有価証券報告書に虚偽記載をした者の責任
1.有価証券報告書の提出義務及び記載事項
(1) 次のいずれかの有価証券を発行する会社は、内閣総理大臣に、有価証券報告書を提出しなければならないこととなっています(金融商品取引法24条1項)。
| ア. |
金融商品取引所に上場されている有価証券 |
| イ. |
流通状況がア.の有価証券に準ずるものとして政令で定める有価証券 |
| ウ. |
上記のア.イ.以外の有価証券で、有価証券の募集・売出しにつき、開示制度の適用を受けて行った有価証券 |
| エ. |
上記のア.イ.ウ.以外で、直近5事業年度の末日のいずれかの末日におけるその有価証券の所有者の数が政令で定める以上であるもの。 |
| (2) 有価証券報告書には、内閣府令で定めるところにより、事業年度ごとに、下記の事項を記載する必要があります。 |
| ア. |
当該会社の商号 |
| イ. |
当該会社の属する企業集団(グループ) |
| ウ. |
当該会社の経理の状況 |
| エ. |
その他内閣府令で定める事項 |
| (3) このように、市場で流通するような有価証券を発行する会社に対しては、その経理の情報等を開示する義務が課されています。そして、投資者は有価証券報告書の記載を投資の判断材料とできるのです。 |
2. 有価証券報告書に虚偽記載をした者の責任
(1) 刑事罰
有価証券報告書の重要な事項につき虚偽の記載のあるものを提出した者は、10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金に処され、又は懲役と罰金の両方を併科されることもあります(金融商品取引法197条1項)。
また、法人の代表者、代理人、使用人、その他従業者が、有価証券虚偽記載をした場合には、その行為者を罰するのに加えて、その法人に対しても7億円以下の罰金刑が科されています(207条1項)。
(2) 行政罰
証券市場の公正性・透明性を確保し、投資者の信頼が得られる市場を確立することを目的として、規制の実効性確保のための新たな手段として、刑事罰に加えて、行政上の措置として違反者に対して金銭的負担を課す課徴金制度が採られています。
有価証券報告書の虚偽記載に関する課徴金の額は、
300万円を原則として、株式の市場価格の総額等の
10万分の3に相当する額が300万円を超える場合には、その額となっています(金融商品取引法172条の2第1項)。
また、四半期・半期・臨時報告書等の虚偽記載の場合には、有価証券報告書虚偽記載の場合の半分の課徴金を課することとなっています(172条の2第2項)
(3) 民事責任
有価証券報告書の中の重要事項について虚偽の記載を行った場合、虚偽記載により損失を被った投資者等に対して、民事上の損害賠償責任を負うことがあります。
西武鉄道株主集団訴訟の第一審判決(東京地裁平成20年4月24日判決)では、有価証券報告書の株式数についての虚偽記載が不法行為法上の違法行為にあたるとされ、会社および代表者が連帯して株主の損害について責任を負う、とされました。
また、同社に対する別の訴訟(東京地裁平成19年9月26日判決)では、有価証券の虚偽記載により上場廃止になった株式会社の株式をその親会社から購入した場合に、親会社による説明義務違反が認められ、買主に対して不法行為責任が認められています。
なお、金融商品取引法は、有価証券報告書の虚偽記載によって生じた投資者の損害について、会社や役員に対して責任を求める規定を設けています(金融商品取引法21条の2、24条)。
(4) 上場廃止
上場企業で有価証券報告書に虚偽記載があった場合、各証券取引所が設定する上場廃止基準に抵触し、上場廃止を余儀なくされる可能性があります。
東京証券取引所では、「有価証券報告書等に『虚偽記載』を行った場合で、その影響が重大であると当取引所が認めたとき」という上場廃止基準が設けられています。
上場廃止になると、株式等の有価証券は流通性が著しく損なわれることから、株式等の市場価格の大幅な低下を招く可能性が高く、また、この価格低下によって株主等が被った損失について、(3)で述べた民事上の責任を会社や代表者が負わなければならないケースも出てきます。
この
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