建築訴訟の進め方
1. 建築訴訟の形態
建設をめぐる訴訟の中で数の多いものは、建築請負代金請求訴訟と建築の瑕疵(かし)を原因とする損害賠償請求訴訟です。
請負代金請求訴訟においては、建築請負契約に基づく未払代金の請求や建築の追加ないし変更工事に基づく請求、出来高による請求等を多く見受けます。
損害賠償請求訴訟においては、極めて多数の建築の瑕疵が問題となり、これに基づく瑕疵担保責任や契約違反(債務不履行)責任や不法行為責任の追及等を多く見受けます。
2. 建築訴訟の特徴
建築紛争の特色を反映して、建築訴訟においても複雑な当事者間の利害が錯綜し、金額も多額化し、建築における技術や専門性が問題となり、紛争も深刻化・複雑化し、証拠も不十分なこと等もあり、解決迄の期間が長期化しているとの現実があります。
以前は、事案によっては第一審だけでも2〜3年以上かかったことを経験したことがあります。
3. 建築訴訟の進め方
建築をめぐる訴訟においては、このような建築訴訟の特徴をふまえて、次のような様々の工夫をして迅速且つ有効な建築訴訟の進め方がされています。
(1) 建築事件集中部
東京地方裁判所では、建築紛争事件を専門的に取り扱う集中部があり、この種事件に熟練した裁判官が担当することもあります。
(2) 付調停(ふちょうてい)
建築事件集中部においては、早期に、あるいは争点の一応の整理がついたときに、調停手続にまわされることが多くあります。
調停においては、事案によっては、建築士などの専門家調停委員や弁護士などの法律家調停委員等が2人で担当調停委員となり、争点の整理や迅速な紛争の解決のために計画調停の実施を行うことがあります。
また、事案によってはいわば現場検証として、調停委員等と当事者が建築紛争の現地に行き直接調査する現地調査をすることが多くあります。
(3) 調停の成否
調停において原告と被告との合意が成立したときは、調停の成立として、裁判所が調停調書という公文書を作成し、判決と同一の効力を有します。
調停が成立しなかったときは、調停において争点を整理した結果を、瑕疵一覧表(原告と被告の主張を対比)や追加・変更工事一覧表(原告と被告の主張を対比)等として訴訟において利用するようにする方法がとられることがあります。また、事案によっては、調停が不成立の場合においても、相当と認めるときは、民事調停法第17条の「調停に代わる決定」を裁判所がすることもあります。
(4) 訴訟の進行
建築紛争においては事実の存否の認定にかかわる部分は訴訟事項として訴訟手続において証人尋問等の証拠調べを行い、建築の専門的・技術的問題や損害額や出来高の問題は専門的知識を生かした調停手続によって行うというように、場合によっては両手続を併行して行ったり、又、段階的に行ったりしている例を見受けたことがあります。
なお、建築に関する訴訟手続においては、計画審理の要請がより強く、集中証拠調べを行ったり、事前の詳細な陳述書の提出を求められたりすることが多くあります。
また、建築に関する専門的・技術的問題に争いがあるときは、建築の専門家による鑑定が実施されることもあります。
(5) 主張、立証上の特徴
| 1) |
建築の瑕疵の主張 |
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「瑕疵一覧表」において、各瑕疵の項目毎に、「現状」についての原告と被告の主張と証拠、「あるべき状態とその根拠」についての原告と被告の主張と証拠、「補修費用等」についての原告と被告の主張と金額と証拠を求められることがあります。 |
| 2) |
追加・変更工事の主張 |
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「追加変更工事一覧表」として、各工事項目毎に、請負人側に本工事の内容、証拠、追加変更工事の内容、その理由、証拠、差引金額の主張、立証が求められ、これに対して注文主側には本工事の認否、追加変更工事の認否、主張金額、証拠の主張、立証が求められることがあります。 |
| 3) |
必要な書証、写真等 |
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裁判所から求められる「建築関係図書等」としては、次のような書類があります。 |
| <申請関係> |
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確認通知書(図面、構造計算書付)、検査済証 |
| <契約関係> |
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見積書、請負契約書(約款、工事費内訳書、図面付)、請求書、領収書、追加工事費見積書、追加工事費請求書、設計図、仕様書、工程表 |
| <工事関係> |
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設計打合議事録、工事打合議事録、施工図、工事工程写真、工程表、完了届、引渡書(鍵、備品等)、竣工図等、防水保証書、工事日報、監理報告書、設計監理完了届、設計変更指示書、工事台帳、下請業者注文書、下請業者見積書、下請業者領収書 |
| <瑕疵関係> |
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瑕疵一覧表、瑕疵位置特定図、瑕疵特定写真、工事中の写真、未完成工事内訳、要望書 |
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