御器谷法律事務所

下請法と平成21年改正独禁法

1. 下請法による規制
 下請法は、下請取引において、親事業者の下請事業者に対する取引を公正なものとし、下請事業者の利益を保護し、もって国民経済の健全な発達に寄与することを目的としています(下請法第1条)。
 特に下請取引における親事業者の優越的地位の濫用を規制するものとして、独占禁止法の補助立法として制定されたものとされています。
 下請法による規制の概略は、次のとおりとなります。
(1) 下請法の適用対象
 親事業者と下請事業者との間の、資本金の額、及び取引の具体的内容によって、下請法適用の可否が決せられます。
(2) 親事業者の4つの義務
 発注書面(3条書面)の交付、60日以内の支払期日、5条書面の作成と2年間の保存、遅延利息の支払、この4つが親事業者の義務として規定されています。
(3) 親事業者の11の禁止事項
 受領拒否、代金の支払遅延、代金の不当減額、不当返品、買いたたき等、親事業者の11の禁止事項が規定されています。

2. 平成21年改正独禁法による優越的地位の濫用規制の変更
(1)優越的地位の濫用の法文化(独禁法第2条9項5号)
 優越的地位の濫用を独禁法自体に法文化し、その要件を明確にしました。この法文化に際して、受領拒絶、不当返品、支払遅延、不当減額は、下請法にも規定されているものを、新たに独禁法自体の中に法文化しました。
 なお、不公正な取引方法の一般指定13項には、旧14項(優越的地位の濫用)の5号が残された形で規定されています。
(2)特定の優越的地位濫用を課徴金の対象とした(独禁法第20条の6)
 法第2条9項5号に該当する優越的地位濫用行為につき、継続して行うものは、課徴金が課されることとなりました。この継続性の要件は、企業の萎縮効果に配慮したものとされています。なお、他の不公正な取引方法4類型と異なり、繰り返しは要件とされていません。
 また、課徴金の算定率は、違反行為にかかわる取引先との取引額の1%とされています。この点は、個々の商品の取引額ではなく、取引先との取引額全体を基準とするものであり、他の課徴金の算定とは異なるものとされています。さらに、業種別算定率や中小企業の特例はなく、一律の課徴金とされています。

3. 優越的地位の濫用規制と下請法の関係
(1) 下請法による規制の特徴
 下請法の適用にあたっては、親事業者と下請事業者の資本金額及び取引内容によってその適用の可否が形式的に決せられ、且つ、その規制対象となる親事業者の行為も4つの義務と11の禁止事項として明確に規定されています。
 そして、下請法違反の調査は、中小企業庁と公取委において広範に行われ(年40万件の調査も)、違反被疑事件の処理件数も多数に及んでいます(下請法の実施状況)。
(2) 改正独禁法による優越的地位の濫用規制の特徴
 改正独禁法による優越的地位の濫用規制は、独禁法第2条9項5号の規定する通りかなり広範な内容を有し、且つ、それが継続されたときは課徴金の対象となることから、そのペナルティーは下請法よりも厳しいものとなっています。
(3) 下請法と優越的地位の濫用規制との関係
1) 親事業者が下請法に違反し、公取委の勧告を受け、これに従ったときは、  独禁法の排除措置命令や課徴金納付命令は受けないものとされています(下請法第8条)。
2) 優越的地位の濫用行為は一般的には下請法の規制対象よりも広範な行為を意味することが多いと思われます。
 従って、下請法の適用がある親事業者の行為に対して、独禁法による優越的地位の濫用として規制し、排除措置命令や課徴金納付命令を課すことも、理論上は可能と考えられます。
3) 上記2)の点については、公取委の執行の実務がどうなるかについては、今後の動向を注意しなければならないでしょう。
 但し、少なくとも現状では、独禁法による規制の方が厳しいことから、下請取引における優越的地位の濫用については特別法である下請法の適用による簡易・迅速な処理が優先されるのではないかと推測されるでしょう。

 この下請法と改正独禁法につきましても、遠慮なく当事務所にご相談下さい

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