御器谷法律事務所

暴力団排除条例とは

1.暴力団排除条例とは
 暴力団排除条例(暴排条例)とは、地域社会から暴力団を排除するために自治体が定める条例で、平成21年10月に福岡県において全国で初めて制定されました(平成22年4月1日施行)。
 平成23年10月1日に、東京都と沖縄県でも暴排条例が施行され、全ての都道府県において暴排条例の施行が実現するに至りました。
 暴排条例には、社会全体として暴力団排除を推進し、その資金源を絶つことなどによって暴力団排除を実現することを目的に、自治体の責務、市民及び事業者の責務、禁止措置、違反行為に対する措置等が定められています。
 各自治体によって暴排条例の具体的な内容には若干の違いがありますが、主な内容としては、暴力団組事務所の開設制限、暴力団員等への利益供与の禁止、公共工事からの排除、暴力団組事務所として使用される不動産の譲渡等の制限等が挙げられます。
 以下では、東京都暴力団排除条例の規定に従って、その主な内容をご紹介致します。

2. 求められる措置
(1) 事業者の契約時における措置
 事業者の契約時における措置として、事業者がその行う事業についてする契約が暴力団の活動を助長することとなるなどの疑いがあると認められる場合に、事業者に対して、契約を締結するにあたって当該契約の関係者が暴力団関係者でないことを確認すること(東京都暴排条例第18条1項)、契約締結の際には、特約として、暴力団を関与させないこと、暴力団の関与が判明した場合には当該契約を解除することができる旨を契約書その他の書面によって定めること(同条例第18条2項)、が求められています。
 なお、東京都暴排条例では、「事業者」とは、事業を行う法人の他、事業を行う個人や、マンションの管理組合等の任意組合も含むとされています(同条例第2条7号)。
 
(2) 不動産の譲渡等における措置
 不動産の譲渡又は貸付けをしようとする者は、その契約の締結に当たり、相手方に対して当該不動産を暴力団事務所の用に供するものでないことを確認すること(東京都暴排条例第19条1項)、契約締結の際には当該不動産を暴力団事務所の用に供させてはならないこと、当該不動産が暴力団事務所の用に供されていることが判明した場合には、当該契約を解除し、又は当該不動産の買戻しをすることができる旨を契約書その他の書面によって定めること、が求められています(同条例第19条2項)。
 また、不動産の譲渡等の代理、媒介をする者に対しては、上記規定事項の助言その他の必要な措置を講ずるよう努めることも規定されています(同条例第20条)。

3. 禁止される行為等
 東京都暴排条例では、第21条以下において禁止行為等を定めています。
 都民や事業者を対象として想定する主な禁止行為の概要は、以下のとおりです。
  
暴力団員等の規制対象者への利益供与の禁止(第24条)
暴力団員による他人の名義利用、暴力団員への名義貸しの禁止(第25条)

 このうち、事業者にとって特に重要な規定は、第24条3項の利益供与の禁止でしょう。
 同条項は、事業者は、1) 「暴力団の活動を助長し、又は暴力団の運営に資することとなる」ことの2) 「情を知って」、暴力団員等の規制対象者又は規制対象者が指定したものに対して3) 「利益供与」をしてはならない、としています。
 まず、1) 「暴力団の活動を助長し、又は暴力団の運営に資することとなる」とは、典型的には暴力団員にみかじめ科を渡す行為や事務所を提供する行為がこれに当たるとされます。
 東京都に先立って暴排条例が施行されている他の自治体における運用状況を見ると、飲食店が暴力団員に会合等を開かせること、百貨店が暴力団の贈答品を受注すること、印刷業者が暴力団から名刺等の印刷を請け負うこと、運送会社が暴力団から中元の配送を受注すること、などが助長取引として勧告等の対象とされた事例が見受けられます。
 次に2) 「情を知って」とは、暴力団の活動を助長し、又は暴力団の運営に資することとなる事情を知って、という意味です
 3) 「利益供与」とは、規制対象者から相当の対償を得る場合や、規制対象者を不当に優先することのない場合も含むものと解されており、暴力団員から正当な代金を受け取って商品を販売すること等もこの利益供与に当たり得ることとなりますので注意が必要です。

