御器谷法律事務所
新 会 社 法

事業の譲渡
  • 事業の重要な一部の譲渡、事後設立について、株主総会の承認が不要な場合が明記されました(前者については譲り渡す資産の帳簿価格が総資産額の5分の1以下、後者については対価として交付する財産の帳簿価格が譲り受ける事業の純資産額に対して5分の1以下の場合、法467条・468条)。
  • 事後設立の場合における検査役の調査制度(旧246条)は廃止されました。

解散・清算
  • 通常清算手続については、裁判所の監督に属する旨の規定が削除されました。
  • 特別清算における協定の可決要件につき、「債権者集会に出席した議決権者の過半数の同意」及び「議決権者の議決権の総額の3分の2の議決権を有する者の同意」があれば足りるものとして、後者の要件が緩和されました(法567条1項)。
     一方で、労働債権等一般の先取特権その他一般の優先権がある債権については、特別清算開始の効力を受けない(協定の対象外)として、保護が図られています(515条3項)。
  • 民事再生法の施行により、存在価値を失ったと解されていた会社整理の制度は廃止されました。

持分会社
1) 合名会社・合資会社・合同会社(日本版LLC)
 社員1人のみの合名会社が認められることとなりました(法641条)。
また、法人も合名会社の社員や合資会社の無限責任社員となることができるようになりました(法598条)。
 今回の法改正で新設された合同会社は、出資者全員の有限責任が確保されつつ(法576条4項)、会社の内部関係については定款による自治を広く認める(575条)という特徴を有します。
2) LLP(有限責任事業組合契約に関する法律上の組合)との違い
 LLC(合同会社)とLLP(有限責任事業組合)とは、社員または組合員の全員が有限責任しか負わず、内部自治が広く認められているという点で共通します。
 しかしながら、LLPは、組合契約によって成立し、法人格を有しないこと、会社組織への変更(株式会社等との合併を含む)が認められないことなどの点においてLLCとは異なる性質を有します。
 また、LLPの利点としては、構成員課税(いわゆるパス・スルー課税)が認められ、二重課税が回避できる点にあるといわれています。

組織変更(組織再編)
1) 組織変更
 持分会社(合名・合資・合同)から株式会社への組織変更、及び、その逆の組織変更についても、総社員あるいは総株主の同意等、一定の要件を満たせば可能となりました(743条)。
 また、合同会社から合名・合資会社への種類変更、及び、その逆についても、定款変更等、一定の要件を満たせば可能となりました(638条)。
2) 組織再編行為時における対価の柔軟化
 吸収合併・吸収分割や株式交換を行う場合に消滅会社の株式等に対して、存続会社等の株式を交付せず、金銭その他の財産を交付することが認められました(法749条1項2号・751条1項3号、758条4号・760条5号、768条1項2号・770条1項3号)。
 これにより、合併における存続会社がその親会社の株式を対価として交付するいわゆる「三角合併」や合併の対価として金員のみを交付する「キャッシュアウトマージャー」が可能になりました。
3) 簡易組織再編
 消滅会社等の株主等に交付する存続会社等の株式等の財産の額が存続会社等の純資産額の5分の1を超えない場合等は、原則として、存続会社において株主総会の決議を経ることを要しないとされました。他方の分割会社についても、同様の規定が設けられました(法796条3項、784条3項、805条)。
4) 略式組織再編行為の創設
 企業買収を容易にするために、特別支配会社(ある株式会社の総株主の議決権の10分の9以上を他の株式会社が保有する場合:法468条1項)が組織再編行為を行う場合には、それぞれの会社における株主総会の決議を要しないこととされました(法784条1項、796条1項)。
5) 敵対的買収に対する防衛策
  • 新会社法上は、種類株式(例えば、いわゆる黄金株)や新株予約権の内容をより自由に定めることができるようになり、いわゆるポイズン・ピルの導入もより容易になりました(法108条1項)。
  • 取締役の解任や合併等の株主総会の決議要件については、定款で厳しくできることが規定上明らかにされました(法309条)。

この新会社法につきましても、遠慮なく当事務所にご相談下さい。

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企業と法律
「会社分割」

 (但し、旧法下における解説であることにご留意ください)

