米国知的財産権の最新事情
1. 第9巡回裁判所、Eisenhower大将のビデオがFox社の著作権を侵害したと判示(11月18日)※1
第9巡回裁判所は、被告・Daster社が制作したビデオ・ドキュメンタリー“Campaigns in Europe”が原告・Twentieth Century Fox Film社のビデオ・ドキュメンタリー”Crusade in Europe”の著作権を侵害したと判示し、原告勝訴の判決を承認した。
本件において、Eisenhower大将が第二次世界大戦で連合軍の総司令官として努めた後、無数の出版者は同大将に対し戦争の体験談の出版するよう呼びかけた。同大将がこれらの呼びかけを断っていたところ、Doubleday社は同大将に接近し、戦争の正確な事実を歴史上に残す重要性を強調することにより、同大将に対し体験談を出版するよう説得した。同大将およびDoubleday社は、1947年に出版に関する合意に達し、1948年10月に契約を締結した。同契約に基づき、同大将は一定金額の報酬を受ける見返りに、Doubleday社に対し書籍“Crusaders in Europe”の権利を販売・譲渡した。Doubleday社は、秘書、研究者、また速記者を雇い、同書籍の原稿作成を監督し、および同書籍に含まれる地図の作成費また写真の現像費を負担した。その後、Doubleday社は原告に対し同書籍のビデオ制作権およびテレビ放映権を付与した。1953年、原告は“Crusaders in Europe”のビデオを制作した。1975年、Doubleday社は1909年著作権法に基づき同著作権を更新した。1995年、Dastar社はビデオ・ドキュメンタリー”Campaigns in Europe”を制作した。
原告は、被告が原告の著作権を侵害したと主張し、カリフォルニア州中部地区地裁に著作権侵害訴訟を提起した。これに対し、被告はDoubleday社の書籍”Crusade in Europe”が職務著作(work for hire)でないため、Doubleday社が同著作物の更新権を有さないと主張した。職務著作は法人等使用者の従業者が職務上著作物の創作行為をなすことである。1909年著作権法は職務著作の更新権を使用者に与えている。カリフォルニア州中部地区地裁は、書籍“Crusade in Europe”が職務著作であるため、Doubleday社による著作権更新が有効であり、被告の書籍”Campaigns in Europe”が原告の著作権を侵害したと判示した。
控訴審において、第9巡回裁判所は、雇用者が従業員またはインデイペンダント・コントラクターである著作者の著作物作成をコントロールし、また監督する権限を有していれば、同著作物は職務著作であると判示した。また著作物が職務著作であるか否かを判断するに当たり、雇用者が(1)著作者を誘発し、また(2)同著作物作成の金銭的負担を負ったか否かを判断しなければならないとされた。本件において、Doubleday社の編集者が原稿作成を監督しており、また詳細なノートまたコメントを提供しており、および提案を示した事実確認者を雇ったため、Doubleday社は著作物作成をコントロールし、また監督したとされた。なおEisenhower大将がその他全ての出版者によるオファーを却下していたところ、Doubleday社の誘発に説得されたことを考えれば、同大将はDoubleday社の誘発により同著作物作成に決心したとされた。またDoubleday社は同大将に対し一定金額を与えたところ、秘書、事実確認者、また編集者の給料を負担し、同著作物に含まれた地図の作成費また写真の現像費を負担したため、同著作物作成の金銭的負担を負ったとされた。これらの理由により第9巡回裁判所は、書籍“Crusade in Europe”が職務著作であると判示し、原告勝訴の地裁判決を承認した。
2 アイダホ州最高裁、家具デザインの機能的部分が保護を受けないと判示(11月23日)※2
アイダホ州最高裁は、原告・Woodland Furniture社が製造した見た目がアンティークな家具が機能的であるため、原告によるトレードドレス侵害訴訟を却下した。
本件において、原告は新しいにもかかわらず見た目がアンティークな高級家具を製造している。原告が同社の従業員であるRichard Larsen氏を解雇した後、Larsen氏は原告と類似な家具を製造する被告・Heirloom Reflections社を創設した。被告は原告のカタローグに記載されている写真をコピーし、それを自分のカタローグに乗せて宣伝活動を行った。
原告は被告がランハン法に違反し、原告のトレードドレスを侵害したと主張し、アイダホ州第7裁判区裁判所(7th Judicial District)に提訴した。同裁判所は、原告がトレードドレスの具体的要素を示しておらず、また原告のトレードドレスが機能的であると判示し、被告勝訴の略式判決を下した。原告は、同裁判所判決を上告した。
