御器谷法律事務所

会社分割

1. 会社分割とは、
(1)会社分割は、会社が有する様々な「事業」の分離・独立を容易にすることにより、経営の効率化・企業再編を図るための制度として平成12年の商法改正により創設されました。
 現物出資による子会社設立等の場合には検査役の調査が必要であったところこれが不要となったこと、免責的債務引受につき債権者の個別の同意を不要としたこと、資金がなくとも株式を対価とする会社分割が可能となったことなどが会社分割制度の特色とされています。

(2)会社分割は、承継を受ける会社に着目して、新設会社に事業を承継させる新設分割(会社法2条30号)、既存会社に事業を承継させる吸収分割(同29号)に分けられます。
 また、株式の割当ての対象に着目して、承継の対価である株式全部を元の会社(分割会社)に割り当てる場合(物的分割、分社型)、分割会社の株主に割り当てる場合(人的分割、分割型)に分けられます。もっとも、会社法は、人的分割について、対価がいったん分割会社に交付され、これを分割会社が自社株主に配当(金銭の場合は剰余金配当、金銭以外の場合は現物配当。)するという構成をとっており、同法の下では、会社分割とは物的分割を意味します。

(3)分割の対象となる「事業」については、「有機的一体として機能する財産(得意先関係等の経済的価値のある事実関係を含む)」と一般的に解されており、個別財産とは区別されます。
 このように、会社分割は、対象となる「事業」に属する権利義務が包括的に別会社に承継される点、合併等と同様に組織法上の行為とされています。

(4)会社分割は、企業再編を容易にする制度ですが、その反面、会社債権者の保護も十分に図る必要があります。そこで、実質的に債務超過(のれん及び含み益を計上してもなお債務超過であること。)となっている「事業」を分割することは許されず(資本充実の原則)、また、会社分割にあたっては、「各会社の負担すべき債務の履行の見込みがあること」及び「その理由」を記載した書面を事前に開示する必要があることから、元の会社(分割会社)が債務超過となるような会社分割も許されないと一般的には解されています。

(5)会社分割に伴い、当該「事業」に従事する労働者(労働契約)についても承継されるものと解されるところ、労働契約の譲渡が恣意的になされないよう労働者の保護をも十分に図る必要があります。
 そこで、「会社の分割に伴う労働契約の承継等に関する法律」は、会社分割前に、会社側と労働者が事前に協議すること、会社が一定の労働者に対し転籍・異動を書面で通知することを定めています。
 さらに、承継される事業に主として従事する労働者であるにもかかわらず分割計画書に新設会社が労働契約を承継するとの記載がない場合、あるいは、承継される事業に主として従事する労働者以外の者で分割計画書に新設会社が労働契約を承継するとの記載がある場合につき、対象となる労働者は異議を述べることが可能となります。

(6)会社法は、吸収分割により吸収分割承継会社に承継させ、または新設分割により新設分割設立会社に承継させる資産の帳簿価額の合計額が吸収分割会社または新設分割会社の総資産額として法務省令で定める方法により算定される額の5分の1(これを下回る割合を吸収分割株式会社の定款で定めた場合にあっては、その割合。)を超えない場合について、各分割会社の株主総会の特別決議による承認を不要とするという、より簡易な手続を定めています(同法784条3項、805条)。

2. 会社分割に至るまでの流れ(新設分割の場合の一例)
(1)会社分割が決まったら、取締役会決議において分割計画を作成し、承認総会の会日の2週間前までに承継される営業に従事する労働者等と協議します。
 また、株主に対し、株主総会の招集手続を行います。
 さらに、分割計画等を開示するとともに(承認総会の会日の2週間前より分割の効力発生日後6か月を経過する日まで)(同法803条)、労働者等への通知を行います。
なお、公開会社の場合は、インサイダー取引を規制するため、会社分割を行うことにつき開示が必要となる場合があり、さらに、有価証券報告書提出会社については、臨時報告書も同時に提出することが必要となる場合があります。

(2)次に、株主総会において、分割計画の承認が行われます(同法804条)。
 この承認にあたっては、特別決議(発行済株式総数の過半数に当たる株式を有する株主が出席し、出席株主の議決権の3分の2以上に当たる多数の賛成)によることが会社法上要求されています(同法309条2項12号)。
 なお、会社分割に反対する株主は、事前に反対通知を出し、かつ株主総会において分割計画に反対し、さらに、株主総会から20日以内に株式買取請求をすることとなります(同法806条〜809条)。

(3)株主総会における承認から2週間以内に、分割に異議があれば1か月以上の一定期間内に異議の申出をすることを官報に公告し、さらに知れたる債権者に対して個別に異議申出を催告することを要します(同法810条)。
 また、分割会社は、株主総会の承認決議の日から2週間以内に、その株主に対し、新設分割をする旨並びに他の新設分割会社及び設立会社の商号及び住所を通知ないし公告する必要があります。

(4)以上の分割手続が終了すると、新設会社が本店所在地において設立登記をすること(=新設会社の成立)により、会社分割の効力が生じます。
 分割後も、一定の事項につき事後開示が行われる(同法811条、815条)とともに、株主に対する通知がなされます。
 また、分割会社、新設会社のそれぞれの株主、取締役、監査役等、分割を承認しなかった債権者等は、分割の日から6か月以内に訴えを提起することによってのみ会社分割の無効を主張することができます(同法828条)。

3. 債務超過会社における会社分割の可否
 旧商法下では、債務超過の会社については、会社分割ができない、と説明する解説書等が少なからずありました。
 しかし、会社法は、吸収分割承継会社の承継債務額が承継資産額を超える場合、すなわち分割差損が生じる場合には、同会社の取締役が株主総会でその旨を説明しなければならないことを定めており(同法795条)、このような場合の会社分割を認めています。
 もっとも、現会社法においても、のれんや含み益を計上してもなお債務超過の場合(=実質的な債務超過の場合)には、原則として分割を認めるべきではないとの見解が主張されています。

4. 会社分割においては、法律上の問題のみならず、税務・会計上の問題も避けて通れません。そこで、会社を分割するにあたっては、弁護士や会計士などと、分割の可否、手続等につき十分相談した上で手続を進められるべきでしょう。

 この会社分割につきましても、遠慮なく当事務所にご相談下さい

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