御器谷法律事務所

「独禁法と私」 - その10、差止請求A案

  1. 独禁法平成13年施行により導入
     独占禁止法(第24条)に基づく差止請求制度は、平成12年の独禁法改正により、平成13年より施行されました。      
    この独禁法に基づく差止請求は、不公正な取引方法により利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある者が、これにより著しい損害を生じるおそれがあるときに、当該独禁法違反行為を行っている者に対し、その侵害行為の停止又は予防を請求することができる権利のことです(第24条)。
     つまり、現行法は差止の対象を不公正な取引方法に限定しています。

  2. 東京弁護士会、独占禁止法部会での議論
     独禁法に基づく差止請求については、平成10年頃、私も参加しておりました東弁、独禁法部会において、どのような改正案が良いのかを議論していました。この議論の端緒は、当時同部会の顧問的立場にあったK.K.弁護士のサジェスションによるところが多く、私達は、手分けをして欧米における差止請求の現状を調査し、改正案としてA案とB案を作成し、これを私と萱場弁護士との共同執筆として東京弁護士会の紀要である「法律実務研究」第13号の中に、「独占禁止法違反と差止請求」と題して研究成果を発表しています。

  3. 差止請求試案A案
     A案は、「独占禁止法的にも元来私的保護的側面が内在している」として、差止請求を独禁法の中に規定しようとするものでした。
     これに対して、B案は、当時の現実的状況を反映して、不正競争防止法の改正で対応しようとするものでした。
     勿論、私達は、A案を強く主張したところでした。A案の概要は、次のとおりです。
    「第24条の5(差止請求権)
     第3条、第6条、第8条1項、第9条、第10条1項、第11条1項、第13条1項及び2項、第14条1項、第15条1項、第16条、第17条、第19条に違反する行為によって損害を受け、又は回復することができない損害を受けるおそれがある者は、本法に違反する行為をなし又はなすおそれがある者に対し、その違反行為の停止又は予防を請求することができる。
    (2)裁判所は、前項の予防を認めるに際して、相当の担保を供すべきことを命ずることができる。」
     つまり、このA案の趣旨は、独禁法違反により被害を被っている被害者に、その差止請求権を認め、被害者救済を図り、もって市場秩序の維持という公益をも実現するため、アメリカやEUの制度を参考として、独禁法に欠けていた私人による差止請求を新設しようとするものでした。
     そして、このA案においては、差止請求の対象としては、私的独占、不当な取引制限、不公正な取引方法のみならず、合併や役員の兼任等も含めて違反行為の対象を明示しています。
     このA案に対しても、規制の対象が広すぎて実際上機能するのか、アメリカにおける様に広範なディスカバリー制度がない限り実効性に乏しいのではないか等の批判も出ましたが、独禁法の規制の三本柱ははずすことができない、不公正な取引方法よりも独禁法上違法性が強いと考えられる私的独占や不当な取引制限(カルテルや談合)を差止の対象としないことは不当ではないか等の意見も多くあり、結局A案を試案の第一案として公表いたしました。
     (弁護士の守秘義務より、設定や推移等を若干変更ないし省略しています。)


独禁法と私
1.慶應義塾大学時代  2.司法試験受験時代  3.司法修習生時代
4.イソ弁時代  5.東京で独立  6.初めてのカルテルの弁護
7.入札談合の弁護  8.官製談合の弁護  9.リーニエンシー
10.差止請求A案  11.三光丸事件  12.慶應L.S.
13.海外の独禁法  14.差止の示談交渉  15.初の差止決定
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