不動産競売
1. 競売物件はなぜ発生するのか
バブル崩壊後の日本経済の停滞、構造的な不況による会社の倒産が相次ぎ、その会社の社長はもとより、その会社に雇用されていた従業員等も一切収入の道を断たれることになります。その時、社長や従業員が住宅ローンを抱えていたとすると、その支払が遅滞し、いずれは当該住宅に抵当権を設定していた金融機関が当該不動産を売却してそこから住宅ローンの貸付金を回収しようと考えます。
その際に使われる手段として、任意の売却か、または、抵当権の実行としての不動産競売手続です。金融機関が不動産競売手続を選択した場合に、競売物件が発生することになります。もっとも、競売手続と平行して任意売却を進める場合もあり、結果的に任意の売却で不動産の処分がなされることもあります。
これとは別に、裁判所が下した判決に基づいて、当該不動産を競売する手続もあります。強制競売手続といわれるものです。この場合にも、競売物件が発生します。
2. 競売物件の特色
では、このような競売物件にはどのような特色があるのでしょうか。
1) 競売手続が法定され、20%の保証金の提出が定められている
競売物件の特色として、一番大きな特色は手続が法律で決まっているということです。従って、手続に参加して、法定の要件を満たし、最高価格を付けた場合には当該物件を買い受けることができることになります。
また、入札に参加する場合の買受の申し出の保証として、入札書の提出と同時に最低売却価格の20%相当額を提供しなければなりません。
2) 買い受け後のアフターサービスや保証などは一切ない
たとえば、買受後に当該不動産を事実上不法に占拠する不法占有者の立ち退きがうまくいかない場合や、石垣や土がけが老朽化していて補修に多額の費用がかかる等の事後の問題については、基本的に何ら保証はなされません。
3) 買受物件の引渡が困難な場合がある
2)に関連しますが、買い受けた不動産に法的に居住する権利がなくても、事実上その不動産に居住している者がいる場合、その者の立ち退きが困難となる場合もよく見受けられるところです。
4) 買受物件の下見が困難
買い受け物件は、不動産屋さんが案内して内部を見せてくれるわけではありません。
一般の方が尋ねていっても、占有している方が、了解して内部を見せてくれることは通常考え難いものと思われます。そこで、物件内部もじっくり見て十分に検討して買い受けるということは通常困難なのではないかと考えられます。
3. 競売物件購入の注意点
競売物件を検討する際に、いわゆる3点セットと呼ばれる資料があります。
すなわち、1)物件明細書、2)現況調査報告書、3)不動産評価書です。
競売物件を購入するにあたっては、この3つの文書を十分に検討する必要があります。
(1) 3点セットとは
1) 物件明細書とは
裁判所の判定した競売物件を買い受けた際に引き継がなければならない賃借権等の権利関係を明示したものです。これは、現況調査報告書と不動産評価書等を執行裁判所が総合的に評価して判定したところが記載されており、3点セットの中でももっとも重要なものといわれております。
その中でも、もっとも重要なのは、買受人が引き受けなければならない物件に関する権利関係です。買受人が引き受けなければならない権利関係があるということは、もしも、当該物件を競落したとしても、引き受ける権利関係によっては、買受人が当該物件を利用できなくなる場合も考えられるのです。
引き継がなければならない権利として、たとえば、競売を申し立てた抵当権の設定登記以前から、賃貸され、賃借人に引き渡されていた場合には、当該賃借権は買受人が引きつがなければならない権利となります。
2) 現況調査報告書
執行官が現地に赴き、当該物件に立ち入ってその状況や占有者の有無等について調査した報告書です。当該物件の現状がどのようなものであるのかも、競売物件を取得するには大変重要なファクターになるものと思われます。
3) 評価書
評価書とは、裁判所が最低売却価格を決定するにあたっての重要な資料となるものです。実際に裁判所が指定した評価人が、物件を直接調査し、当該物件の不動産価値を評価したものです。
4. 入札方法、支払方法
入札方法としては、期日入札と期間入札があります。
期日入札は、入札期日に入札した後に、引き続き開札が行われ最高価買受申出人が定まります。
これに対し、期間入札の場合は入札期間内に入札書を執行官に提出し、開札期日に執行官が開札し、やはり最高価買受申出人が定まることになります。
最高価買受申出人が定まると、売却許可決定がなされます。
売却許可決定期日は、期日入札の場合は入札期日、期間入札の場合は開札期日から1週間以内の日に定められて利害関係人に通知されます。
裁判所は、売却不許可事由がないと認めたときは、売却許可決定を言い渡します。
売却許可決定が確定したときは、買受人は裁判所の定める期限(確定日から1か月以内)までに代金を裁判所に納付しなければなりません。
5. 特別売却
なお、不動産の入札または競り売りの方法によって売却を実施しても、最低売却価額以上での買い受けの申し出がなかったときは、執行裁判所は、執行官にそれ以外の方法で、不動産の売却を実施すべき旨を命ずることができます。これが特別売却と呼ばれるものであり、行うかどうかは執行裁判所の裁量であります。
特別売却の実施者は執行官であり、その方法はいわば特定または不特定の者と個別に折衝し任意の交渉により売却することになります。但し、この場合でも、その価格は直近の入札期日における最低売却価額以上によるものとし、特別売却でもこれを低減することはないものであります。
6. 所有権の移転等
買受人は、代金を納付したとき、当該物件の所有権を取得します。
この場合、裁判所は、嘱託により買受人への所有権移転登記を行うとともに、買受人に対抗できない権利の抹消登記も嘱託します。
また、裁判所は、代金を納付した買受人の申出により、買受人に対抗できない占有者や債務者が当該物件を占有している場合には、当該不動産を買受人に引き渡す旨を命じることができます。
7. まとめ
以上見てきましたように、不動産の競売手続は、手続が一般の方には、少なからず解りにくい面もあり、また、実際に買い受けた場合に、買受人が引き継がなければならない権利が実際にあるのかないのか等の判断も困難なものがあります。
そして、不動産は、生涯において、何度もない大きな買い物ですから、やはり、専門家である弁護士にご相談のうえ、十分な検討を加えて手続に参加されることをお勧めいたします。
なお、参考までに期間入札手続の流れを以下に図示いたします。
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