御器谷法律事務所

国際カルテル

1. 国際カルテルとは、
 複数の国にわたって、複数の企業がカルテル(不当な販売制限)を行うことを言います。
 企業活動のグローバル化にともなって、企業が国際的に営業の分野を広げてゆくとグローバル・マーケットにおける企業間の競争制限的行為が問題となります。そして、この問題の中で国際カルテルは競争を直接制限するものであり、アメリカの司法省の反トラスト局やEUの競争総局を中心として国際カルテルの摘発が増加しています。

2. 国際カルテルの摘発
 日本企業が国際カルテルに参加して、巨額の罰金の支払を余儀なくされた事例もあります。
 例えば、アメリカにおいては、カルテルにつき日本とはくらべものにならない位厳しい制裁が課せられることがあります。下記は日本企業が対象となった例です。
(1) 1999年9月、T薬品工業がビタミンのカルテルで7,200万ドルの罰金。
(2) 2001年5月、M商事が電炉用黒鉛電極のカルテルで1億3,400万ドルの罰金。
(3) 2003年には公正取引委員会が、アメリカやEUの競争当局とともに塩化ビニールの強化剤である「モディファイヤー」につき国際カルテルとして排除勧告をしました。
(4) 2004年8月、D化学工業の食品防腐剤ソルビン酸国際カルテルで5,300万ドルの罰金とともに、同社邦人社員が禁固3ヶ月の実刑で収監へ、との報道あり。
(5) 半導体分野ではDRAMにつき国際カルテルが問題となり、アメリカ司法省より日本、韓国、ドイツのメーカーに対して巨額の罰金が課せられています。
(6) 2006年12月には、液晶パネルの国際カルテルの疑いで、液晶パネルの大手(サムスン電子、LGフィリップスLCD、シャープ等)に対し、アメリカの司法省、日本や韓国の公正取引委員会が調査を開始したとの報道があります。
(7) 2007年5月、マリンホースの国際カルテルにつき、日米欧が捜査。米司法省がブリヂストンの化工品海外部長らを逮捕し、公取委がブリヂストンと横浜ゴムに立入り検査。
(8) 2007年9月、EU欧州委員会は、ファスナーの国際カルテルで、YKKに対して制裁金242億円を命令。
(9) 2008年11月、EUの欧州委員会は、自動車用ガラスの価格カルテルで、日本板硝子系の英ピルキントンに448億円、旭硝子に138億円、フランスのサンゴバンに1,000億円等、合計1,700億円の制 裁金の支払を命じた。
(10) 2008年11月、アメリカ司法省は、液晶パネルの国際カルテルで、シャープに罰金115億円、LGディスプレー(韓国)に罰金380億円、中華映管(台湾)に罰金62億円を科した。
(11) 2009年1月、マリンホース国際カルテル事件で、EU欧州委員会がブリヂストンに対し制裁金約70億円、横浜ゴムはリーニエンシーで制裁金全額免除。
(12) 2009年1月、電力ケーブル国際カルテルで、公取委がジェイ・パワーシステムズ、ビスキャス、エクシムに立入検査。
(13) 2010年8月、液晶パネル国際カルテル事件で、ニューヨーク州、フロリダ州、イリノイ州が、シャープ、日立製作所、東芝、サムスン電子等に対し、損害賠償請求訴訟を提起。
(14) 2010年9月、冷却用コンプレッサーの国際価格カルテル事件で、アメリカ司法省は、パナソニックがワールプールとカルテルを行っていたと認定し、パナソニックに対して約41億円の罰金の支払を命じました。
(15) 2011年12月、液晶パネル国際カルテルに関する上記(13)記載の民事訴訟で、シャープ、サムスン電子(韓国)、奇美電子(台湾)等7社が計420億円を各州や消費者に支払う和解が成立。
(16) 2012年1月、ワイヤーハーネス国際カルテルで、アメリカの司法省は、矢崎総業に対して罰金約360億円、幹部4人に禁錮刑。

3. 独占禁止法上の規制
 国際カルテルについては、独占禁止法第6条が「事業者は、不当な取引制限・・・に該当する事項を内容とする国際的協定又は国際的契約をしてはならない」と規制しています。
 この第6条の存在意義については、第3条後段の不当な取引制限による規制と異なり競争の実質的制限の効果の発生が必ずしも要件ではなく、その意味で多分に予防的意義があるとか、日本の市場への影響を余り考慮することなく独禁法を適用することができ、競争政策の国際化に適合することができる等の見解があります。

4. 公正取引委員会の態勢
 公正取引委員会は、かねてより海外の競争当局と協力協定を締結し、さらに様々の意見交換を行っています。
 平成11年には、アメリカとの間で「反競争的行為に係る協力に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定」が締結されています。
 平成15年には、EU(欧州共同体)との間で「反競争的行為に係る協力に関する日本国政府と欧州共同体との間の協定」が締結されています。
 なお、平成21年10月には、テレビ用ブラウン管国際カルテル事件で、公取委は外国企業に対して初めて課徴金納付命令を出しました。

5. 審決
(1) アクリル紡績糸国際カルテル事件
公取委 昭和47年12月27日勧告審決
「5社は、西ドイツ梳毛紡協会との間にドイツ国の地域向けのアクリル紡績糸の輸出限度量を決定することにより、公共の利益に反してアクリル紡績糸の当該地域向けの輸出取引の分野における競争を実質的に制限しているものであり、これは、不当な取引制限に該当する事項を内容とする国際的協定を締結しているものであって、私的独占禁止法第6条第1項の規定に違反するものである」

(2) レーヨン糸国際カルテル事件
公取委 昭和47年12月27日勧告審決
「3社は、西欧事業者らとの間に3社のレーヨン糸のアメリカ合衆国の地域を除く地域向けの輸出地域、輸出限度量および最低販売価格を決定することにより、公共の利益に反してレーヨン糸の当該地域向けの輸出取引の分野における競争を実質的に制限しているものであり、これは、不当な取引制限に該当する事項を内容とする国際的協定を締結しているものであって、私的独占禁止法第6条第1項の規定に違反するものである」

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