1.
会社分割とは

(1) 会社分割は、会社が有する様々な「営業」(事業)の分離・独立を容易にすることにより、経営の効率化・企業再編を図るための制度として平成12年の商法改正により創設されました。
 現物出資による子会社設立等の場合には検査役の検査が必要であったところこれが不要となったこと、免責的債務引き受けにつき債権者の個別の同意を不要としたこと、資金がなくとも株式を対価とする会社分割が可能となったことなどが新法の特色とされています。
(2) 会社分割は、承継を受ける会社に着目して、新設会社に営業を承継させる場合(新設分割)、既存会社に営業を承継させる場合(吸収分割)に分けられます。また、株式の割当ての対象に着目して、承継の対価である株式全部を元の会社(分割会社)に割り当てる場合(物的分割、分社型)、分割会社の株主に割り当てる場合(人的分割、分割型)に分けられます。
(3) 分割の対象となる「営業」については、「有機的一体として機能する財産の譲渡(得意先関係等の経済的価値のある事実関係を含む)」と一般的に解されており、個別財産の譲渡とは区別されます。
 このように、会社分割は、対象となる「営業」に属する権利義務が包括的に別会社に承継される点、合併等と同様に組織法上の行為とされています。
(4) 会社分割は、企業再編を容易にする制度ですが、その反面、会社債権者の保護も十分に図る必要があります。そこで、債務超過となっている「営業」(事業)を分割することは許されず(資本充実の原則)、また、会社分割にあたっては、「各会社の負担すべき債務の履行の見込みがあること」及び「その理由」を記載した書面を事前に開示する必要があることから、元の会社(分割会社)が債務超過となるような会社分割も許されないと一般的には解されています。
(5) 会社分割に伴い、当該「営業」に従事する労働者(労働契約)についても承継されるものと解されるところ、労働契約の譲渡が恣意的になされないよう労働者の保護をも十分に図る必要があります。
 そこで、「会社の分割に伴う労働契約の承継等に関する法律」は、会社分割前に、会社側と労働者が事前に協議すること、会社が一定の労働者に対し転籍・異動を書面で通知することを定めています。
 さらに、承継される営業に主として従事する労働者であるにもかかわらず分割計画書に新設会社が労働契約を承継するとの記載がない場合、あるいは、承継される営業に主として従事する労働者以外の者で分割計画書に新設会社が労働契約を承継するとの記載がある場合につき、対象となる労働者は異議を述べることが可能となります。
(6) 商法は、分社型の会社分割の場合で、さらに承継される財産の合計額が分割会社の資産の合計額の20分の1を超えない場合については、分割計画書について株主総会の承認を要しないで会社を分割するというより簡易な手続を定めています。

2. 会社分割に至るまでの流れ(新設分割の場合の一例)

(1) 会社分割が決まったら、取締役会会議において分割計画書を作成し、承認総会の会日の2週間前までに承継される営業に従事する労働者等と協議します。
 また、株主に対し、株主総会の招集手続を行います。
 さらに、分割計画書等を開示するとともに(承認総会の会日の2週間前より分割の効力発生日後6か月を経過する日まで)、労働者等への通知を行います。
 なお、公開会社の場合は、インサイダー取引を規制するため、会社分割を行うことにつき開示が必要となる場合があり、さらに、有価証券報告書提出会社については、臨時報告書も同時に提出することが必要となる場合があります。
(2) 次に、株主総会において、分割計画書の承認が行われます。
この承認にあたっては、特別決議(発行済株式総数の過半数に当たる株式を有する株主が出席し、出席株主の議決権の3分の2以上に当たる多数の賛成)によることが商法上要求されています。
 なお、会社分割に反対する株主は、事前に反対通知を出し、かつ株主総会において分割計画書に反対し、さらに、株主総会から20日以内に株式買取請求をすることとなります。
(3) 株主総会における承認から2週間以内に、分割に異議があれば1か月以上の一定期間内に異議の申出をすることを官報に公告し、さらに知れたる債権者に対して個別に異議申出を催告することを要します。
 また、会社は、分割する旨の公告を株式割当の基準日の2週間前までになす必要があります。
(4) 以上の分割手続が終了すると、分割の登記が行われ、新設会社が本店所在地において登記をすることにより、会社分割の効力が生じます。
 分割後も、一定の事項につき事後開示が行われるとともに、株主に対する通知がなされます。
 また、分割会社、新設会社のそれぞれの株主、取締役、監査役等、分割を承認しなかった債権者等は、分割の日から6か月以内に訴えを提起することによってのみ会社分割の無効を主張することができます。