控訴審において、アイダホ州最高裁は、トレードドレスとは、規模、形、色、色の組み合わせ、感触およびグラフィックスを含む商品の総合的なイメージを示すものであると判示した。原告がトレードドレスの保護を受けるため、原告は原告のトレードドレスのデザイン的要素を示さなければならいとされた。さらに原告はトレードドレスの要素が、(1)機能的でなく、(2)混同の蓋然性を招き、および(3)本質的に独特であり、または二次的意味を取得したと示さなければならないとされた。
アイダホ州最高裁は、本件において、原告はトレードドレスの要素を6つ示したが、被告がどの要素またはどの要素の組み合わせを真似たら原告のトレードドレスを侵害すると示していないと判示した。なお、顧客は見た目がアンティークな家具を求めていることを考えれば、原告のトレードドレスの総合的効果は機能的であるとされた。これらの理由により、アイダホ州最高裁は、トレードドレス侵害のその他の構成要素を審査せず、原告のトレードドレスが侵害されていないと判示した。
3 フロリダ州中部地区地裁、アイスクリーム・スクープ製造業者の特許侵害訴訟を承認(11月23日)※3
フロリダ州中部地区地裁は、アイスクリーム・スクープの特許権者である原告・Lois Virkler女史が提起した特許侵害訴訟に対するライセンシーである被告・Herbert Enterprise社による略式判決の申立てを却下した。
本件において、原告はアイスクリームを容易にサーブすることができるアイスクリーム・スクープを発明した。1996年12月、原告は、スクープ全体がくりぬかれており、その中にぬるま湯を入れることができるアイスクリーム・スクープの特許を出願した。特許庁は、同発明が明白であると判断し、同特許出願を却下した。そこで、原告は水道の蛇口の水をアイスクリーム・スクープのハンドルの中に容易に流し込みことができるようにするため、ハンドルの円周を4インチから8インチに限定し、特許請求範囲の補正を申請した。特許庁は同特許請求範囲の補正を受け入れ、原告に対し特許を付与した。
2001年3月、原告は被告に対し同特許の排他的ランセンス権を付与するライセンス契約を被告と締結した。同契約は、被告がライセンスされた商品の販売に対する一定割合のロイヤリティーを原告に支払うよう規定した。その後、被告は原告のアイスクリーム・スクープよりもより小さな円周を持つハンドルのアイスクリーム・スクープを製造し、販売した。
原告は均等論(doctrine of equivalents)に基づき、被告が原告の特許を侵害したと主張し、フロリダ州中部地区地裁に特許侵害訴訟を提起した。均等論は特許権の権利解釈で取り上げられる概念である。実質的に同じ方法で、実質的に同じ機能を発揮し、全体的に実質的に同じ結果を達成する場合に均等論に基づく侵害が認められる。これに対し被告は、原告がハンドルの円周を狭める特許請求範囲の補正を行い、また被告のアイスクリーム・スクープのハンドルが円周4インチよりも小さいため、審査手続過程の禁反論(prosecution history estoppel)の原則が適用されると主張し、略式判決を申立てた。同原則は、審査過程において削除された事項を、侵害訴訟の段階で均等論を援用して再度権利範囲に取り込む主張などを禁止する。
フロリダ州中部地区地裁は、特許侵害を認定するため(1)特許請求範囲を確定し、また(2)侵害していると主張されている装置が文言上に侵害(literal infringement)しており、または文理解釈上(doctrine of equivalents)に侵害しているか否かを審査しなければならないと判示した。同地裁は、原告が文言上の侵害を主張していないため、文理解釈上の侵害に審査を限定した。同地裁は、原告が特許請求範囲の補正においてハンドルの中に水道の蛇口が入ることを強調しており、ハンドルの寸法自体を強調していないと判示した。従って、原告は、審査手続過程において、円周4インチよりも小さいハンドルを特許請求範囲から削除していないとされた。これらの理由により、同地裁は、被告のハンドルが原告のハンドルと全体的に実質的に同じ結果を達成するか否かは陪審員が判断する事実問題であると判示し、被告による略式判決の申立てを却下した。
(問い合わせは、所属法律事務所Donald Frum・NY州弁護士・佐藤 潤(junsato_us@yahoo.com)までお願いします。)
※1Twentieth Century Fox Film Corporation v Entertainment Distributing, 429 F.3d 869 (9th Cir. 2005).
※2Woodland Furniture, LLC v Larsen and Heirloom Reflections, LLC, 2005 WL 3116212 (Idaho Supreme 2005).
※3Virkler v Herbert Enterprises, Inc., -- F. Supp.2d --- (M.D. Fla. 2005).
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