薬の副作用−製薬会社の責任
1.薬の副作用とは、
人体にとっては異物と言える一定の薬物の作用を利用し疾病を治そうとする場合において、当該医薬品のもつ医療上有益ではない作用を副作用といいます。
このような医薬品が人体にもたらす有害な作用を副作用といい、これには、当該疾患の治療目的に添わない医薬品を使用した場合や、治療目的に添う医薬品を使用したものの、その使用量や使用方法が誤っている場合、また、医薬品の組み合わせによっても副作用事故が生じる場合があります。
いずれにしましても、副作用も医薬品が人体に作用することによって、引き起こされる事象です。
薬の副作用によって生ずる医療事故は決して少ないものではないといわれております。
ここでは、この薬の副作用事故について、近時クローズアップされるようになってきた製薬会社の責任(警告義務違反等)に重点を置いて概説します。
2. 薬の副作用事故における医師の責任、製薬会社の責任
薬の副作用による医療過誤が起きた場合、医師を相手として損倍賠償訴訟を提起し、その訴訟の中で、当該医師による医薬品の使用が適切であったかどうかが主たる争点になるのが一般的な流れといわれてきました。
しかし、近時、医師、病院に対して損害賠償請求訴訟を提起することに加えて製薬会社に対しても訴訟提起を行い、責任を問うケースが増えているようです。
その場合には、製薬会社の製造した医薬品そのものに欠陥があるかどうかのみならず警告義務違反の責任等についても論じられるようになってきているのです。
3. 薬事法52条1号
医薬品は、疾病の治療に有効な主作用と有害な副作用を併有しているのが通常です。そこで、医薬品を製造、販売する者は使用者に対して副作用の存在を警告する義務を有するとされています。
これが明文化されているのが、薬事法52条1号です。当該条文は、医薬品の添付文書などには「用法、用量その他使用及び取り扱い上の必要な注意」を記載することを義務づけており、副作用も当然これに含まれるものと解されています。副作用が警告されることにより、使用者は副作用の危険を知り、その医薬品を使用しないことを含めて副作用の発現を回避する行為をとることができることになります。
かかる警告義務を危険物の製造者として私法上の義務であることを前提として、警告義務違反を根拠に製薬会社の責任を認めたと解される裁判例も見られます。
4. 製造物責任と医薬品
医薬品も製薬会社が製造した製造物です。
製造物によって生じた事故については、従来、民法上の不法行為と債務不履行の両者が事案に応じて適用されてきました。
しかし、現代の社会においては、製造物の大量化、高度化等により生じたメーカーと消費者との間の格差を是正し、消費者(被害者)を救済するために製造物責任法(PL法)が制定され、平成7年7月1日から施行されております。
医薬品も製造物に該当すると解されていることから、本法律に基づいて製薬会社の責任を追及することが考えられることになります。
製造物責任法においては、適切な指示、警告を欠く場合には製造物の欠陥があるとされることになるのです。
ただ、実際の医薬品の添付文書の記載が具体的にはどのような記載になっている場合に製薬会社が指示、警告義務を怠ったと言えるのかどうかは、個々の事例に応じて自ずと異なるものと考えられます。
なお、薬の副作用による被害の裁判外紛争解決制度として医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構による給付事業が存しますが、給付水準が低く法的損害賠償責任に基づくものではないとの指摘があります。
5. 裁判例
副作用事故の裁判例は多くありますが、以下には、製薬会社の責任について問題となった事件において責任が肯定された事例と否定された事例について各事件名と判決日を挙げておきます。
<肯定例>
・ストマイ副作用全聾事件−東京高等裁判所 S56.4.23判決
・スモン訴訟−東京地方裁判所S53.8.3判決、大阪地方裁判所 S54.7.31判決、京都地方裁判所 S54.7.2判決、静岡地方裁判所 S54.7.19判決、札幌地方裁判所 S54.5.10判決
・ クロロキン薬害訴訟控訴審判決−東京高等裁判所 S63.3.11判決
<否定例>
・虫垂炎手術のための脊髄麻酔の事例−東京地方裁判所 H4.1.30判決
・薬品の副作用によって薬疹、内臓障害をおこして死亡したとして製薬会社の不法行為責任が問われた事例−大阪地方裁判所
H2.6.8判決
当事務所においても薬の副作用が患者にあらわれた際、担当医師が適切な特効薬を処方したか否か等が争点となった事案につき、医療過誤とPL責任を問題とした訴訟を担当したことがありますので、この種問題につきましても遠慮なく
ご相談下さい。