株式保有への独占禁止法の規制
1. 株式保有と独占禁止法
会社は勿論、会社以外の者も、他の会社の株式を取得又は所有することによって、一定の取引分野における競争を実質的制限することとなる場合には、これを保有してはならず、又、不公正な取引方法により他の会社の株式を保有してはならないものとされています(法第10条、第14条)。
これは、このような株式保有により市場における競争の実質的制限が容易に現出しうる蓋然性に対して独禁法がこれを禁止し規制しようとするものです。
2. 平成21年独占禁止法改正.
平成21年独占禁止法改正では、会社の株式取得に対する規制につき以下のような重大な変更がされました。
(1) 事前届出制の導入
株式取得についても、合併や事業譲渡と同様に事前届出制が導入されました。
これにより、株式取得会社においては届出受理の日から30日を経過するまでは当該届出に係る株式の取得をしてはならないこととされました(法10条8項)。
そして、公正取引委員会は、当該届出に係る株式の取得に関して排除措置命令を出す場合には、この期間内(又は公正取引委員会必要と認めて短縮した期間内)に、当事会社に対して、予定される排除措置命令の内容、公正取引委員会の認定した事実及びこれに対する法令の適用等の事項を事前に通知しなければならないとされています(法10条9項、49条5項)。
但し、公正取引委員会においてより詳細な審査をする必要があると判断した場合には、上記期間内に、当事会社に対し必要な報告や情報・資料の提出を求めた場合には、届出受理の日から120日又は全ての報告等を受理した日から90日を経過した日のいずれか遅い日までに事前通知を行えば足ります(10条9項)。
なお、事前の届出を怠った場合や虚偽の記載をした届出書を提出した場合、待機期間の満了を待たずに株式を取得した場合等、この事前届出制度の手続きに違反した場合には、200万円以下の罰金が課されます(法91条の2第1項3号、4号)
ただ、公正取引委員会への事前届出が困難な場合(株式の分割・併合・無償割当てによって株式を取得する場合、取得条項付株式又は取得条項つき新株予約権に係る取得事由の発生によりその対価として交付される株式を取得する場合等)には、事前届出が免除されています。
(2) 株式取得に関する届出基準の見直し
平成21年独禁法改正では、株式取得に関する届出基準額の算定の基礎が、従前の総資産額基準から国内売上高基準へと変更されました。
また、届け基準額の算定の範囲につき、企業結合集団という新たな概念を導入するとともに、届出基準額の引上げ及び届出閾値の簡素化がされました。
具体的には、次のとおりの株式取得をする場合に事前の届出が必要となります(法10条2項)
1) 企業結合集団の国内売上高合計額200億円超の会社が
2) 会社及びその子会社の国内売上高合計額50億円超の会社の株式を
3) 20%、50%を超えて
取得する時。
(3) 外国会社にも国内会社と同様の基準を適用
平成21年独禁法改正後は、外国会社についても、当該外国会社を含めた企業結合集団の日本国内における売上高の合計額を基礎として届出基準額が算定されることとなりました。
(4) 組合を通じた株式取得についても通知義務を規定
組合(任意組合、投資事業有限責任組合等)を通じて株式を取得しようとする場合につき、当該組合の直接の親会社が株式を取得しようとするものとみなし、この場合にも届出義務が課されることとなりました(法10条5項)
3. 企業結合ガイドライン
株式保有につき公正取引委員会の審査の対象とされる場合につき、公取委の「
企業結合審査に関する独占禁止法の運用指針」(平成16年5月公取委・平成22年1月1日改定)は、次のとおり明示しています。
| ア |
会社が他の会社の株式を保有することにより、株式を所有する会社(以下「株式所有会社」という。)と株式を所有される会社(以下「株式発行会社」という。)との間に結合関係が形成・維持・強化され、企業結合審査の対象となるのは、次のような場合である。 |
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| (ア) |
株式発行会社の総株主の議決権に占める株式所有会社の属する企業結合集団(法第10条第2項に規定する企業結合集団をいう。以下同じ。)に属する会社等が保有する株式に係る議決権を合計した割合が50%を超える場合。ただし、株式発行会社の総株主の議決権のすべてをその設立と同時に取得する場合は、通常、企業結合審査の対象とはならない(後記(4)ア参照)。 |
| (イ) |
議決権保有比率(株式発行会社の総株主の議決権に占める株式所有会社の保有する株式に係る議決権の割合をいう。以下同じ。)が10%を超え,かつ,当該割合の順位が単独で第1位となる場合 |
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| イ |
前記ア以外の場合で、議決権保有比率が一〇%を超え、かつ、議決権保有比率の順位が第三位以内のときは、次に掲げる事項を考慮して結合関係が形成・維持・強化されるか否かを判断する。 |
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| (ア) |
議決権保有比率の程度 |
| (イ) |
議決権保有比率の順位、株主間の議決権保有比率の格差、株主の分散の状況その他株主相互間の関係 |
| (ウ) |
株式発行会社が株式所有会社の議決権を有しているかなどの当事会社相互間の関係 |
| (エ) |
一方の当事会社の役員又は従業員が、他方の当事会社の役員となっているか否かの関係 |
| (オ) |
当事会社間の取引関係(融資関係を含む。) |
| (カ) |
当事会社間の業務提携、技術援助その他の契約、協定等の関係 |
| (キ) |
当事会社と既に結合関係が形成されている会社を含めた上記(ア)〜(カ)の事項 |
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| ウ |
共同出資会社(二以上の会社が、共通の利益のために必要な事業を遂行させることを目的として、契約等により共同で設立し、又は取得した会社をいう。以下同じ。)の場合は、当事会社間の取引関係、業務提携その他の契約等の関係を考慮して企業結合審査の対象となる企業結合であるか否かを判断する(共同出資会社の場合には、共同出資している株式所有会社相互間には、直接の株式所有関係はなくとも、共同出資会社を通じて間接的に結合関係が形成・維持・強化されることとなる。また、共同出資会社の設立に当たり株式所有会社同士の事業活動が共同化する場合には、そのこと自体競争に影響を及ぼすことにも着目する(後記第4の2(1)ウ及び3(1)エ参照)。)。 |
4. 企業の実務対応
(1) 事前届出を前提としたスケジュール策定の必要
株式取得による企業結合を行おうとする場合には、株式取得に係る交渉から取引完了までのスケジュール策定において、事前届出や、その審査に要する期間を十分に考慮してこれを行う必要があります。
外国企業は、平成21年独禁法改正により国内売上高合計額が届け出基準額とされたことから、事前届出が必要となる株式取得等の範囲が拡大しましたので、特に注意が必要です。
(2) 敵対的買収に関わる問題
敵対的買収を行おうとする場合、届出に必要な情報を事前に得ることは困難です。
公正取引委員会への事前相談等を通じて、特に慎重に手続きを進める必要があります。
5. 審決
日本楽器事件−公取委昭和32年1月30日勧告審決
日本楽器は、河合楽器の24.5%の株式を買い集め、取引先の三谷伸銅にこれを取得させた。
「日本楽器は、自己と競争関係にある河合楽器の株式を間接に所有しており、これによってピアノ、オルガン、ハーモニカの製造販売分野における競争を実質的に制限することとなると認められ」、独禁法第10条の禁止を免れる行為であり、第17条に違反する。
この
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