御器谷法律事務所

譲渡制限株式の譲渡承認請求手続

1. 譲渡制限株式とは、

 株式会社が、その発行する株式につき、譲渡による株式の取得について株式会社の承認を要する旨定めている株式のことを言います(会社法第2条17号)。
 なお、取締役会設置会社では、取締役会の承認を要するものとし、又、取締役会を設置しない会社にあっては株主総会の承認を要するものとすることがあります(会社法第139条)。
 同族会社で中小規模の会社においては、個々の株主の考え方や利害関係が問題となり、会社にとって好ましくない人物を株主とすることを拒否することを認めるのが、この譲渡制限株式ともいえるでしょう。
 しかし、たとえ譲渡制限株式であっても、株主が投下した資本は確実に回収される途を講ずべきものとして、会社法はこれを保証しているといえるでしょう。

2. 譲渡承認請求の手続
(1) 譲渡制限株式の株主は、その有する株式を他人に譲り渡そうとするときは、会社に対し、その株数、譲受人の氏名・名称、指定買取人の買取請求等を明示して、これを承認するか否かの決定を請求することができます(第136条)。
 株式取得者は、原則として株主又はその相続人等と共同して、会社に対して、その株数、株式取得者の氏名・名称、指定買取人の買取請求等を明示して、これを承認するか否かの決定を請求することができます(第137条)。
(2) 会社は、譲渡承認の請求を受けたときは、2週間以内に(第145条、1号)、株主総会又は取締役会(取締役会設置会社)においてこれを承認するか否かの決議をして、且つ、これを譲渡等承認請求者に通知しなければなりません(第139条)。
(3) 会社は、この譲渡を承認しない旨を決定したときは、会社自身でこの株式を買い取るか、又は買取人を指定しなければなりません(第140条)。
 この場合、会社自身で株式を買い取るときはその旨及び買い取る株式数を株主総会で決議し、又、買取人を指定するときは定款に定めがなければ株主総会または取締役会設置会社では取締役会で決議しなければなりません。
(4) 会社が株式を買い取るときは会社は40日以内に、又、買取人を指定したときは指定買取人は10日以内に、各その旨及び株式数を承認請求者に通知しなければなりません(第141条1項、第142条1項)。
(5) 会社又は指定買取人は、上記通知をしようとするときは、会社の1株当たり純資産額として会社法施行規則第25条により算定された額に株式数を乗じた額を、本店所在地の供託所に供託しその書面を承認請求者に交付しなければなりません(第141条2項、第142条2項)。
(6) 対象株式が株券発行会社の株式である場合には、承認請求者は、前記供託の交付を受けた日から1週間以内に、株券を供託し、遅滞なくその旨を会社又は指定買取人に通知しなければなりません(第141条3項、第142条3項)。
 そして、承認請求者が期間以内にこの株券の供託をしなかったときは、会社又は指定買取人は対象株式の売買契約を解除することができます(第141条4項、142条4項)。
(7) 会社は、原則として、次の場合には株式の譲渡を承認したものとみなされます(第145条)。
1) 会社が譲渡承認請求の日から2週間(定款でこれを下回る期間を定めること可)以内にこれを承認するか否かの通知をしなかったとき。
2) 会社が承認しない旨の通知をしてから10日以内(定款でこれを下回る期間を定めること可)に指定買取人が買取る旨の通知をせず、且つ、40日以内(定款−同)に会社自身が買取る旨の通知をしなかったとき。
3) 会社が前記(5)の各所定の書面を交付しなかったとき、承認請求者が会社又は指定買取人との売買契約を解除したとき(会社法施行規則第26条)。

3. 売買価格の決定
(1) 会社は、会社自身が株式を買い取る旨又は指定買取人を承認請求者に通知したときは、その通知の日から20日以内にその株式の売買価格を会社又は指定買取人と承認請求者との協議によってこれを定めるものとします(第144条1項)。
(2) 会社又は指定買取人又は承認請求者は、この20日以内に、裁判所に対して株式の売買価格の決定の申立てをすることができます(同条2項)。
(3) 裁判所は、株式の売買価格の決定をするには、承認請求時における会社の資産状態その他一切の事情を考慮しなければなりません(同条3項)。
(4) 上記(2)記載の期間内に同申立てがないときは、純資産額を基準として供託された金額をもって株式の売買価格とされます(同条5項)。

4. 旧商法下での株価算定の判例
大阪高裁昭和60年6月18日決定
 ○○鑑定は、(3)の純資産価格方式につき、解散清算を予想した価格で継続企業としての株式評価には適当な方式とはいえないが、相手方の如く慢性的不況が続き、多額の欠損が生じ、将来の予想利益がほとんど期待できない場合には、ある程度考慮に入れる必要がある、として、他の方式と併用する場合の(3)のウエイトを一〇パーセントとしている。
 しかし、営業を継続している会社の場合でも、株主は潜在的には残余財産分配請求権を有しているのであり、純資産価値の大なることが事業の経営に利益に働くと解するのは当然のことであるし、前記事実関係を考慮すれば、右ウエイトは一〇パーセントに止めるべきではない。
 (4)類似業種比準方式は、相続税及び贈与税の課税上における株式の価額評価に関し、国税庁の基本通達に基づき類似した業種の平均値と比較して、特定の算式により算出する方式であるが、元来課税目的の株式評価であるから評価の簡便性・画一性が要求され、そのため商法三四九条一項の求める「公正ナル価格」と異なった評価となることが避けられず、比準要素となる類似業種の標本会社が相手方のような同族会社で事業の内容も単純な場合と類似性があるのか極めて疑問であるばかりでなく、公表されている算式のうち減価要素して〇・七を乗ずる数値の根拠が明らかでない。したがって、本件の場合に右方式を併用するのは相当でない。
 他方、株式価格が本来擬制資本の価格であることからして、試算価格がゼロとなる場合であっても、(1)の収益還元方式による価格と(2)の配当還元方式による価格は無視されるべきではない。
 なお、商法三四九条に基づく株式買取請求は、元来譲渡自由であった株式を譲渡制限の決議がなければ有したであろう公正な価格で買い取ることを請求するものであるから、その株式の取得事情、取得価額如何は問うところではなく、抗告人らがたとえ右株式を無償で取得していたとしても買取価格に影響を与えるものではないと解すべきである。
 以上のことから、本件株式の買取価格を定めるについては(1)収益還元方式、(2)配当還元方式、(3)純資産価格方式(清算処分価額による)の三方式を併用することとするが、前記1において認定した事実関係を総合して判断すれば(本来均等割合とするのが公平とみられるところ、業績好転の見込みの少ない点を考慮し、(3)の方式に他より若干のウエイトを置くこととして)、その割合を@につき三〇パーセント、(2)につき三〇パーセント、(3)につき四〇パーセントとするのが相当である。

5. 譲渡承認請求のフローチャート
 譲渡承認請求からの手続の流れの概略は次のようになります。

この譲渡制限株式の譲渡承認請求手続につきましても、遠慮なく当事務所にご相談下さい

執務の方針| 弁護士のプロフィール| 取扱事件 | ご案内 顧問契約 |

弁護士費用 | 事務所案内図 | リンク| トップ