御器谷法律事務所

平成18年7月31日

独禁法に基づく差止請求の改善点等について

弁 護 士 御器谷 修
弁 護 士 梅津 有紀

第1、総論
 独占禁止法の平成12年改正により第24条差止請求が平成13年に施行以来5年余の間、独禁法に基づく差止請求につき一件たりとも認容判決が出ていないのは、極めて遺憾なものであります。
 差止請求の改正の目的である独禁法違反による被害者の救済を訴訟により行い、被害の早期救済を行い且つ独禁法のエンフォースメントを確保しようとする趣旨が、結果として何等貫かれていないのは、改正法の規定に問題があるのか、又は法の運用に問題があるのか、あるいはその双方なのか、につき吟味すべき時期にあることを痛感いたします。
第2、各論−質問事項について
1、「24条訴訟全般」について、
(1) 不公正な取引方法の立証について、
 この点裁判所においては、市場をどうとらえ、その範囲・対象をどう画定するかにつき、いわゆる独禁法的アプローチに対する理解に乏しい憾を強く持ちました。
 また、優越的地位の濫用の要件である「不利益」の認定においても独禁法的アプローチへの理解を欠く面を感じました。
 従って、不公正な取引方法の立証自体が極めて困難であった、と思われます。
(2) 談合、カルテルの損害賠償請求訴訟と比べて、
 談合やカルテルに関する損害賠償請求訴訟については、先行する談合やカルテルについての公正取引委員会の資料等が存することもあり、立証上の助けとなることがあります。
 これに対して24条訴訟においては、一般的には公正取引委員会が問題とすらしていない被告の不公正な取引方法の差止を請求するため、先行する公取委の資料等がなく、立証上困難な面が存します。
(3) 不公正な取引方法に限定について、
 談合、カルテル、私的独占によって被害を被っている被害者が現に存するのですから、これらを差止の対象とするニーズはあると考えます。
 特に談合やカルテルの情報が入る場合、すでに公取委の調査が先行している場合、カルテルや私的独占による被害が発生しているのに公取委が動かない場合等に、その具体的なニーズを強く感じます。
 その際、訴訟においては公取委への求意見や、近時消費者契約法の改正で認められるに至った消費者団体訴訟の独禁法への導入が検討されるべきと考えます。
2、「差止制度の使い勝手をより良くする」について、
(1) 第24条訴訟の改善点について
1) 裁判所と公取委との連携を要望したい。
 特に裁判所においては独禁法に対する理解が乏しい面があります。又、公取委においても小規模な事案については余り積極的でない面もあり、公取委の扱う事案と私訴請求の対象となる事案についてのいわゆる棲み分けへの理解が乏しいと感ずることがあります。
2) 独禁法第83条の3、第2項の求意見の活用
 裁判所でこの点につき市場の画定につき求意見を求めたところ、裁判所及び公取委においても前例がないということで、全くこの求意見制度が機能していないことに驚かされました。
3) 消費者団体訴訟等の導入
 独禁法違反による被害が広く存在しつつも個々の被害額はそれ程でもないとき、消費者団体訴訟等を独禁法にも導入されるべきと考えます。
(2) 文書アクセス問題について
1) 相手方が保有する文書にアクセスする必要がありました。特に市場の確定のため、相手方の取扱商品別年間売上等の資料を入手する必要がありました。
2) 相手方の計算書類、帳簿類については当初入手できなかったため訴訟上の求釈明を行い、一部を入手しました。
 3)、4) 該当ありません。
5) 特許法105条と同様の規定を導入すべきと考えます。
(3) 「著しい」損害について
1) 訴訟実務上は不公正な取引方法の立証が最大の関心事であります。「著しい損害」については主張・立証は現段階では余り問題とされない感があります。
特に取引拒絶等の場合は、著しい損害は当然にありとされているのではないでしょうか。
2) 実状においては不公正な取引方法の認定が極めて厳格になされ、且つ「利益を侵害」も要件とされていることから、重ねて「著しい損害」を要件とすることは、何ら必要のないことであり廃止すべきものと考えます。

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