御器谷法律事務所

橋梁談合事件


 談合の実態については、規模も大きく、報道でも大きく取り上げられ、談合がくり返された実態があり、且つ官製談合の典型とも思われる、平成17年に刑事告発されたいわゆる「橋梁談合事件」につき事案の流れと談合の実態につき説明してみます。
 事実関係は、公正取引委員会のプレス・リリースや新聞等の報道によるものであり、概略的事実にすぎません。また、刑事事件で事実の存否が争いとなっているものがあります。
 
1. 橋梁談合事件−事案の流れ
(1) 平成16年10月5日−鋼鉄製橋梁をめぐる入札談合容疑で、公取委が、三菱重工、新日鉄、石播、三井造船、川重や橋梁専門メーカー等30社に立入検査。
(2) 平成17年5月23日−公取委は、国交省発注の鋼橋工事入札談合容疑で、独禁法違反(不当な取引制限)として横河ブリッジ、石播等8社を、検事総長に刑事告発。
(3) 同年5月26日−横河ブリッジ理事、三菱重工橋梁部次長ら11社の14人が逮捕。
(4) 同年6月15日−幹事社幹部8人と26社を起訴。
(5) 同年6月29日−公取委が、日本道路公団発注分についても、横河ブリッジ、三菱重工、石播を刑事告発。
(6) 同年7月12日−元道路公団理事が逮捕され、橋梁メーカー担当者4人が再逮捕。
(7) 同年7月25日−道路公団副総裁が、独禁法違反ほう助と背任の容疑で逮捕。
(8) 同年8月2日−元道路公団理事を含むメーカー担当者5人と6社を独禁法違反として起訴。
(9) 同年8月15日−道路公団副総裁を独禁法違反(共同正犯)と背任罪で起訴。道路公団は、副総裁を解任、退職金なし、損害賠償請求を検討。
(10) 同年9月29日−公取委は、道路公団に官製談合防止法を適用。公取委は、三菱重工、横河ブリッジ、石播等45社に排除勧告。
(11) 同年10月31日頃迄に−三菱重工、新日鉄ら5社が、排除勧告の応諾を拒否。立入検査後の談合を争う。
(12) 同年12月16日−東京高裁での初公判で、元道路公団副総裁が無罪を主張。
(13) 平成18年3月27日−公取委が、三菱重工や新日鉄ら5社を除く44社に対して総額129億円の課徴金納付命令。一事件としては過去最高額。
(14) 平成18年11月に判決−23社に罰金合計64億8千万円(最高額は罰金6億4千万円)、8人の被告人に執行猶予付き判決(懲役2年6ヶ月執行猶予4年等)
(15) 東京高等裁判所 平成19年12月7日−判決被告人は、日本道路公団の(JH)の理事。独占禁止法上の不当な取引制限の罪の身分なき共謀共同正犯の責任を認め、且つ、背任罪にも該当するとした。
懲役2年、3年間執行猶予。
(16) 平成20年7月4日−東京高裁判決元日本道路公団副総裁に独禁法違反(不当な取引制限)と背任罪(分割発注)で懲役2年6ヶ月、執行猶予4年の判決。
(17) 平成20年7月29日−東日本高速道路等が、談合メーカー49社と元公団副総裁らに対し、連帯債務として約89億円の損害賠償を請求。
副総裁らに対する損害賠償請求は、官製談合防止法に基づく。

2. 橋梁談合事件−談合の実態
(1) 1950年代〜60年代−談合組織として、大手17社が「紅葉会」(こうようかい)を作り、又、その後中小30社は「東会」(あずまかい)を結成。
紅葉会は、談合の基本となる「諸規定」を作成。
三菱重工を中心に政界にも影響力。
(2) 1991年−談合に関する資料をもとに三菱重工等が脅迫される。
紅葉会、東会が解散。
(3) 1993年〜−ゼネコン汚職事件で、役所からの「天の声」が出なくなる。
K会(大手17社)、A会(中小30社)が復活して、受注調整が本格化。
天下りOBを中心として工事の割り付けをする仕組みへ。
(4) K会、A会−毎年の総会で受注調整を合意。
幹事社が連絡網を作成。
・国発注の工事−幹事社が「ワーク」という会合で工事を配分。
・道路公団発注の工事− 公団OBが工事の配分表を作成し、公団職員がこれを承認。

3. 判決
・平成18年11月に判決− 23社に罰金合計64億8千万円(最高額は罰金6億4千万円)、8人の被告人に執行猶予付き判決(懲役2年6ヶ月執行猶予4年等)

・道路公団鋼鉄製橋梁官製談合、背任事件
 東京高等裁判所 平成19年12月7日判決
被告人は、日本道路公団の(JH)の理事。独占禁止法上の不当な取引制限の罪の身分なき共謀共同正犯の責任を認め、且つ、背任罪にも該当するとした。
 懲役2年、3年間執行猶予。

