御器谷法律事務所

アメリカ反トラスト法


 日本の独占禁止法は、アメリカの反トラスト法を母法としています。そのため、アメリカの反トラスト法は、日本の独占禁止法を理解する上で参考になると思われます。

1. 概要
 アメリカの反トラスト法は、主にシャーマン法、クレイトン法及び連邦取引委員会法の3法により構成されます。なお、州レベルでは、州独自の反トラスト法がある場合がありますので注意する必要があります。
(1) シャーマン法(1890年制定)
 シャーマン法は、第1条で不当な取引制限(カルテル)を禁止し、第2条で独占化行為(不当廉売、取引拒絶、排他的取引)を禁止しています。
 シャーマン法第1条の不当な取引制限が成立するには、契約や結合、共謀等の「共同行為」が必要です。競争を不当に制限する共同行為は全て規制の対象となります。
 競争制限を伴う共同行為があった場合に、当該行為が不当な取引制限にあたるかの判断する分析方法としては、1)当然違法(per se illegal)の原則及び2)合理の原則(rule of reason)があります。
1) 当然違法の原則とは、共同行為があれば、個別具体的に反競争的効果を立証せずとも違法であるとするものをいいます。これは、当該行為が本質的に競争制限効果を伴うことから認められます。当然違法の原則の適用がある行為としては、いわゆる水平的カルテル(価格協定、数量制限協定、市場分割協定、入札談合、協同ボイコットなど)があります。
2) 合理の原則とは、共同行為に加えて、個別具体的に反競争効果の立証がされた場合に違法とされるものをいいます。これは、当然違法の原則の適用のある行為以外の行為に適用されます。例えば、いわゆる垂直的取引制限(再販売価格維持行為、その他非価格制限行為)があります。
 なお、再販売価格維持行為については、従前は当然違法とされていましたが、2007年のLeegin事件判決により合理の原則の適用によることになりました。
 シャーマン法第2条は、独占的地位の濫用や独占を形成するために、単独又
は共同して、不当な取引制限又は不公正な取引を行なうことを規制するものであり、効率性による独占の形成を規制するものではありません。

(2) クレイトン法(1914年制定)
 クレイトン法は、シャーマン法の禁止する行為を予防的・補完的に規制するため制定されました。クレイトン法は、競争の減殺又は独占の形成のおそれがある価格差別等(第2条、ロビンソン・パットマン法とも呼ばれます。)、排他条件付取引・抱き合わせ等(第3条)株式取得、資産取得等の企業結合(第7条)、競争関係にある会社間の役員兼任(第8条)を規制します。

(3) 連邦取引委員会(FTC)法(1914年制定)
 連邦取引委員会法も、クレイトン法と同様に、シャーマン法の禁止する行為を予防的・補完的に規制するために制定されました。連邦取引委員会法第5条前段は不公正競争方法を禁止し、同条後段は、不公正又は欺瞞的な行為又は慣行を規制します。

2. 執行の主体
(1) 司法省反トラスト局
 司法省反トラスト局には、シャーマン法又はクレイトン法の執行権限があり、いずれかに違反する疑いがある場合には、自ら審査し、連邦地裁に差止を求めて提訴することができます。
 なお、シャーマン法違反のばあいには、刑事訴追を求めることもできます。
 刑事罰については、個人には3年以下の禁固及と30万ドル以下または利得額・損害額の2倍以下の罰金、法人には1000万ドル以下または利得額・損害額の2倍以下の罰金をそれぞれ求めることができます。
 このうち、当然違法とされる価格カルテル、入札談合、市場分割協定などについては、積極的に刑事訴追されています。

(2) 連邦取引委員会(FTC)
 連邦取引委員会には、クレイトン法と連邦取引委員会法の執行権限があります。連邦取引委員会は、クレイトン法又は連邦取引委員会法に違反する行為が存在する疑いがある場合は、審判手続きを経て、又は相手方の同意するときは審判手続きを経ずに審決により排除措置を命じることができます。
 日本の公正取引委員会は、この連邦取引委員会をモデルに設立されました。

(3) 被害者―クラス・アクション
 反トラスト法違反により被害を受けたものは、その受けた損害の3倍額及び弁護士費用(妥当な範囲に限られます)などの訴訟費用の賠償を求めることができます(クレイトン法第4条)。
 なお、被害者が多数存在し、各被害者の損害額が少額の場合には、被害者の誰かが代表して原告となり、勝訴した場合に原告とならなかった被害者にもその判決効を及ぼすクラス・アクションという制度があり、これを利用することもできます。
 また、被害者は、違反行為の差止を請求することもできます(クレイトン法第16条)
 このように、反トラスト法においては被害者救済制度も充実しています。

(4) 州の司法長官(父権訴訟)
 各州の司法長官は、その州の反トラスト法の執行を行ないます。
 また、州の司法長官は、シャーマン法違反により州民が被害を受けた場合は、州の名において被告に対して、被害額の3倍額の損害賠償請求をすることができ、これを父権訴訟といいます(クレイトン法第4条)。
 
3. 日本企業への国際カルテルの摘発と処罰
 日本企業が国際カルテルに参加して、摘発された事例も少なからずあります。(例えば、2008年には、液晶パネルの国際カルテル事件でアメリカの司法省はシャープに115億円の罰金刑を科しました。)アメリカの反トラスト法違反に対する罰金の額は日本の独占禁止法違反に比べて巨額であり、厳しく処罰されます。
 日本の企業は、日本の独占禁止法のみでなく、アメリカの反トラスト法違反にならないよう十分注意する必要があります。

 このアメリカ反トラスト法につきましても、遠慮なく当事務所にご相談下さい
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