御器谷法律事務所

不当な取引妨害


1. 不当な取引妨害とは、
 一般的には、事業者が、競争関係にある他の事業者とその取引の相手方との取引について、契約の成立の阻止、契約の不履行の誘引その他いかなる方法をもってするかを問わず、その取引を、独占禁止法上不当に、妨害することを意味します(一般指定第15項)。
 本来経済社会における競争は、事業者がその提供する商品やサービスについてその品質と価格を中心とした能率競争を中心として行われるべきものです。しかし、事業者が脅迫や威圧、誹謗中傷を用いて競争事業者の取引を妨害したり、不当な利益を競争者の相手方に提供して競争事業者から契約を奪い取ったり、メーカー系列の保守管理事業者が競争事業者に対して修理部品の供給を拒絶したり遅延させたりした場合には、能率競争に反するものであり、競争手段の公正さを欠き、又は、自由競争の減殺として、公正な競争を阻害するものであり、独禁法上不公正な取引方法に該当することとなってきます。
 なお、この不当な取引妨害の一種である並行輸入の妨害については別稿をご覧下さい。

2. 行為要件と公正競争阻害性
(1) 「契約の成立の阻止」
 競争者とその取引の相手方において契約が成立している場合に、ないしは成立しようとしている場合に、事業者が脅迫や威圧を加え、さらに誹謗中傷を行ってその契約を阻止しようとするときに、不当な取引妨害となります。
 これは、主に競争手段の公正さを欠くものとして、公正競争阻害性を有するとされるものです。
 なお、公正取引委員会の運用においては、このような行為が独禁法上の不当な取引妨害となるには、事業者のマーケット・シェア、市場における閉鎖的効果等を問題としているとの指摘があります。
(2) 「契約の不履行の誘引」
 競争者とその取引の相手方において契約がすでに成立している場合に、事業者がその取引の相手方に不当な利益を提供して競争者とその相手方との契約を解除させようとしているときに、不当な取引妨害となります。
 これは、主として競争手段の公正さを欠くものとして、公正競争阻害性を有するとされるものです。
 なお、このような契約の不履行の誘引は、民法上の積極的債権侵害に該当するとの指摘があり、これが独禁法上の不公正な取引方法となるには公正競争阻害性を如何にとらえるか等に問題もあるでしょう。
(3) 「その他いかなる方法をもってするかを問わず」
 行為要件として極めて広範な規定ですので、公正競争阻害性をも十分に吟味して要件該当性を判断する必要があると考えられます。
 この見地からも、エレベータのメンテナンス会社における修理部品の提供の遅延の事例は、十分な吟味が必要と思われます。

3. 具体例−審決、判決
(1) 神奈川生コンクリート協同組合事件−公取委平成2年2月15日勧告審決
「神奈川生コンクリート協同組合は、前記事実(1)及び(3)によれば、員外者と生コンの需要者との生コンの取引を不当に妨害しているものであり、さらに、前記事実(1)及び(4)によれば、員外者とセメントの製造業者とのセメントの取引を不当に妨害しているものであって、これらは、いずれも前記不公正な取引方法の第15項に該当し、それぞれ独占禁止法第19条の規定に違反するものである。」
(2) 東芝エレベータテクノス事件−大阪高判平成5年7月30日
「メーカーである東芝及びその子会社で東芝製エレベーターの部品を一手に販売している控訴人は、東芝製エレベーター及びその部品の数・耐用年数・故障の頻度を容易に把握し得ること及びエレベーターの所有者が容易にはそのエレベーターを他社製のそれに交換し難いことからして、部品の常備及び供給が東芝及びその子会社で東芝製エレベーターの部品を一手に販売している控訴人の同エレベーター所有者に対する義務であると解される一方で、エレベーターが交通(輸送)機関の一種であって、これに不備が生じた場合迅速な回復が望まれるのは極めて当然であることからすると、控訴人の保守契約先でないからといって、手持ちしている部品の納期を三か月も先に指定することに合理性があるとは到底みられず、不当とされても止むを得ないところである。
 したがって、控訴人の乙事件行為は、一般指定一五項の不当な取引妨害行為に当たるというべきである。」

 この不当な取引妨害につきましても、遠慮なく当事務所にご相談下さい
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