御器谷法律事務所

イレウス(腸閉塞)

1. イレウス(腸閉塞)とは、
 イレウス(腸閉塞)とは、腸の内容物の肛門側への通過障害をいいます。腸管が異常に拡張し、腹部膨満感や腹痛をきたし、腸の内容物が口側に逆流して嘔吐をきたす病態です。
 イレウスは通常、機械的イレウスと機能的イレウス(主に麻痺性イレウス)に分類され、機械的イレウスはさらに、単純性(閉塞性)イレウスと複雑性(絞扼性)イレウスに分類されます。

2. 概要
(1) 機械的イレウス
 機械的イレウスは、腸管の物理的閉塞、狭窄によるイレウスです。
 その中で、血行障害を伴わないものを単純性イレウスといい、血行障害を伴うものを絞扼性イレウスといいます。
 絞扼性イレウスは、腸管虚血及び壊死をきたす原因疾患のひとつであり、罹患すると数日間のうちに腸管の壊死、穿孔、腹膜炎、敗血症、多臓器不全、DICなどを併発し、死亡に至ることも少なくありません。
(2) 機能的イレウス
 これに対し、機能的イレウスは物理的な腸管の閉塞をきたすことなく腸管の運動の障害によって生じます。
 その中で、腸管蠕動運動の低下によるものを麻痺性イレウスといい、腸管の持続性けいれんによるものをけいれん性イレウスといいます。

