御器谷法律事務所

競争の実質的制限


1. 「競争」とは、
 一般的には、2以上の事業者が、一定の市場において、その通常の事業活動によって、同種又は類似の商品又は役務を供給し、又は、供給を受けることにより、互いに競い合うことを意味します(独禁法§2・(4))。
 そして、この「競争」概念には、供給する側のいわゆる「売り手競争」と供給を受ける側のいわゆる「買い手競争」を含むとされています。
 また、この「競争」には、「・・・することができる状態」(同§2・(4)本文末尾)との表現から、現在の「顕在的競争」のみならず、「潜在的競争」をも含むものとされています。
 なお、この「競争」には、異なるメーカー同士のいわゆる「ブランド間競争」のみならず、同一メーカー内での販売業者間の争いであるいわゆる「ブランド内競争」をも含むものとされています。

2. 「競争の実質的制限」とは、
 その意義については、次の判例があります。
(1) リーディング・ケース:東宝・スバル事件−東京高判 昭和26年9月19日
 「競争を実質的に制限するとは、競争自体が減少して、特定の事業者または事業者集団が、その意思で、ある程度自由に、価格、品質、数量、その他各般の条件を左右することによって、市場を支配することができる形態が現れているか、または少なくとも現れようとする程度に至っている状態」と判旨。
 学説は、これを市場支配力の形成、維持、強化と説明しています。
(2) 石油数量調整刑事事件−東京高判 昭和55年9月26日
 競争の実質的制限とは、一定の取引分野における競争を全体として見て、その取引分野における有効な競争を期待することがほとんど不可能な状態をもたらすことをいうものと解するのが相当である。
 本件各行為は、沖縄県を除くわが国における全体としての石油製品市場において、元売業者間の一般内需用各石油製品の販売競争を全体として見て、その競争機能を減退させ、有効な競争を期待することがほとんど不可能な状態をもたらす効果をもつものであった。
 本件各行為が、このような状態にある前記取引分野において、元売業者間における一般内需用石油製品の販売競争の競争機能を減退させ、右の意味においてその競争を実質的に制限したものである。

3. 「競争の実質的制限」の有無の判断基準
 一般的には以下の各ファクターを総合的に考慮して、「競争の実質的制限」の有無が判断されるとされています。
(1) 事業者の市場占拠率−この市場シェアが最も重視されています。これに関連して、市場における順位や業界における競争状況等も考慮されます。特に市場シェアについては、1社で30〜50%位、2〜3社で50〜70%位が危険ラインの目安である等の様々な見解があるようです。
(2) 事業者の属する業界の状況−業界における競争者の数や規模、業界自体の成長性、技術革新の動向、従前からの競争状況の有無、競争者の供給余力、商品や役務の代替性や効率性、新規参入の難易、業界の閉鎖性の有無と程度等が考慮されます。
(3) 外的客観状況−輸入の有無と今後の可能性、類似隣接市場からの競争圧力等も考慮されることがあります。

4. 審決例の紹介
 中央食品他6名事件−公取委 昭和63年11月29日勧告審決
 本件では中央食品が高松市旧市内における豆腐類卸売でシェア30%のところ、同社が同市場における有力事業者であり、他と比較し抜群の大規模事業者であり、同社が業界の指導的地位にあること、他の業者が家族労働による小規模事業者であり拡張が難しいこと、協定成立の経緯等を認定し、カルテルの成立を認めました。
 これは、市場シェアのみならず他の上記要素を総合的に考慮して、競争の実質的制限の存在を認定したものとして参考になると考えられます。

4. 「競争の実質的制限」が用いられるケース
(1) 私的独占−§2・(5)、§3前段
(2) 不当な取引制限−§2・(6)、§3後段
(3) 事業者団体の禁止行為−§8・(1)・1号
(4) 株式保有の制限−§10・(1)、§14
(5) 役員兼任の制限−§13・(1)
(6) 合併の制限−§15・(1)・1号
(7) 会社分割の制限−§15の2・(1)・1号
(8) 事業譲受け等の制限−§16・(1)

5. 判決、審判例
(1) 石油数量調整刑事事件−東京高裁 昭和55年9月26日判決
 事業活動を拘束する行為のもつ効果としての競争の実質的制限とは、一定の取引分野における競争を全体として見て、有効な競争を期待することがほとんど不可能な状態をもたらすことをいうものと解するのが相当である。
 本件各行為は、沖縄県を除くわが国における全体としての石油製品市場において、元売業者間の一般内需用各石油製品の販売競争を全体として見て、その競争機能を減退させ、有効な競争を期待することがほとんど不可能な状態をもたらす効果をもつものであった。
 本件各行為が、このような状態にある前記取引分野において、元売業者間における一般内需用各石油製品の販売競争の競争機能を減退させ、右の意味においてその競争を実質的に制限したものであることは、既に認定した・・・とおりである。

(2) 中央食品ほか6名事件−公取委 昭和43年11月29日勧告審決
 中央食品ほか6名は、共同して豆腐類の卸売価格を引き上げることにより、高松市旧市内における豆腐類製造販売業者の豆腐類の卸売価格の引上げをもたらしているものである。

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