御器谷法律事務所

USEN損害賠償請求訴訟


1. 公正取引委員会による勧告
 公取委は、平成16年9月14日、(株)有線ブロードネットワークス等に対して、次の事実を認定して、独占禁止法第3条(私的独占の禁止)に違反するものとして、勧告を行いました。

違反行為の概要
 2社は、平成15年8月以降、キャンシステム株式会社(以下「キャンシステム」という。)の顧客に限って切替契約の条件として3,675円を下回る月額聴取料又はチューナー設置月を含めて3か月を超える月額聴取料の無料期間を提示するキャンペーン等を順次、実施することにより、集中的にキャンシステムの顧客を奪取した。
 このような行為によって2社は、通謀して、我が国における業務店向け音楽放送の取引分野における競争を実質的に制限していた。

2. USEN vs. キャンシステム損害賠償請求訴訟
 USENとキャンシステムとの間では、その後USENが相手方に対して142億円余の損害賠償を請求し、これに対してキャンシステムが相手方に対して113億円余の損害賠償を求める反訴を提起していました。
 この本訴及び反訴につき、東京地方裁判所平成20年12月10日判決は、以下のような理由(概要)に基づき、本訴を棄却し、反訴のうち20億円余の請求を認めました。
(1) 公正取引委員会による手続等
 違反行為の概要
 Xおよびネットワークヴィジョンは、平成15年8月以降、Yの顧客に限って切替契約の条件として3675円を下回る月額放送料又はチューナー設置月を含めて3か月を超える月額放送料の無料期間を提供するキャンペーン等を順次実施することにより、集中的にYの顧客を奪取した。このような行為によってX及びネットワークヴィジョンは、通謀して、我が国における業務店向け音楽放送の取引分野における競争を実質的に制限していた。
 公正取引委員会は、平成16年10月13日、Xがネットワークヴィジョンと通謀して、Yの音楽放送事業に係る事業活動を排除することにより、公共の利益に反して我が国における業務店向け音楽放送の取引分野における競争を実質的に制限していたのは、独占禁止法2条5項に規定する私的独占に該当し、独占禁止法第3条の規定に違反するとして、上記勧告と同趣旨の審決をした。
(2) 反訴請求についてのXの不法行為の成否について
 平成15年7月1日に甲がネットワークヴィジョンを設立するのと同日にXがネットワークヴィジョンとの間で業務提携契約を締結し、ネットワークヴィジョンに対し多額の資金援助をして、同月中にネットワークヴィジョンが多数の営業所を開設していること、甲は上記会談結果に従い、Y従業員に説明会を開く等して、Yの退社及び甲の設立する新会社に転籍してXの事業に関与するように勧誘したこと、その結果、同年7月中にY従業員の約3割に相当する467名が退職し、退職者がおおむねネットワークヴィジョンに移籍して、以後Xのためにキャンペーン活動等に従事したことは前記1認定のとおりである。これらの事情を総合勘案すると、Xは、甲の設立するネットワークヴィジョンが設立当初から多数のY従業員を引き抜き、その従業員によって事業を進行させることを想定していたと推認され、これに上記のDメモ等を併せ考慮すると、X及びネットワークヴィジョンがYの正常化を阻止し最終的にはYをXに統合することを目的としてY従業員を大量に引き抜くことを共謀の上、Y従業員を大量かつ一斉に引き抜いたものと確認することができる。
 Xは、ネットワークヴィジョンと通謀して、平成15年8月以降、Yの顧客に限って切替契約の条件として3675円を下回る月額放送料又はチューナー設置月を含めて3か月を超える月額放送料の無料期間を提供するキャンペーン等を順次実施したこと、Xおよびネットワークヴィジョンはこうした一連のキャンペーンの実施により切替営業を行い、集中的にYの顧客を奪取し、その結果、Yの顧客は平成15年6月末時点の28万4768件から平成16年7月末時点の22万7285件へと著しく減少したことは前記1認定のとおりである。
 これらの事実を総合勘案すると、X及びネットワークヴィジョンは、共謀の上、上記キャンペーンを実施して集中的にYの顧客を奪取したものと推認される。そして、X及びネットワークヴィジョンの上記行為は「差別対価」(一般指定3項)という不公正な取引方法に該当する違法な手段によりYの顧客を大量に奪取してYの事業活動を排除し、もって公共の利益に反して、我が国における業務用音楽放送の取引分野における競争を実質的に制限したものであって、独占禁止法2条5項に規定する私的独占に該当し、独占禁止法3条に違反するものというべきである。
