御器谷法律事務所

「独禁法と私」 - その14、差止の示談交渉

  1. ホームページを見ての相談
     独占禁止法のHPを開設している法律事務所は未だ少数のためもあり、又法律事項も多数に及んでいることから、当事務所のHPを見て電話を頂き、ご来所相談となることも多数に及んでいます。
     今回は、神戸のあるアパレル会社からの相談でした。

  2. 相談の内容
     アパレル会社からの相談内容の概要は、次のとおりです。
    (1) 当社は、4~5人の従業員、婦人服のアパレルの中小企業で、上場の大規模小売業者に年商の9割前後を納入しています。
    取引先の大手企業は、年商1千数百億円であり、全国に店舗を展開している上場企業です。
    (2) この取引先大手企業へ、納入金額の2%を宣伝協賛金として支払い、大手企業の店舗閉店時や改装、在庫調整のため、一旦納入した商品も一方的に返品されることもあります。
    さらに、今般は取引先大手企業の新しいコンピューター・システム導入のため、100万円前後の費用を負担して欲しいというものでした。しかも、この条件がのめなければ取引を停止する旨通知してきました。
    私達は、この話を聞き、大手企業の優越的地位の明らかな濫用に該当する、と確信しました。

  3. 取引先企業との示談交渉
     早速内容証明郵便にて相手先企業に通告したところ、弁護士会での示談交渉となりました。
     当方は、相手企業の取引方法が明白に優越的地位の濫用にあたることから、今迄支払済の宣伝協賛金1,000万円、不当返品代1,000万円、取引停止にともなう逸失利益2,000万円、計4,000万円の損害賠償を請求しました。勿論この請求が認められなければ、裁判所への独禁法に基づく差止請求と損害賠償請求の訴訟の提起のみならず、公正取引委員会への申告と措置請求も辞さない旨を強く主張しました。
     これに対して、相手先企業は、宣伝協賛金や返品は双方納得のうえ実施したものであり、新システムの導入も今後の経営環境整備のため必要不可欠なものであり、他の取引先も同意頂いている、等とするものでした。

  4. 公正取引委員会への報告と措置要求
     双方の示談交渉も、なかなか進展しない面もありましたので、当方としては次の一手として、公取委への申告と措置要求を書面として事前に提出し、その後にクライアントとともに公取委に説明に行きました。
     宣伝協賛金と返品については、他でもよくあることなので一定の理解は得られたようでした。ただ、コンピューターの新システム導入にともなう100万円の負担については前例に乏しく、なかなか理解を得にくいような状況ではありました。
     公取委は、独禁法違反への対処については、その明白な証拠があり且つ一定の広がりのある事案については動いてくれるが、個々の取引における独禁法違反についてはなかなか動いてくれない、実態があるようにも感じることがあります。

  5. 示談の成立
     示談の受任後4~5ヶ月間位、粘り強い示談交渉が進み、ようやく次のような内容の示談が成立しました。
    (1) 相手方は、当方に対し、本件の一切の解決金として○○○万円を支払う。
    (2) 相手方は、当方に対する取引を再開する。
    (3) 相手方は、当方に対し、今後宣伝協賛金や返品を請求しない。
    (4) 相手方は、当方に対し、新システムの経費分の負担を求めない。但し、当方は、相手方に対し、システムの運用に協力する。
    (5) 双方の守秘義務

  6. 大企業とコンプライアンス体制
     今回も、取引先上場企業は、コンプライアンス体制(法令遵守)を経営の根幹と標榜しており、独禁法に基づく差止請求にも一定の理解を示していました。ただ、金額的な詰めの段階では、お互いの見解も相違しておりましたが、ここは我慢競べの面もあり、結果的には訴訟よりも迅速に、合理的解決ができたのではないかとも思われます。
     独禁法に基づく差止請求の場面においても、示談交渉が作用した事例としてご紹介いたしました。
    (弁護士の守秘義務より、設定、流れ等を変えています。)

独禁法と私
1.慶應義塾大学時代  2.司法試験受験時代  3.司法修習生時代
4.イソ弁時代  5.東京で独立  6.初めてのカルテルの弁護
7.入札談合の弁護  8.官製談合の弁護  9.リーニエンシー
10.差止請求A案  11.三光丸事件  12.慶應L.S.
13.海外の独禁法  14.差止の示談交渉  15.初の差止決定
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