3. 裁判例
(1) 肯定例
 1) 名古屋高等裁判所金沢支部 平成19年10月17日判決
上記認定事実によれば、同日午後1時20分ころに、控訴人○○に対し開腹手術を実施することを決定していたならば、△△が一時ショック状態に陥る前の同日午後3時45分ころまでに開腹手術を開始することができたものと認められ、同時刻までに開腹手術を実施することによって△△の死亡を回避する蓋然性が十分あったということができる(なお、同日午後1時20分ころに開腹手術を決定していれば、手術前措置等により△△の全身管理がなされるなどして、△△がショック状態に陥ったとしても速やかに対応がなされたものと推認されるし、また、本件で控訴人○○が行ったイレウス管の挿入失敗という経過がなかったならば、△△がショック状態に陥った時刻はさらに遅くなったものと考えられる。)。鑑定人甲山は、同日午後2時35分ころに開腹手術を決定した場合にも△△の救命可能性は認められる旨の鑑定結果を出しているから、同時刻より1時間以上前の同日午後1時20分ころに開腹手術を決定していれば、△△の救命可能性はさらに高かったものと推認される。
 2) 金沢地方裁判所 平成18年9月4日判決[ 1) の裁判例の原審]
上記認定事実によれば、△△は、平成一三年九月三〇日の入院の時点では単純性イレウスと診断されたものの、剖検によれば絞扼性イレウスであったことが確認されたこと、同年一〇月一日午後三時四五分ころにはショック状態に陥っていたことからすると、△△は、入院当初は単純性イレウスであったとしても、ショック状態に陥る数時間前である同日午後〇時前後には、単純性イレウスから絞扼性イレウスに進展していたものと推認することができる。
 そして、△△は、上記入院時点では単純性イレウスと診断されたものの、白血球数は、絞扼性イレウス診断の基準値を大きく上回る一万二九〇〇/μlであったし、同日の午前中に、午前〇時五〇分、午前四時五〇分及び午前一一時〇五分に鎮痛剤であるソセゴンが注射され、午前四時五〇分ころ及び午前七時三〇分ころには鎮痛剤であるボルタレン坐薬も投与されたにもかかわらず、腹痛が治まる様子はなく、同日午前九時五〇分以降は、顔面に苦痛の表情が表れ、顔色不良、顔面蒼白となり冷や汗も認められるに至ったことが認められる。そうすると、同日午前八時五〇分ころ実施された腹部エコー検査では、絞扼性イレウスとの確定診断を下すことはできなかったとしても、△△の上記身体的所見及び検査所見、特に、鎮痛剤の効果も乏しいほどの強い腹痛が持続していたことに照らすと、被告乙川は、遅くとも同日午後〇時までには、△△に対し、絞扼性イレウスであるかどうかの確定診断を下すために、CT検査の実施を決断すべき注意義務があったものと解するのが相当である。
 被告らは、△△に対する保存的治療の効果が無効といえる状態には至っていなかったし、また、筋性防御反応が認められず、高度の腹痛もなかったから、絞扼性イレウスを疑うべき症状等はなかった旨主張する。
 しかし、上記認定のような△△の腹痛の訴え、表情、鎮痛剤の投与状況等にかんがみ、また、筋性防御反応も絶対的・客観的な所見ではないことに照らすと、被告乙川においては遅くとも同日午後〇時ころまでには絞扼性イレウスを疑うべきであったというべきであり、被告らの上記主張は採用できない。そして、前記認定事実によれば、被告乙川は、上記注意義務に違反したものと認められる。
(2) 否定例
  東京地方裁判所 平成15年2月28日判決
前記のとおり、被告センターの医師は、本件検査によりアップルコアを発見したが、弁論の全趣旨によれば、アップルコアがある場合には進行性大腸癌が疑われることから、病変部の閉塞の程度を判定するためにバリウムが口側に流れるかどうかを確認し、また、横行結腸より回盲部にかけて別の病変があるか否かを確認するためにバリウムを注入して全大腸の造影をしたことが認められるところ、本件証拠によっても、右手技が違法であることを認めることはできない。また、仮に、被告センターの医師による本件検査が、甲子のイレウス発症の一因になったとしても、そのことから、甲子がDICを発症し、死亡するに至るとは通常考えられないことからすれば、本件検査と甲子の死亡との間に相当因果関係があるとも認め難い。
 よって、その余の点につき判断するまでもなく、原告らの被告協会に対する請求は理由がない。
 確かに、証拠(乙一、四、一二、証人乙井、証人丙月、鑑定の結果)によれば、甲子の入院後の病態は、平成七年七月九日以前は、排ガスがあったり、腹痛も緩和され、腹部X線写真でも鏡面形成は認められなかったのであるから、甲子のイレウスの悪化は認められず、直ちに緊急手術を行わなければならないほどの差し迫った状態であるとはいえないことが明らかであるが、同月一〇日には、少量ながら小腸ガスやバリウム便が認められたものの腹部X線写真によれば、横行結腸内に存在していたバリウムが一部回腸へ逆流しており、また、そうであるにもかかわらず盲腸から横行結腸に至る大腸の拡張がやや高度になっていたり、小腸と大腸に鏡面形成が認められたことからすれば、下行結腸上部部分の通過障害はより高度なものとなっていること、さらに、同月一一日には、排ガスはあったものの、前日に挿入されたイレウス管による減圧の効果がみられなかったばかりか、嘔吐の出現、バリウムの回腸への逆流の増加等右イレウスが更に悪化していることを認めることができ、これらの事実によれば、同月一〇日ないし同月一一日の段階で甲子に対する手術を実施するというのも、一つの選択肢として十分に取り得るところであると考えられる。
 しかしながら、同月一〇日ないし同月一一日の甲子の病態は、同月一〇日には排ガス及び少量ながらバリウム便が、同月一一日には排ガスがそれぞれ認められるなど、必ずしも重篤な病態を示していたというわけではなく、甲子の生命に対する危険が差し迫っていたとは考えられない。
 また、証拠(乙一二、証人乙井、証人丙月)によれば、手術前には手術対象者の全身状態を最大限把握する必要があり、緊急手術は可能な限り避けるのが望ましいこと、第一手術前に甲子に生じていたイレウスは下行結腸上部部分に発症した大腸癌が原因であり、一般的には上部小腸のイレウスと比較して、短い時間の単位で病態が悪化していくということはないことが認められ、これらの事実を考慮すると、被告病院の医師らが、同月一〇日ないし同月一一日から更に一日ないし二日の間、保存的治療による経過観察を続け、同月一二日に第一手術を実施したことをもって、不適当であったと断定することまではできないというべきである。
 このイレウス(腸閉塞)につきましても、遠慮なく当事務所にご相談下さい


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