 ウ 以上のとおり、Xは、Yの有線音楽放送に関する事業活動を排除することを企て、ネットワークヴィジョンと通謀して、(1)Y従業員に対し虚偽の事実を告げて、Yを退職してネットワークヴィジョンに移籍するように勧誘し、Yの従業員総数1630名の約3割に相当する496名もの職員を一斉に退職させてネットワークヴィジョンに移籍させ、(2)これに引き続き、Xの従業員やネットワークヴィジョンへ移籍したYの元従業員を使ってYの顧客をXに切り替えるための勧誘を行い、その際に、Yの顧客に対してのみ他の需要者と差別的な、顧客に有利な取引条件を提示し、Yとの有線音楽放送の受信取引を中止してXと取引するように勧誘し、そのような取引条件によりYの顧客と取引し、もってYの顧客4万8841件を奪取したものである。
 Xの上記(1)の行為については、X及び甲が、Yの正常化作業を阻止し、最終的にはYを吸収することを目標としてY従業員を大量に引き抜く計画を立て、これに基づき甲がY従業員に対し組織的に勧誘を行ったこと、甲は勧誘の際に最終的にはYがXによって潰される等の説明をしたこと、これによってY従業員のうち約3割に当たる従業員が一斉に退職したこと等の事情を総合考慮すると、Xの上記行為は、単なる転職の勧誘を超えた社会的相当性を逸脱する不公正な引き抜き行為であって、違法といわざるを得ない。このように、Xは故意に上記引き抜き行為をして、YのY従業員に対する契約上の債権を侵害したものであるから、不法行為が成立する。
 また、Xの上記(2)の行為は、上記(1)の行為に引き続き、これとあいまって行われたものであり、独占禁止法に違反する不公正な取引方法を手段とする違法な行為である。Xは、前記認定の事実関係の下では、上記(2)の行為が独占禁止法に違反することを認識していたが、少なくとも認識することが可能であったものと推認されるところ、Xは上記(2)の行為によりYの顧客を奪取して営業上の利益を侵害して後記認定の損害を与えたのであるから、Yに対する不法行為を構成するというべきである。
(3) Yの損害について
 Xの上記不法行為によって、Yは売上高が減少しているが、他面、従業員引き抜きを含む不法行為であるから、Yは人件費を始めとする諸経費を免れていることに照らせば、Yの被った損害は、営業利益の喪失分と解するのが相当である。
 そして、Xの不法行為が平成15年7月から平成16年7月まででほぼ1年にわたって継続したこと、X及びYの顧客との受信契約の契約期間は通常2年であること、平成16年7月にXの不法行為が止んでからはYの営業利益は回復傾向にあり、平成17年2月からは営業利益がプラスに転じていること等は前示のとおりである。これらの事情を総合勘案すると、Yの営業利益の喪失期間は、Xの不法行為が開始された平成15年7月から平成17年6月までの2年とするのが相当である。
 イ Xの不法行為が開始される直近である平成13年7月から平成15年6月までのYの月次営業利益の合計は11億6781万4906円である。一方、Xの不法行為が開始された平成15年7月から平成17年6月までのYの月次営業利益の合計はマイナス8億8408万2175円であることは前記1認定のとおりである。そうすると、Xの不法行為がなければ、Yは平成15年7月から平成17年6月までの2年間に、直近の過去2年間の営業利益11億6781万4906円と同程度の営業利益を獲得することができたものと推認されるところ、Yのその間の営業利益は上記マイナス8億8408万2175円となっている。したがって、平成15年7月から平成17年6月までの2年間に失った得べかりし営業利益は、上記11億6781万4906円から上記マイナス8億8408万2175円を差し引いた額20億5189万7081円(11億6781万4906円−(−8億8408万2175円)=20億5189万7081円)となる。

3. 訴訟上の和解成立
 上記訴訟については、平成22年7月29日、東京高等裁判所(西岡清一郎裁判長)において和解が成立し、USENが解決金としてキャンシステムに対して20億円を支払うこととなりました。

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