3. 債務超過会社における会社分割の可否
 債務超過の会社については、会社分割ができない、と説明する解説書等は少なからずあります。
 その理由として、商法は「各会社の負担すべき債務の履行の見込みあること及びその理由を記載した書面」を分割計画書等とともに、本店に備置くことを要求しており(備置期間については、上記2 (1)のとおり)、債務超過会社は、債務の履行の見込みがないから債務超過の会社は会社分割をできないと説くものもあります。
 しかしながら、債務の履行の見込みがないこと=債務超過、とは必ずしも言い切れず、債務超過の会社であっても、会社の将来性等を考慮すれば、債務の履行の見込みがある場合も当然考えられます。
 また、商法上は、債務超過会社の会社分割を正面から禁止した規定もないことから、債務超過会社についても、会社分割が可能である、という見解もまた主張されています。

4. 会社分割においては、法律上の問題のみならず、税務・会計上の問題も避けて通れません。そこで、会社を分割するにあたっては、事前に弁護士や会計士などと、分割の可否、手続等につき十分相談した上で手続を進められるべきでしょう。

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企業と法律 「営業譲渡」
 (但し、旧法下における解説であることにご留意ください)

1.
営業譲渡とは、
 一定の営業目的のために組織化された有機的一体としての財産(得意先関係等(のれん等)の経済的価値のある事実関係を含む)を譲渡する債権契約、と一般的には言われています(商法§245)。
 単なる重要な財産の譲渡(商法§260・(2)・1号)とは異なる。
 営業であれば全部でも一部でも、営業所単位でも、特定の営業部門だけでも譲渡は可能。
 有償であれば、売買類似の混合契約。

2. 手続
(1) 営業譲渡契約の締結 事前に営業譲渡に関する基本合意(一種の予約)が別途交わされることもあり
(2) 株式会社 営業の全部又は重要な一部の譲渡、他の会社の営業全部の譲受けには、株主総会の特別決議による承認が必要(商法§245)
(3) 事案によっては 公正取引委員会への届出(独禁法)
主務官庁への届出、許認可等(特別法)
(4) 譲渡の実行手続、対抗要件の具備

3. 効果
(1) 営業財産の移転
 この財産の移転には、各財産毎に個別の移転手続きが必要であり、且つ、各別に対抗要件を具備することが必要です。
 1) 不動産(土地、建物)−移転登記
 2) 動産−引渡し
 3) 借地権、借家権−各対抗要件、賃貸人の承諾
 4) 売掛金等−債権譲渡通知書等
 5) 買掛金等−債権者の承諾のもとに、重畳的債務引受け又は免責的債務引受け
 6) 継続的取引−取引相手方の承諾のもとに、契約更改手続等
 7) 知的財産権−各移転の登録等
 8) のれん等の事実関係−ノウハウの伝授、得意先や仕入先への通知等
 9) 従業員の引き継ぎ−従業員の個別の同意が必要
(2) 競業避止義務
     商法§25−免除も可
(3) 商号の続用と譲受人の責任等
     商法§26〜§29
(4) 反対株主の株式買取請求権
     商法§245ノ2〜4

4. 営業譲渡契約書
  次の諸事項等を定めるものを多く見受けます。
 (1) 譲渡する営業の特定
 (2) 譲渡日
 (3) 譲渡財産の目録
 (4) 譲渡価額、その支払方法
 (5) 各財産の引渡日、対抗要件の具備
 (6) 従業員の引き継ぎの有無、その方法、条件
    再雇用、出向等、勤続年数や退職金の引継ぎ等
 (7) 株主総会の承認
 (8) 競業避止義務−免除の有無
 (9) 商号続用の有無−責任の負担
 (10)引渡し迄の善管注意義務
 (11)事情変更による譲渡条件の変更等
 (12)契約の効力発生−株主総会の承認と諸官庁の許認可を条件
 (13)瑕疵担保責任
 (14)費用の負担
 (15)公租公課の分担

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