御器谷法律事務所

商標権と独禁法


1. 独占禁止法21について
(1) 独占禁止法21条
 独占禁止法21条は、「この法律の規定は、著作権法、特許法、実用新案法、意匠法又は商標法による権利の行使と認められる行為にはこれを適用しない」と規定しています。
 では、いかなる行為が「商標法・・・による権利の行使と認められる行為」にあたるのでしょうか。

(2)公正取引委員会「知的財産の利用に関する独占禁止法上の指針」
 この独占禁止法21条の解釈として、公正取引委員会は、「知的財産の利用に関する独占禁止法上の指針」において、次のように述べています。
1) そもそも権利の行使とは認められない行為には独占禁止法が適用される。
2) 外形上権利の行使と認められる行為についても、実質的に権利の行使とは評価できない場合は、独禁法の規定が適用される。すなわち、権利の行使と認められる行為であっても、行為の目的、態様、競争に与える影響の大きさも勘案した上で、事業者に創意工夫を発揮させ、技術の活用を図るという、知的財産制度の趣旨を逸脱し、又は同制度の目的に反すると認められる場合は、法第21条に規定される「権利の行使と認められる行為」とは評価できず、独占禁止法が適用される。

2. 審決例
 これを踏まえて、具体的に公正取引委員会から出された代表的な審決について見ていきましょう。
(1) 昭和40年9月13日勧告審決(ヤクルト本社事件)
1) 事案の概要
 A社(ヤクルト本社)は、発酵乳の製法に関する特許権及び「生菌ヤクルト」の商標権を有していた。そして、加工業者との間に特許実施及び商標使用のライセンス契約を締結していたが、ヤクルトの流通機構を確立するため、契約の中に次のような条項を入れていた。すなわち、
  • 加工業者は、ヤクルト本社と小売契約を締結した者以外の者に、ヤクルトを販売してはならない。
  • 加工業者は、小売契約において定められた小売価格及び小売地域を、小売業者に守らせなければならない。
 公正取引委員会は、A社に対して、勧告を行ったところ、A社はこれを応諾したので、同趣旨の勧告審決をしたものである。
2) 審決内容
 「A社の前記・・・行為は、特許法または商標法による権利の行使とは認められないものである。」
 「A社の前記・・・行為は、正当な理由がないのに、加工業者と小売業者との取引を拘束する条件を付けて、当該加工業者と取引しているものであり、これは・・・不公正な取引方法の八(旧法令による、現在の「不公正な取引方法」ならば第13項にあたる)に該当し、・・・独占禁止法第十九条の規定に違反するものである。」
3) まとめ
 ライセンス技術等を用いた製品の販売の相手方を制限する行為は、販売地域や販売数量の制限とは異なり利用範囲の制限とは認められないことから、不公正な取引方法に該当する場合があるといえます。

(2) 平成12年2月28日同意審決(北海道新聞社事件)
1) 事案の概要
 B社(北海道新聞社)は、朝夕刊セット販売をその販売方針としていたが、平成6年8月頃、函館地区において夕刊紙の発行を目的とした新聞社(以下、C社という)設立の動きがあったのに対して、次のような対策を講じた(これをB社は「函館対策」と呼称していた)。すなわち、
  • C社に使用させない意図の下に、自ら使用する具体的な計画がないにもかかわらず、「函館新聞」などの9つの新聞題字について商標登録を求める出願手続をした。
  • 報道機関等に対するニュース配信事業を営むC社に対して、既契約者であるB社はC社との配信契約の締結を了承しない旨を知らせ、C社がC社と配信契約を締結できないようにした。
  • C社の広告集稿活動を困難にさせる意図の下に、損失が生じることが予測されたにもかかわらず、広告集稿対象と目される中小事業者を対象として大幅な割引広告料金を設定した。
  • C社がテレビコマーシャルを放映できるようにするため、テレビ局D社に対して、コマーシャル放映の申し込みに応じないよう要請した。
 公正取引委員会は、B社に対して、審判手続を行っていたところ、同意審決を受けたい旨の申し出があったので、その後の審判手続を経ないで、同意審決をした。
2) 審決内容
 「B社は、C社の参入を妨害しその事業活動を困難にする目的で講じたC社が使用すると目される複数の新聞題字の商標登録の出願等の函館対策と称する一連の行為によって、C社の事業活動を排除することにより、公共の利益に反して、函館地区における一般日刊新聞の発行分野における競争を実質的に制限しているものであり、これは、独占禁止法第2条第5項に規定する私的独占に該当し、独占禁止法第3条の規定に違反するものである。」
3) まとめ
 一定の市場において事業活動を行う事業者が、競争者(潜在競争者を含む。)が利用する可能性のある技術等に関する権利を網羅的に集積し、自身では利用せず、これらの競争者に対してライセンスを拒絶することにより、当該技術等を使わせないようにする行為は、他の事業者の事業活動を排除する行為に該当する場合があるといえます。

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