御器谷法律事務所

抱き合わせ販売


1. 抱き合わせ販売とは、
 一般的には、事業者が、独占禁止法上不当に、主たる商品や役務の供給にあわせて、他の従たる商品や役務を、自己又は自己が指定する事業者から購入させ、その他自己又は自己が指定する事業者と取引するように強制すること、を意味します(一般指定第10項)。
 例えば、買うのに行列ができるような人気のあるゲーム・ソフトの販売に際して、それ程人気のないゲーム・ソフトをあわせて販売するような例が、この「抱き合わせ販売」に該当します。
 このような「抱き合わせ販売」においては、買い手は主たる商品等を購入するためにそれ自体は買う意思のない従たる商品等をあわせて購入しなければならず、買い手の商品選択の自由が不当に害されることとなります。また、特に主たる商品等における有力な事業者が抱き合わせ販売を行うことによって、従たる商品等における市場において品質や価格等による本来の能率競争が害され公正な競争を阻害するおそれが出てきます。これらが、「抱き合わせ販売」を不公正な取引方法として独禁法上禁止する趣旨と言われています。

2. 行為要件
(1) 「併せて」-抱き合わせは、商品のみならず役務(サービス)も含むとされています。
(2) 「供給」-販売のみならず、賃貸やリース、レンタル等も含むものとされています。
(3) 従たる商品や役務-主たる商品や役務とは異なる別個のものであることを要するとされています。
 従って、2つの商品や役務がセットとしてあくまで別個の1つの商品や役務とみなされる場合には、この抱き合わせ販売には該当しないものもあるとされています。具体的には微妙なケースも考えられます。
(4) 「購入させ」-主たる商品等の買い手が従たる商品等の購入をせざるをえない客観的状況にあるか否かが、1つのポイントになるでしょう。
(5) 「取引するように強制」-有力な買い手が自己の商品等の購入を相手方に求める「相互取引」等が問題となるとの指摘があります。

3. 公正競争阻害性
 抱き合わせ販売は、独禁法上「不当に」行われることが要件となります。この「不当」性は、具体的には次のような場合に認められるものとされています。
(1) 買い手の商品等選択の自由の侵害
 主たる商品等における市場で優位な立場に立つ事業者や、主たる商品等が人気のある差別化されたものであるときは、買い手は主たる商品等を購入するに際して抱き合わされた従たる商品等の購入を事実上強制され、買い手の商品等選択の自由が不当に侵害されることとなります。
 かつて有名なドラゴンクエストⅣというゲーム・ソフトの販売に際して、他の不人気ソフトを抱き合わせて販売した事案は、社会現象としても批判の対象となったことがあります。
(2) 従たる商品等市場における能率競争の減殺
 主たる商品や役務における有力な事業者が「抱き合わせ販売」を行うと、従たる商品や役務における市場において本来行われるべき品質や価格等による能率競争が害され、公正な競争が減殺されてしまいます。

4. 審決、判決
(1) 長野県教科書供給所事件-公取委同意審決 昭和39年2月11日
 「長野県教科書供給所が、一定基準に達しない取次店を整理統合する旨を明示して、長野県内における取次店に対し、教科書の取扱いに関連し普通図書を長野供給所から購入するよう強制しているものであって、これは、正常な商慣習に照して不当な不利益をもって、直接、競争者の顧客を自己と取引するよう強制している。」
(2) ドラゴンクエストⅣ-藤田屋事件-公取委審判審決 平成4年2月28日
 「一般指定第一〇項に規定する不当とは、公正な競争を阻害するおそれがあることを意味すると解されるが、右公正な競争を阻害するおそれとは、当該抱き合わせ販売がなされることにより、買手は被抱き合わせ商品の購入を強制され商品選択の自由が妨げられ、その結果、良質・廉価な商品を提供して顧客を獲得するという能率競争が侵害され、もって競争秩序に悪影響を及ぼすおそれのあることを指すものと解するのが相当である。
 前記のように本件抱き合わせ販売は、ドラクエⅣが人気の高い商品であることから、その市場力を利用して価格・品質等にらよず他のゲームソフトを抱き合わせて販売したものであり、買手の商品選択の自由を妨げ、卸売業者間の能率競争を侵害し競争手段として公正を欠くものといわざるを得ない。
 本件抱き合わせ販売は事業者の独占的地位あるいは経済力を背景にするものではなく、ドラクエⅣの人気そのものに依存するものであるため、人気商品を入手し得る立場にある者は、容易に実行することのできる行為であることを考えると、本件抱き合わせ販売は、実際に販売されたのは、小売業者二五店に対し被抱き合わせゲームソフト約三、五〇〇本であるが、その申入れは実績配分以上の数量を希望した取引先小売業者を対象に組織的、計画的になされたものであり、また前記のように本件抱き合わせ販売は、その性質上及び市場の実態からみて反復性、伝播性があり、更に広い範囲で本件の如き抱き合わせ販売が行われる契機となる危険性を有し、被抱き合わせ商品市場における競争秩序に悪影響を及ぼすおそれがあるものと認められる。」
(3) 東芝エレベータテクノス事件-大阪高判 平成5年7月30日
 「本件各部品とその取替え調整工事とは、それぞれ独自性を有し、独立して取引の対象とされている。・・・そして、安全性確保のための必要性が明確に認められない以上、このような商品と役務を抱き合わせての取引をすることは、買い手にその商品選択の自由を失わせ、事業者間の公正な能率競争を阻害するものであって、不当というべきである。」
(4) マイクロソフト事件-公取委勧告審決 平成10年12月14日
 「マイクロソフト社は、取引先パソコン製造販売業者等に対し、不当に、表計算ソフトの供給に併せてワープロソフトを自己から購入させ、さらに、取引先パソコン製造販売業者に対し、不当に、表計算ソフト及びワープロソフトの供給に併せてスケジュール管理ソフトを自己から購入させているものであって、これは、不公正な取引方法10項に該当し、独禁法19条に違反する。」

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