御器谷法律事務所

離婚の法律相談

Q19. 婚姻費用の分担について教えてください。

A. 回答
1. 概要

 婚姻費用とは、財産、収入、社会的地位等に相応した夫婦共同の生活を維持するために必要な生活費のことを言い、衣食住の費用、養育費、教育費、交際費等を含みます。
 この婚姻費用分担義務は、夫婦の婚姻が継続している限り、離婚の協議中、別居中、離婚調停、離婚訴訟中でも存在します。
 婚姻費用とは、夫婦の生活費のみならず、子供の養育費、教育費をも含むのです。この場合の子供とは、未成年かどうかではなく未成熟子(経済的に独立せず、未だ社会的に独立人として期待されていない年齢の子女)であるかどうかを基準とする裁判例が多いようです。
 
2. 婚姻費用を支払ってもらえなかったら

どのような手続きを行うか
 夫婦円満な状態では婚姻費用などは問題にはなりません。
 問題となるのは、夫婦関係が円満でなくなり、別居等をした場合です。この場合に、要求しても任意に支払ってもらえなかった場合には、家庭裁判所に対して調停の申立かもしくは審判の申立を行う必要があるものと考えられます。
 なお、婚姻費用の分担額は、家庭裁判所が決定するべきであり、通常裁判所が判決手続きで判定するべきものではないとの最高裁判例があります。
以下調停手続きの流れを見てみましょう。

< 調 停 の 手 続 き の 流 れ >
調 停 の 申 立
調 停 手 続 き
調 停 成 立 調 停 不 成 立
当然に審判に移行します。
すなわち、家庭裁判所が金額を決めることになります。
  • なお、審判の申立がなされても実務的には調停に付して当事者間の調整を図るのが一般的です。

3. 婚姻費用分担の始期と終期

 婚姻費用分担の開始時期については、以下のような最高裁判例があります。
 すなわち、「家庭裁判所が婚姻費用の分担額を定めるにあたり、過去に遡って、その額を形成決定することが許されない理由はなく、所論の如く将来に対する婚姻費用の分担のみを命じ得るに過ぎないと解すべき何らの根拠はない。」と判示して過去の部分についても請求しうるとしておりますが、開始時点がどの時点なのかは判断がされておりません。
 下級審の裁判例には、別居時、請求時、申立時等のいろいろな判断がされており、見解の分かれるところです。
 また、婚姻費用分担の終期については、「別居解消または離婚に至るまで」「同居または離婚に至るまで」「婚姻解消に至るまで」等とするのが実務としては一般的なのではないかと考えられます。
 もっとも、婚姻費用の額が定められた後に、事情の変更があり、従来の額が現状に適さず、維持することが不当となった場合には、当事者の申立により、取消または変更の審判をすることも可能な場合があります。

4. 婚姻費用分担の諸問題
(1)有責配偶者からの婚姻費用分担請求
 有責配偶者からの婚姻費用分担請求であっても、自己の最低生活を維持する程度の婚姻費用の分担を請求できるとする裁判例が見られます。
 また、破綻についての責任の割合により分担額を減ずるという扱いも多く見受けられます。

(2)負債について
 負債の中でも住宅ローンは一般的には特別経費に当たり、基礎収入を算出する際控除できるとされております。
 また、負債のうち、夫の母に対する負債やサラ金に対する負債は、婚姻費用に先んじて支払うことが相当な負債と認定できないとした審判例があります。

(3)相手方の親に対する扶養料
 相手方の親の生活費を婚姻費用分担額の算定にあたり考慮すべきかが問題となります。この点については、夫はまずもって妻子に対し、自身の収入と見合いかつ自己の生活態度と同程度の生活を保障すべきであり、妻子を優先すべきであるという裁判例があります。

5. 婚姻費用の算定

 それでは最後にこのような婚姻費用はどのようにして算定するのか検討することにします。

(1)算定方法
 婚姻費用の分担については、「夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する」とされております。
 従いまして、婚姻費用の分担額を算定するには、夫婦の資産、収入等を認定するとともに、別居に至った経緯、破綻の程度、有責割合、別居期間、妻の就労等のすべての事情を総合的に勘案して算定することになります。
 婚姻費用の分担額の算定にあたっては、平成15年4月に東京家庭裁判所から「養育費・婚姻費用算定表」が公にされています。
 この算定表によれば、夫婦のみの場合、子が1人の場合、子が2人の場合、子が3人の場合のそれぞれにつき、義務者の収入(自営、給与)と権利者の年収により標準的な婚姻費用の分担額が分かるようになっています。
 但し、この算定表による結果が著しい不公平を招く特別の事情がある場合には、その個別的な事情を考慮する余地があるものと考えられています。

(2) 婚費の分担と私立学校費用についての審判例
長男Aの私立学校費用について
 相手方は、長男Aが私立小学校に通学していることから、その学費、制服代その他の学校費用をも婚姻費用として申立人が分担すべきであると主張している。前記東京・大阪養育費等研究会が給与所得者の基礎収入率(0.34ないし0.42)を提言するについては、主として公立学校の費用のみを全国統計により参酌していると推定されるから(判例タイムズ1111号参照)、子弟教育を私立学校で行う費用は前記提言が予想している範囲内のものではない。したがって、特に子弟教育を私立学校で行うことが相当であり、前記提言の基準のみによっていては不合理であるという特別の事情がある場合においては、婚姻費用算定において前記提言の基準に付加ないし修正してこれを参酌することは差し支えないものと考えられる。
 記録によれば、長男Aが私立小学校に入学するについては、申立人も同意し、別居後も同じ小学校での教育の継続を希望していると認められ‐‐‐。このような申立人の意思を斟酌すると、本件において、公立学校費用のみを参酌している前記提言の基準にのみ依拠することは不合理であり、当事者の意思にも合致しないということができる。そこで、申立人の意思を斟酌し、前記東京・大阪養育費等研究会が提言する基準を一部修正して、同基準により、申立人の分担額として算定された婚姻費用額に、合理的な「差額」として算定された私立小学校費用を特に加算して、最終的な申立人の分担額を算定することとする。
 相手方は、学校費用(月額)として、授業料、PTA会費、塾・家庭教師月謝、文具・書籍代、その他のほか、弁当代を主張している。しかし、塾・家庭教師月謝、文具・書籍代、給食費(弁当代)等は、子がどの学校に通学するとしても、ある程度は必要となる費用として当然に予想される費用であると考えられるから、私立学校に通学していることを原因として斟酌すべき費用は、主として公立学校に比して高額であることが公知の事実となっている授業料関連費用であると考えられる。職権で調査したところによれば、長男Aが公立小学校に通学した場合の名目上の授業料は概ね0円であるが、全国的に月額1500円程度の教材費関連費用を負担しなければならないものと推定されるから、これが公立学校における授業料関連費用であると認められる。そうすると、長男Aの授業料から1500円を差し引いた月額が、公立小学校における費用を超える差額ということができる。さらに、相手方はPTA会費も必須の経費である主張している。確かに、職権で調査したところによれば、公立小学校のPTA会費は概ね月額3026円程度であることが認められるから、長男Aの通う私立小学校との間では‐‐‐円の隔差が生じている。申立人の前記陳述書の趣旨に照らせば、このPTA会費の公立小学校との差額についても、申立人負担から除外すべき理由はないと考えられるから、結局、申立人の負担額に加算すべき費用は、私立小学校の授業料の超過額とPTA会費の超過額であると認められる。

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