御器谷法律事務所
金子晃 慶大名誉教授に聞く (下)
独禁法と官公需法

課徴金引き上げ "やり得" なくす
過度な地域制限に疑問

・・公正取引委員会の独占禁止法研究会内に設置した「措置体系見直し検討部会」が独禁法の見直しを検討している。この検討内答に対し、日本経済団体連合会が9月に意見書を提出し、課徴金の法的な位置づけの問題などを指摘しているが。

「独禁法は行政の取り締まり規定であり、課徴金はその違反者に行政規定を守らせるための行政処分というのが法的な位置づけだ。このため、違反者から課徴金を徴収しても、刑事罰とも、損害賠償請求とも"二重取り"ということにはならない。ただ、課徴金の額は、違反行為によって得た利益、いわゆる"不当な利得"を基準に算定するが、この算定方法が位置づけをあいまいに見せているのかもしれない」
「本来、課徴金はいわゆる"やり得"をなくし、"やり損"にすべきものだ。だが、現状はそこまで至っていない。脱税では"やり得"をなくすため、非常に厳しい罰則を設けている。独禁法も有効に機能させるには、現行の課徴金に何らかのプラスαを加えてもよいのではないか」

・・課徴金の額を引き上げるべきだと思うか。

「違反行為をしておきながら、課徴金が高すぎるという議論はおかしい。リスクが高くなるのを拒む前にリスクのある行為をしなければ良い。独禁法は経済憲法と言われ、米国では民主主義の基礎とも言われている。経済ルールが守れない企業や業界は今後、成り立たないのではないか」

・・リーニエンシー制度(減免制度)の導人も検討されている。

「公取委はこの制度を導入する前に、もっとやるべきことがある。それは談合の取り締まり強化だ。公取委は現在、だれが、どこに集まり、何を決めたかなどという"直接証拠"を立証できないと、摘発しない。これでは厳しく談合を取り締まれない。捜査対象となる業者あるいは業界の過去の歴史や行動をはじめ、市場の状況、商品やサービスの特質などさまざまな事象を集め、"間接証拠"だけでもその行為は談合があったとしか説明できないという場合は、摘発すべきだ。それに対し企業側に不服があれば、反証すればよい」
「それと繰り返しになるが"やり得"を許さない」ように課徴金を引き上げることだ。談合をすれば、公取委に摘発され、重い負担が課せられる。こうなると、減免を求める企業が駆け込んでくるかもしれない。談合が密室で行われ、捜査がお手上げだから、この制度を導入するというのでは、制度そのものの機能が生かされない」

・・落札率だけで談合の有無を議論する動きがあるが。

「この二つを直接結びつけて断定するのは危険だ。受・発注者間のあしき慣行や積算ソフトの充実などにより、談合がなくても、予定価格に近い価格での受注は当然ある。落札率と談合の有無がまったく関係ないと言えないが、こうした議論よりも、工事費内訳書を応札業者に提出させるなど、現行制度を充実させる検討をもっとすべきだ」

・・官公需法の見直しの議論をどう見るか。

「同法の目的がよく分からない。優秀で技術力のある中小企業に受注機会を確保するというのであれば意義があるが、そこに地域制限を入れるのはおかしい。米国でも中小企業に対する優遇策はある。ただ、資格のある中小企業にすべて門戸を開いている。地方自治体が固有の財産で地元企業を優遇するのは構わないが、国の補助金などが入った事業で地元業者に参入を限定するのはおかしい。門戸を広げ、優秀な中小企業を競わせる。そうすれば、足腰の強い中小企業を育てることにもつながるはずだ」。

(日刊建設工業新聞 2003年10月10日掲載)

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