御器谷法律事務所

パテントプール


1. 意義
(1) 定義
 「パテントプールとは、ある技術に権利を有する複数の者が、それぞれが有する権利又は当該権利についてライセンスをする権利を一定の企業体や組織体に集中し、当該企業体や組織体を通じてパテントプールの構成員等が必要なライセンスを受けるものをいう」とされています(公正取引委員会「知的財産の利用に関する独占禁止法上の指針」)。
 例えば、パチンコ機を製造するX社ら10社及びY連盟がパチンコ機製造に関する特許権等を所有し、そのライセンスなしにはパチンコ機を製造することが困難な状況にあったので、X社ら10社がこれらの権利の管理をY連盟に委託する場合などが例として挙げられます(平成9年8月6日審決参照)。
(2) パテントプールが行われる理由
 情報通信分野などの技術革新が著しい分野などにおいては、複数の事業者が統一された規格を策定してそれを広く普及させるという方法による方が、新製品の市場の迅速な立ち上げや需要の拡大を図ることができ、また消費者の利便性を向上させることができます。しかし、そのためには、当該規格に関連して特許権を有する事業者が多数存在しており、その事業者と個別的にライセンス交渉をすることとなれば膨大な労力と費用を要することとなりかねません。そこで、当該規格技術に関して特許権者が「パテントプール」を形成して、必要な特許を一括してライセンスすることで、その問題を解決するものです。
このままでは規格技術が使えない!

(3) 独占禁止法上の問題点
 「パテントプールは、事業活動に必要な技術の効率的利用に資するものであり、それ自体が直ちに不当な取引制限に該当するものではない」とされています(前掲公正取引委員会「知的財産の利用に関する独占禁止法上の指針」)。
 しかしながら、次のような場合には、独占禁止法上問題となる場合があります(公正取引委員会「標準化に伴うパテントプールの形成等に関する独占禁止法上の考え方」参照)。
 1) パテントプールへの参加に係る制限
 パテントプールへの参加に関して制限を設ける場合、その内容がパテントプールを円滑に運営し、規格を採用する者の利便性を向上させるために合理的に必要と認められる場合には、通常は独占禁止法上問題となることはないと思われます。
 しかしながら、パテントプールへの参加を不当に制限したり、パテントプールに参加する者のうち特定の事業者のみ不当に差別的に取り扱ったりすることは、独占禁止法上問題となるおそれがあり個別具体的な事情を考慮して、慎重に検討する必要があります。
 2) パテントプールを通じたライセンスに伴う条件設定
 パテントプールを通じたライセンスを行う場合、事業者ごとに異なるライセンス条件を設定すること、規格の応用成果を他の事業者にライセンスする義務を課すこと、不争義務(ライセンシーはライセンスされた特許について特許無効審判請求を行わないなど、当該特許の有効性について争わない義務のこと)を課すこと、非係争義務(ライセンシーはライセンシーが有し又は取得することとなる特許等をライセンサー又は他のライセンシーに対して権利行使しない義務のこと)を課すことなど、パテントプールを通じたライセンスに伴い種々の条件を設定することは、独占禁止法上問題とされる可能性があり、個別具体的な事情を考慮して慎重に検討する必要があります。

2. パテントプールに関する審決例(平成9年8月6日審決)の紹介
(1) 事案の概要
 パチンコ機を製造するX社ら10社及びY連盟がパチンコ機製造に関する特許権等を所有し、そのライセンスなしにはパチンコ機を製造することが困難な状況にあったので、X社ら10社がこれらの権利の管理をY連盟に委託して、Y連盟はこれらの特許の管理運営業務を行っていた。国内のパチンコ機製造業者のほとんどすべてである組合員19社は、Y連盟が所有又は管理運営する特許権等の実施許諾を受けてパチンコ機を製造していた。
 Y連盟は、昭和58年頃から、既存業者である組合員の利益を確保して新規参入を抑制するため、新規参入業者には上記特許権等の実施許諾を拒絶すること、既存業者についても(買収などにより)営業状態を著しく変更した場合は契約を解除・更新拒絶するなどの行為を繰り返し行ってきた。
 公正取引委員会は、X社ら及びY連盟に対して、勧告を行ったところ、X社ら及びY連盟はこれを応諾したので、同趣旨の勧告審決をしたものである。
(2) 審決内容
 「X社ら及びY連盟の行為は・・・我が国におけるぱちんこ機の製造分野における競争を実質的に制限しているものであって、これは特許法・・・又は実用新案法・・・による権利の行使とは認められないものであり、独占禁止法第2条第5項に規定する私的独占に該当し、独占禁止法第3条の規定に違反するものである。」
(3) まとめ
 パテントプールは独占禁止法に直ちに抵触するものではないとしても、パテントプールを利用して新規参入を抑制し既存業者の利益を図ることは、「特許法・・・による権利の行使と認められる行為」(独占禁止法21条)とは認められず、独占禁止法に抵触する可能性があるものと考えられます。

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