御器谷法律事務所

独禁法−不公正な取引方法


1. 不公正な取引方法とは、
 公正な競争を阻害するおそれがある(公正競争阻害性)行為のうち、公正取引委員会が指定する(行為要件)もの(法§2・(9))。
 この公正取引委員会の指定には、
(1) 一般指定:すべての業界に一般的に適用される指定
(2) 特殊指定:百貨店、スーパー、新聞業、海運業等の一定の業界のみを対象とした指定があります。
 なお、平成21年の独禁法改正により、法第2条9項が改訂正され、共同の取引拒絶(1号)、差別対価(2号)、不当廉売(3号)、再販売価格の拘束(4号)、優越的地位の濫用(5号)が法文化されました。

2. 禁止の趣旨
 不公正な取引方法は、独占禁止法上私的独占、カルテル(不当な取引制限)とともに禁止の対象となる三本柱の1つとされています(法§19、§8、§6)。
 不公正な取引方法に対する規制は、競争の実質的制限に至っていなくとも、公正な競争を阻害するおそれのある行為を規制して、私的独占やカルテルの予防ないしは補完をしようとしているものです。

3. 公正競争阻害性の意義
 「公正な競争」とは、本来いわゆる能率競争を意味するとされています。つまり、事業者が良質且つ低廉な商品やサービスを提供して顧客を獲得するものであるとされています。
 また、その「おそれ」とは、一般的ないし抽象的な危険性で足り、具体的に阻害されたことやその蓋然性が高いことまでは意味しないとされています。
 なお、各行為類型における公正競争阻害性の判断は、各行為要件毎に個別具体的になされなければならないものとされています。
 そして、この「公正な競争」は、具体的には、(1)自由な競争の確保、(2)競争手段の公正さの確保、(3)自由競争基盤の確保を指し、これを阻害すると(1)は競争の減殺、(2)は競争手段の不公正さ、(3)は競争基盤の侵害となるとされることがあります。
東芝エレベータテクノス事件−大阪高判 平成5年7月30日
 「本件各部品とその取替え調整工事とは、それぞれ独立性を有し、独立して取引の対象とされている。そして、安全性確保のための必要性が明確に認められない以上、このような商品と役務を抱き合わせての取引をすることは、買い手にその商品選択の自由を失わせ、事業者間の公正な能率競争を阻害するものであって、不当というべきである。」

4. 「一般指定」の読み方
(1) 「正当な理由がないのに」
 これに該当する共同の取引拒絶(1項)、不当廉売(6項)、再販売価格維持行為(12項)等はそれ自体公正競争阻害性が強く、いわゆる「原則違反」ないし「当然違法」とされる行為類型です。
(2) 「不当に」又は「正常な商慣習に照らして不当に」
 これに該当する単独の取引拒絶(2項)、差別対価(3項)、差別取扱い(4項、5項)、7項〜11項の行為類型、13項〜16項の行為類型は、外形上当該行為類型に該当しても即公正競争阻害性が認められる訳ではなく、個別のケースにつき行為者の市場での地位、シェア、行為の態様、目的、意図、効果、市場への影響、商品や役務の特性、流通取引の具体的状況等を検討して公正競争阻害性の有無が判断されることとなります。

5. 流通・取引慣行ガイドライン
 公正取引委員会は、平成3年7月、「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」を公表し、主として不当な取引制限及び不公正な取引方法に関する規制の観点から、独占禁止法上の考え方を明らかにしています。
 このガイドラインにおいては、一定の行為類型につき市場における有力な事業者として当該市場におけるシェアが10%以上、又はその順位が上位3位以内であることを一応の目安としているとの説明があります。