4. 企業に求められる対応
 暴排条例では、市民や事業者の責務や、禁止行為等についての規定も定められており、事業を行う企業にも、暴力団排除に向けた取り組みを求めるものとなっています。
 暴排条例の施行に対応するために、各企業においては例えば以下のような取り組みが求められていると言えるでしょう。
 
 1) 暴力団排除に向けた体制の構築(暴排宣言、業務マニュアル作成等)
 暴力団排除のための体制構築に当たって、まず、組織全体として一丸となって立ち向かうことを組織のトップが宣言し、その姿勢を強く打ち出すことが有用と思われます。
 組織全体としての反社会的勢力との関係遮断の意思統一を確認するとともに、現場で対応する従業員の士気の向上、反社会的勢力への牽制、などの効果が期待できます。
 また、反社会的勢力との関係遮断のためのマニュアルを策定し、現場ではこのマニュアルに従って取引を進める体制を築くことが必要と思われます。
 取引先の属性チェックや、契約書の審査、取引先が反社会的勢力に該当する又はその疑いが高いことが判明した場合の取引拒絶・関係遮断の対応等につき、予めマニュアル化しておくことが有用と思われます。

 2) 約款等の見直し
 東京都暴排条例でも、事業者が契約を結ぶに当たっては取引の相手方が暴力団等であることが判明した場合には、契約を解除することができる旨の特約(暴排条項)を締結することが求められています(東京都暴排条例第18条2項)。
 これまでにも保険業界や金融業界等では業界としての取り組みとして暴排条項の導入が進められていましたが、暴排条例の制定を受け、今後あらゆる事業者において契約書・約款の見直し、暴排条例導入は必須となっていくものと思われます。
 また、この暴排条項と併せて、取引の相手方が暴力団等でないことの確認も、書面上明らかとなるように書式を整えていくことも必要となるでしょう(表明確約条項、東京都暴排条例第18条1項参照)。

 3) 取引先のチェック
 この暴排条例制定を機に、暴力団やそのフロント企業といった反社会的勢力と取引関係を持ってしまっていないかの確認も必要となると思われます。
 取引先の名前や、役員名、株主名等をインターネットで検索し、反社会的勢力との関係が疑われるような情報がないかを確認することや、取引先事務所の外形や内装、面談した人物の服装や言動等について、取引の担当者から確認することなどで取引先のチェックを行うなどするとよいでしょう。

5. 暴排条例の意義
 暴排条例においては、市民や事業者に対する禁止措置等の定めもあります が、これを、企業等の活動を規制するものであると捉えるのは正しくないように思われます。
 平成19年に政府が策定した「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」においては、既に、反社会的勢力との一切の関係遮断の必要性が明らかにされていたところでありました。
 企業には、その社会的責任(CSR)として、反社会的勢力との一切の関係を遮断し、その資金源を断つことが従前から求められていたと言えます。
 上記指針の策定以降、各都道府県での暴排条例の施行や業界団体での取組等の暴力団排除機運は一層の高まりを見せており、世論の状況は、暴力団等の反社会的勢力との関係を有することは、これが明らかとなった場合には当該企業の存立そのものが脅かされるほどのリスクを抱えていると言っても過言ではない状況にあると思われます。
 こうした状況にある中、暴排条例の制定は、各企業に対して反社会的勢力との関係遮断の取組みを一層進める、あるいは、反社会的勢力との関係をこれまでは断ち切れずに仕方なく続けていた事業者に対してはその関係遮断を決断し、実行する機会を与えるものと言えるでしょう。
 即ち、反社会的勢力に対して取引を拒絶する場面において、「条例で禁止されている」こともその根拠とすることができるようになり、反社会的勢力との関係遮断をより進めやすくなったという見方もできるものと考えられます。
 したがって、暴排条例は、市民や事業者に対する禁止行為等を定めてその活動を規制するものではなく、企業の反社会的勢力との関係遮断を促進する有効なツールであるという認識を持つことが重要であると思われます。

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