御器谷法律事務所

信託受益権売買

1.信託受益権とは、
 不動産ファンドにおいて、不動産の原所有者(オリジネーター)が信託銀行に不動産を信託したときに、委託者である不動産の原所有者が受託者である信託銀行から受ける信託不動産の運用により生ずる利益ないしこれを受け取る権利のことを言います。
 委託者は不動産を信託銀行に信託することにより、登記上も信託設定登記として受託者に移転登記されます。そして、信託銀行はこの不動産を管理して、賃貸ビルであればテナントから賃料等を回収して、そこから管理費、借入金利息や修繕費用等を控除して信託報酬を取得し、残りを信託配当として委託者兼受益者に支払うこととなります。
 そして、不動産ファンドにあっては、SPCはオリジネーターからこの信託受益を売買により購入するという形をとることが多くあります。これは、不動産の現物を売買により取得する場合とくらべ、次のメリットがあるからとされています。
(1) 信託受益権の売買ですと、譲渡にともなう登録免許税や不動産取得税が軽減されます。なお、不動産信託の場合には、信託設定登記や信託報酬がかかりますが、それを考慮に入れても経済的合理性が指摘されています。
(2) 不動産の信託ですと、信託銀行が不動産を管理する建前となっていることから、委託者の手間が省け、信託受益権を売買により取得するSPCも実際の不動産の管理をする必要がなく、信託配当という本来の目的により合致する面が挙げられます。
(3) 不動産を信託すると、信託法上はその不動産は独立の信託財産として保護され、いわゆる倒産隔離の機能が果たされるとも言われています。

2. 信託受益権の法的性質
 信託受益権は、委託者が受託者である信託銀行に対してその不動産管理処分信託契約に基づいて信販財産について有している権利のことを言います。
 そして、この信託受益権の法的性質は、基本的には信託財産について受託者に対して有する債権です。
 従って、この信託受益権の売買は、基本的には民法上の債権の売買としてその適用を受けます。つまり、信託受益権の売買についての瑕疵担保責任については、民法第561条以下の規定、特に民法第570条の規定が適用され、また、信託受益権の譲渡はいわゆる指名債権の譲渡としてその対抗要件につき民法第467条や第468条と同じ内容の対抗要件が求められます。改正された信託法では、その旨が明記されました(信託法第94条)。

3. 信託受益権譲渡契約の特徴と注意事項
 不動産ファンドにおけるオリジネーターからSPCへの信託受益権の譲渡は、不動産信託受益権譲渡契約書や信託受益権譲渡契約書、信託受益権売買契約書、受益権譲渡契約書、受益権売買契約書等と呼ばれています。
 この信託受益権の譲渡ないし売買の契約にはいくつかの特徴や注意点がありますので、次下ご説明いたします。
(1) 信託受益権の特定
 オリジネーター(委託者、受益者)、信託銀行(受託者)、対象不動産の特定、不動産管理処分信託契約書、信託設定登記、信託原簿等による特定が考えられます。
(2) 売買代金
 売買代金については、総額、信託建物の金額、信託土地の金額、建物についての消費税、支払時期、支払方法等が問題となります。
(3) 表明・保証責任
 Representations(表現・表明)&Warranties(保証)ないし略してレプ・ワラ等とも呼ばれています。契約主体の存在や行為能力、適法な社内手続、信託契約の有効性、対象不動産の存在、境界、テナントとの契約、環境上の問題がないこと、法令の遵守等の真実性や正確性を表明し、これを保証する文言のこと。
 従来の日本の契約書では余り見かけませんが、英米法においてよく見かけられる文言です。これに反した場合の解除や損害賠償責任等も規定されます。
(4) 瑕疵担保責任
 民法第570条の売主の瑕疵担保責任が規定されることがあります。
 表明・保証責任とは別個のものと考えられています。
(5) 信託受益権の譲渡についての対抗要件の具備
 信託受益権の法的性質は債権ですから、その譲渡には指名債権の譲渡の対抗要件の具備が必要であり、民法第467条、第468条と同一のものが必要とされます(同法第94条)。ただし、信託法では民法上の指名債権譲渡と異なり、「異議をとどめない承諾」についての規定はありませんので、注意が必要です。
(6) 信託受益権の移転の時期
 不動産売買の場合と同様に、売買代金の支払のときに信託受益権が移転することになるでしょう。
 なお、この点での対抗要件の具備は前記のとおりです。
 また、信託受益権の移転のときに信託変更登記や受益権証書の引渡し、信託原簿の変更が行われるでしょう。
(7) 倒産申立権の放棄、責任財産の限定
 これらによってSPCのいわゆる倒産隔離を図ろうとするものです。
(8) 守秘義務
(9) 準拠法
 海外の機関投資家が関与してくることもあり、準拠法が大事な意味を持ってくることもあるでしょう。
(10) その他
 不動産の売買契約と同様に、売買代金の支払の際の必要書類(印鑑証明書、取締役会議事録等)、固定資産税等やテナントからの賃料収入や管理費等の日割清算、契約の解除、損害賠償請求、危険負担、地位の譲渡の禁止、管轄合意、特約等を記載することがあります。

 この信託受益権売買につきましても、遠慮なく当事務所にご相談下さい

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