裁に提訴した。地裁は原告のボトルのデザインが機能的であると判示し、商標を取り消すよう命じた。
 控訴審において第9巡回裁判所は原告のボトルのデザインが機能的であると判示し、地裁判決を承認した。デザインが装置の使用または目的に必要不可欠でありまたは装置のコストまたは質に影響を与えれば、それは機能的であり、従って商標により保護されないとされた。なおこの基準は以下の4つの要素により判断される。すなわち、(1)広告がデザインの実用的利点(utilitarian advantages)を宣伝しているか、(2)デザインが比較的簡単または低コストの製造方法により製造されるか、(3)デザインが実用的利点をもたらすか、また(4)代替的デザインが入手可能であるかにより判断されるとされた。本件において第9巡回裁判所は最初の3つの要素が被告に有利に傾いていると判示した。すなわち第一番目の要素について、第9巡回裁判所は、原告の広告が”get a grip”というスローガンを使用したためボトルのデザインの実用的利点が広告されたと判示した。第二番目と第三番目の要素について、第9巡回裁判所は、原告の商品開発プロセスによりボトルのデザインが実用的効果を有すると判断されたことが原告に有利に傾くのではなく被告に有利に傾くと判示した。原告は、商品開発を通じてボトルにへっこみを付けてつかみやすくすればボトルが崩れないことを学んだが、この商品デザインが機能的である以上、原告は商標を取得することができず、また被告もこの効率的な製造方法を使用することができるとされた。第四番目の要因について、原告は代替的なデザインが入手可能であるため、デザインが機能的でないと主張したが、第9巡回裁判所は単に代替的なデザインが存在するからといってデザインが機能的でないとは限らないと判示した。

3 連邦巡回裁判所、半導体ウェーファーを掃除する特許は実施可能と判示(11月12日)※3
 連邦巡回裁判所は、半導体ウェーファーを掃除するシステムの特許は、あとで顧客の商業的基準を達成し、また特許を取得した発明者が最初に商業的な清潔基準を満たさなかったにしても、実施可能性(enablement)要件を満たすと判示した。
 原告・CFMT社は半導体の欠陥を防止し、また危険な化学薬品に従業員をさらさない半導体ウェーファーを掃除するシステムについて、2つの特許(4,778,532また4,917,123)を有する。これらの特許の発明者は特許方法を実施する機械をTexas Instrument社のために導入したが、この機械は同社の清潔基準を満たさなかった。同発明者は数ヶ月に渡り実験を繰り返し、Texas Instrument社の基準を満たす改良を発明し、その改良を対象とする第三番目の特許(4,911,761)を取得した。
 原告は、被告・YieldUp Int’l社が原告の’532また’123の特許を侵害したとして地裁に提訴した。地裁は原告が’761の改良特許を開発しなければ、クレームされている特許システムが半導体ウェーファーを掃除することができなかったため、原告の特許が実施可能性要件を満たしていないと判示し、被告勝訴の略式判決を下した。
 控訴審において、連邦巡回裁判所は、発明者が実施可能性要件を満たすためには、Texas Instrument社の清潔基準など商業的取引市場における非常に高い基準を満たす必要がないと判示し、地裁の判決を取り消した。すなわち特許法第112条は、特許の公開が熟練者なら誰でも完成された商業的に有効な発明ではなく、単にクレームに記載された発明を作りまた使用できるようにすることのみを義務付けている。従って、特許が半導体ウェーファーの掃除プロセスを改善する一般的なシステムである場合、特許の改良により特許は実施可能になる。
 なお、連邦巡回裁判所は原告が’761の改良特許を取得するのに詳細な実験を繰り返したため特許が実施可能でないとする地裁判決を取り消した。この点連邦巡回裁判所は、特許の改良が非常に多く、特許が改良されたからといって元の特許が実施可能でないという分けではないと判示した。数少ない発明しか即座に商業的に成功することができず、またほとんどの発明は更なる改良がなければ商業的に成功しないとされた。

(問い合わせは、ニューヨーク州弁護士・佐藤 潤(junsato_us@yahoo.com)までお願いします)


※1 Copyrights/Sampling: Rap Song That Sampled Three Notes From Jazz Segment Was De Minimus Use, 67 PATENT, TRADEMARK & COPYRIGHT JOURNAL 28, November 14, 2003)

※2 Trademarks/Functionality: Availability of Alternatives May Be Factor In Judging Functionality of Design Trademark, 67 PATENT, TRADEMARK & COPYRIGHT JOURNAL 33, November 14, 2003.

※3 Patents/Enablement: General Claims to Semiconductor Cleaning do not Fail to Enable Despite Later Standard; 67 PATENT, TRADEMARK & COPYRIGHT 46, November 21, 2003.


執務方針| 弁護士紹介 | 取扱事件 | 顧問契約 |

弁護士費用 | 事務所案内図 | リンク| 
トップ