判旨のPoints
  1. 共謀共同正犯の成立−独禁法違反
     このように、被告人は、理事として、本件独占禁止法違反行為の対象である鋼橋上部工事の発注を承認する権限を有するJH側の責任者の立場にあった者であり、乙から依頼され、丙から割振表の提示と交付を受けることにより、JHが丙の割り振りを了承しているというお墨付きや権威付けを与え、丙の円滑な受注調整を可能にするとともに、丙の割り振りによる受注調整が行われていることを知りながら、理事説明において、多くの鋼橋上部工事の発注について、それを了承することを繰り返したのである。被告人のこのような行為は、乙の行為とともに、鋼橋上部工事の発注者側の責任者の行動として、本件独占禁止法違反の犯行にとって、極めて重要かつ必要不可欠な行為であったといわざるを得ない。そして、被告人が、本件独占禁止法違反の犯行について、乙、丙及び本件四七社の担当者らと順次に共謀を遂げていたことも十分に認められる。しかも、被告人は、乙と同様に、将来の自分を含むJH職員の再就職先の確保という自分達の利益を図るために、このような行為を行っているのであるから、まさに自らの犯行として、本件独占禁止法違反行為を行ったということができるのである。
     これらの事情に照らすと、被告人は、本件独占禁止法違反の犯行において、その対象工事の発注者側の責任者の一人として、自分達の利益を図るために、極めて重要かつ必要不可欠な役割を果たしているのであるから、被告人は、本件独占禁止法違反の犯行について、単に幇助犯にとどまるのではなく、乙、丙及び本件四七社の担当者らと共謀の上、これを自己の犯罪行為として行った者として、身分なき共謀共同正犯の責任を負うというべきである。

  2. 背任罪の成立‐分割発注と一括発注の得失
     これらの事情によれば、本件富士高架橋工事を一括して発注することについては、橋梁の構造条件、現地条件、経済性等の観点から、十分な合理性が認められる。これに対し、本件富士高架橋工事を分割して発注することについては、工事の品質管理や効率性、現場の管理や監督、安全性の確保、事務処理の効率性、コスト削減等の観点から、必ずしも合理性を見出すことはできない。そして、一括発注の計画を分割発注に変更した場合には、図面、設計書、数量表、特記仕様書等の発注に係る関係書類を作成し直す必要があり、これらの書類を設計コンサルタントに外注している関係で、経費も余計に掛かることになり、さらに、設計コンサルタントとの打合せ、積算のやり直し、新たな決裁手続や説明手続等にも、多大な労力を費やすことになり、発注の遅れに繋がるという不合理性も存在する。
     本件富士高架橋工事は、分割発注の場合には、一括発注の場合に比べて、諸経費(共通仮設費、現場管理費及び一般管理費等)が増大し、その結果、税抜き工事予定価格(有効数字五桁で切り捨てる端数処理をしたもの)が、一括発注の場合には八八億四五〇〇万円であるのに対し、分割発注の場合には合計八八億九二八〇万円(第一工事が六九億二〇八〇万円、第二工事が一九億七二〇〇万円)と少なくとも約四七八〇万円増大することが認められる。
     したがって、被告人は、乙とともに、本件富士高架橋工事の分割発注をJH静岡建設局の担当者らに指示したことによって、JHに対し、少なくとも約四七八〇万円の財産上の損害を加えたということができる。
     本件富士高架橋工事は、連続した第二東名高速道路の建設工事の一部であり、隣接した工区である西工事が既に発注されているのであるから、第一工事のみが発注されて第二工事が発注されないことはあり得ず、第一工事の請負契約が締結された時点において、本件富士高架橋工事の分割発注が確定し、第二工事の発注も確定的になったということができる。してみると、第一工事の請負契約が締結されることによって、第二工事が現実には未だ発注されておらず、第二工事の発注による現実の損失が未だ発生していないとしても、経済的見地においては、その時点において、JHの財産的価値が減少したものと評価することができるのであるから、背任罪が既遂に達したというべきである。
 以上のように、被告人は、乙と共謀の上、自己ら、丙及び本件四七社の利益を図る目的で、JHの理事としての任務に背き、本件富士高架橋工事について、分割発注をすべき合理的な理由がなく、分割発注をすれば、一括発注に比べて合計請負代金額が相当多額になることを知りながら、JH静岡建設局の担当者らに対し、同工事を二分割して発注するように指示し、JH静岡建設局長をして、その一部につき工事請負契約を締結させ、JHに対し、少なくとも約四七八〇万円の財産上の損害を加えたのであるから、被告人に背任罪が成立することは明らかである。
・平成20年7月4日東京高裁判決
元日本道路公団副総裁に独禁法違反(不当な取引制限)と背任罪(分割発注)で懲役2年6ヶ月、執行猶予4年の判決。

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