6. 具体的行為類型
公正取引委員会は、「一般指定」として次の行為類型を規定しています。
(1) 共同の取引拒絶(共同ボイコット)−1項
 正当な理由がないのに、自己と競争関係にある他の事業者(以下「競争者」という。)と共同して、次の各号のいずれかに掲げる行為をすること。   
ある事業者から商品若しくは役務の供給を受けることを拒絶し、又は供給を受ける商品若しくは役務の数量若しくは内容を制限すること。
他の事業者に、ある事業者から商品若しくは役務の供給を受けることを拒絶させ、又は供給を受ける商品若しくは役務の数量若しくは内容を制限させること。
(2) その他の取引拒絶(単独の取引拒絶等)−2項
 不当に、ある事業者に対し取引を拒絶し若しくは取引に係る商品若しくは役務の数量若しくは内容を制限し、又は他の事業者にこれらに該当する行為をさせること。 
(3) 差別対価−3項
 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和22年法律第54号。以下「法」という。)第2条第9項第2号に該当する行為のほか、不当に、地域又は相手方により差別的な対価をもって、商品若しくは役務を供給し、又はこれらの供給を受けること。
(4) 取引条件等の差別的取扱い−4項
 不当に、ある事業者に対し取引の条件又は実施について有利な又は不利な取扱いをすること。
(5) 事業者団体における差別的取扱い等−5項
 事業者団体若しくは共同行為からある事業者を不当に排斥し、又は事業者団体の内部若しくは共同行為においてある事業者を不当に差別的に取り扱い、その事業者の事業活動を困難にさせること。
(6) 不当廉売−6項
 法第2条9項第3号に該当する行為のほか、不当に商品又は役務を低い対価で供給し、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあること。
(7) 不当高価購入−7項
 不当に商品又は役務を高い対価で購入し、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあること。
(8) 欺瞞(ぎまん)的顧客誘引−8項
 自己の供給する商品又は役務の内容又は取引条件その他これらの取引に関する事項について、実際のもの又は競争者に係るものよりも著しく優良又は有利であると顧客に誤認させることにより、競争者の顧客を自己と取引するように不当に誘引すること。
 この行為類型については、特別法として「不当景品類及び不当表示防止法」(略して「景表法」)が成立しています。
(9) 不当な利益による顧客誘引−9項
 正常な商慣習に照らして不当な利益をもって、競争者の顧客を自己と取引するように誘引すること。
(10) 抱き合わせ販売等−10項
 相手方に対し、不当に、商品又は役務の供給に併せて他の商品又は役務を自己又は自己の指定する事業者から購入させ、その他自己又は自己の指定する事業者と取引するように強制すること。
(11) 排他条件付取引−11項
 不当に、相手方が競争者と取引しないことを条件として当該相手方と取引し、競争者の取引の機会を減少させるおそれがあること。
(12) 拘束条件付取引−12項
 法第2条第9項第4号又は前項に該当する行為のほか、相手方とその取引の相手方との取引その他相手方の事業活動を不当に拘束する条件をつけて、当該相手方と取引すること。
(13) 取引の相手方の役員選任への不当干渉―13項
 自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に、取引の相手方である会社に対し、当該会社の役員(法第2条第3項の役員をいう。以下同じ。)の選任についてあらかじめ自己の指示に従わせ、又は自己の承認を受けさせること。
(14) 競争者に対する取引妨害−14項
 自己又は自己が株主若しくは役員である会社と国内において競争関係にある他の事業者とその取引の相手方との取引について、契約の成立の阻止、契約の不履行の誘引その他いかなる方法をもってするかを問わず、その取引を不当に妨害すること。
(15) 競争会社に対する内部干渉−15項
 自己又は自己が株主若しくは役員である会社と国内において競争関係のある会社の株主又は役員に対し、株主権の行使、株式の譲渡、秘密の漏えいその他いかなる方法をもってするかを問わず、その会社の不利益となる行為をするように、不当に誘引し、そそのかし、又は強制すること。

7. 違反すると、
 事業者や事業者団体が不公正な取引方法に該当する行為をすると次のような効果が発生します。
(1) 排除措置
 公正取引委員会は、当該不公正な取引方法の差止め、契約条項の削除、実効性確保の手段の実行等の排除措置を命ずることができます(法§20)。
(2) 被害者による差止請求
 不公正な取引方法に該当する行為によって、その利益を侵害され又は侵害されるおそれがある者は、これにより著しい損害を生じ又は生ずるおそれがあるときは、加害者である事業者らに対し、その侵害の停止又は予防を請求して、裁判所に対し訴訟を提起することができます(法§24)。
 これが、いわゆる「私人による差止請求」であり、平成12年の独占禁止法の改正により新設された規定です。本ホームページの別項において詳細に説明しています。
(3) 損害賠償請求
 不公正な取引方法により損害を被った被害者は、その損害の賠償を加害者である事業者らに対して請求することができます(法§25、民法§709)。
(4) 罰則はなし
 不公正な取引方法については、刑事罰の適用はありません。
(5) 一部の不公正な取引方法は課徴金の対象
 共同の取引拒絶、差別対価、不当廉売、再販価格の拘束につき、公取委の排除措置命令ないし課徴金納付命令を10年以内に繰り返した場合には、課徴金納付命令の対象となります。(法第20条2〜5)。
 また、優越的地位の濫用を継続した場合には、課徴金納付命令の対象となります。(法第20条の6)。

8. 判決、審判例
森永商事事件−公取委 昭和43年10月11日審判審決
 立法技術的に、どのように経済実態を把握してどのように規制をするか、そのために、どのような指定のしかたをするかは、同項各号にき束された範囲で当委員会にゆだねられた裁量事項であって、右指定を一般的・抽象的なしかたでするか、個別的・具体的なしかたでするかは、き束された委任の趣旨ないし範囲内で、当委員会が裁量によって決することのできる事柄である。
 特殊指定が、特定の業界の実情に即し、当該業界において行なわれ、もしくは行なわれる可能性のある不公正な取引方法の類型を具体的にとらえて、これを規制せんとするものであるのに対し、一般指定は、わが国の経済事情に対処し、ひろくあらゆる業界において行なわれ、もしくは行なわれる可能性のある不公正な取引方法の類型を一般的にとらえてこれを規制せんとするものであって、その性質上、特殊指定に比すれば、ある程度抽象的であることを免れないが、しかしそれは同法第2条第7項所定の不当な事業活動の内容を、可能な限り具体化しているものであって、委任の趣旨ないし範囲を逸脱するものではない。

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