プラント契約
1. プラント契約とは、
(1) プラントとは、製造、組立、貯蔵、発電等の生産活動を行う一連の工場施設の総称です。
そして、プラント契約とは、このようなプラントを建設するにあたって、設計から施工までを一括して請け負う契約のことをいいます。
(2) プラント契約においては、一般の建設請負契約とは異なる特徴があります。
すなわち、竣工後に一定の生産活動を行うことが当然に予定されているため、契約で定められた仕様通りの性能を保証され、稼働することが重要になります。そのため、竣工したプラントにつき請負人が一定の性能を保証することや、性能を充たしていない場合の処理が問題となります。
また、プラントによる生産活動によって生み出される利益は巨額であるため、通常の損害賠償法理を適用しては、請負人に公平に著しく反する過酷な責任を負わせることにもなりかねません。そこで、請負人の賠償責任を一定範囲に制限すべきことも問題になります。
2. プラント契約の問題点
(1) 性能保証
プラント設備が保つべき性能は、仕様書において具体的な数値で定められるのが普通です。
しかし、プラントが1%でも仕様を充たさない場合でも「性能未達」と判断され債務不履行になることは、現実的ではありません。
そのため、プラントとして機能しうる最低限の性能を充たしている場合には、仕様書が定める性能との差額を補償金等の形で請負人が支払い、性能未達を金銭的に処理する例も見られます。
(2) 試運転の実施
プラント契約では、仕様書通りの一定の性能を保証するため、注文者への引渡前に数段階にわたって試運転を実施することが通常です。
この場合には、注文者が試運転に立ち会い、仕様書通りの性能を充たすことを確認することになります。
(3) 瑕疵担保責任
民法上の瑕疵担保責任における期間制限とは異なり、プラントの契約書例では、瑕疵担保責任の保証期間を原則として引渡後1年間とし、「石造、金属造、コンクリート造及びこれに類する建物その他、土地の工作物」の瑕疵については2年間とするものが見受けられます。
(4) 賠償責任の制限
賠償すべき損害の範囲については、請負人が過酷な責任負担を負うことを回避することが公平に叶うため、これに制限を加えるのがプラント契約の通例となっています。
具体的な規定例としては、「損害賠償義務の範囲について、逸失利益、不稼動損失、営業損失、および間接損害については責任を負わないものとする。」といったものや、「請負人が負うべき損害賠償については、契約金額の○%を上限とする。」といったもの等があります。
3. プラント契約に関する裁判例
(1) 大阪高裁平成6年4月28日判決
「被控訴会社が被控訴人市に対し、本件プラントのような工場設備を製造し、安定した操業をなしうる状態で引き渡すとともに、
被控訴人市に対し、付随的に、本件プラントの操業に従事する労働者が、通常の就業中に生命身体の損害を受けることのないように、その安全を確保すべき設備の設置に努力すべきことの契約上の責任を負担したようなときは、その引き渡しがなされた後であっても、保証期間が経過する前においては、被控訴会社は、被控訴人市以外の右労働者に対しても、一定の範囲で、その生命身体についての損害を回避すべき注意義務を負担するものということができる。したがって、被控訴会社は、右の範囲で、右労働者の生命身体につき損害が生ずる結果を予見することが可能であって、しかも被控訴人市に対し右結果の発生を防止できる措置をなすべき義務を負担するのにもかかわらず、右措置をしなかった結果、右労働者の生命身体に損害が発生したと認められるときは、被害者に対し右損害を賠償すべき責任があるというべきである。」
(2) 東京地裁平成8年9月27日判決
本件事案は、原告が、「訴外C(以下「C側」という)との間でアルミニウムのエッチング化成箔の製造プラント(以下「本件プラント」という)を中国において建設する旨の契約(以下「本件プラント契約」という)を締結し、これを履行するため、被告M及び被告会社との間で、被告M又は被告会社が原告に対し、本件プラント建設の技術面全般にわたってノウハウの提供及び技術指導等を行う旨の同内容の準委任契約(以下「本件契約」という)を順次締結したが、被告らの提供したノウハウ等が本件契約で要求される技術水準に達していなかったために本件プラントの建設が挫折し、その結果、被告らに対して支払ったノウハウ料等相当の損害を被ったと主張して、被告らに対し、右損害の賠償を請求」した事案である。
認定した事実によれば、「被告Mは、Nに永年勤めたベテランの技術者であり、本件技術水準が昭和五五年ないし五七年ころの実用品の規格を基準としていることからすると、本件技術水準は、被告Mにとって、実現が十分期待される程度の水準であった。
本件プラントの機械設備は、納期の遅れはあったものの、昭和六二年一一月初めまでに据付が完了し、その作動状況に問題はなかった。
ところが、本件試運転を始めるに際し、被告Mは、アルミ箔の異常溶解による箔切れ及びピンホールの問題に直面し、機械設備の調節や電解溶液の調合に時間を費やして解決しようとしていたが、結局その原因を発見することができず、有効な対策を講ずることができなかった。
そこで、被告MはIを招いて助けを求めたところ、
同人は、右箔切れ等の原因は機械の問題ではなく、タンクの中の薬品の液面が高すぎることが原因であると考え、短期間のうちに、その液面を低くするという方法により、右問題を解決した。そして、本件技術水準に近づく一定の成果を上げ、被告Mに対し、今後の方針につき助言を与えて帰国した。
それにもかかわらず、被告Mは、Iの残した右成果を引き継ぎながら、その後、一か月以上にわたりひたすら電解溶液の濃度の調整に終始し、結局、本件技術水準を満たすまでに至らなかった。その結果、低圧、中圧、高圧の各エッチング機及び化成機の計六台の設備よりなる本件プラントは、最初に試運転を行った低圧エッチング機が本件技術水準に達することができず、他の五台の機械の試運転を待たずに挫折した。
ものである。」
「以上によれば、本件プラントの挫折の原因は、被告らの提供したエッチング箔の製造ノウハウが本件技術水準を満たすものではなかったことにより、本件試運転が失敗したことにあると推認することができる。」
この
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