御器谷法律事務所

時 効

1. 時効とは何か?

 時効とは、一定の時の経過により権利が消滅したり、逆に権利を取得できる制度です。
 例えば、飲み屋での飲食料は 1年間請求しなければ時効により消滅する場合があり(このように時効期間の経過により権利が消滅する時効を「消滅時効」といいます)、また他人の土地を自分のものだと思って20年占有し続ければ、場合によっては、その土地を時効により取得することができることもあり得るのです(このように時効期間の経過により権利を取得できる時効を「取得時効」といいます)。
 このような制度は、一見すると正義に反しているようにも見受けられます。
 では、なぜこのような制度があるのでしょうか。
 その存在理由としては、一般的には以下のことが挙げられるといわれております。
(1) 公益、社会秩序維持
 一定の事実状態が継続すると、それを基礎にさまざまな法律関係が築き上げられますので、それを覆すことがかえって社会を不安定にすることもあるので、これを覆さずにそのまま法律関係そとすることが社会の法律関係の安定にとって有益だからです。
(2) 証拠採用の困難
 永い時間の経過の後では、永続した事実状態が真実の法律関係と合致しているのかどうか、確実な証拠によって証明することが困難な場合があるからです。
(3) 権利の上に眠る者は保護しない。

2. 時効の援用、時効利益の放棄
 もっとも、このように時効期間が経過すれば当然に権利を取得したり、当然に権利を失うというものではありません。時効の利益を受ける者が時効の利益を受けたいという意思表示をすることが必要です。これを「時効の援用」といいます。
 先ほどの例でいえば、たとえ時効期間が経過してもう飲み代を払わなくていい場合があるとしても、自分が飲み食いしたお金は自分できちんと払ってけじめをつけたいという方もいるはずです。また、他人の土地をずっと自分のものだと思って占有し続けてきたとしても、人のものであった土地をお金も払わないで自分の物としてしまうことは元の所有者に申し訳ないと思う方もいるはずです。 そのような方の良心を尊重するため、時効の効果を確定的に発生させるためには時効の援用が必要とされ、時効の効果の発生は時の経過により当然に生じるものではないとされているのです。そして時効の完成による恩恵を受けたくないのであれば、時効の完成後にその利益を放棄すればいいことになります。

3. 時効の中断

 時効期間が経過した後にひとたび時効を援用されてしまったら、飲み屋のご主人がその客に飲み代を請求することや、もとの土地の所有者がその土地を取り戻すことは非常に困難になります。このような事態を防ぐために、法は「時効の中断」というものを認めています。時効の中断とは、今まで進行してきた時効期間がゼロになり、振り出しに戻るという制度です。例えば、時効期間が10年で7年経過した段階で時効の中断が生じた場合、それまでの7年はその段階でゼロに戻ってしまい、またゼロから10年の期間の経過をカウントしなければならなくなるのです。
 民法に定められた時効の中断事由としては、「請求」、「差押、仮差押または仮処分」、「承認」の 3つがあります。「請求」はただ単に請求すればいいというものではなく、催告(請求)したあと 6ヶ月以内に訴えを提起するなど、裁判上の請求その他の裁判所の関与する手続をとらなければなりません。

4. 時効期間
(ア) 取得時効(権利の取得を認める時効)
権利 占有者の主観 時効期間 その他の要件 時効の起算点
所有権及び所有権以外の財産権(賃借権や地上権など)
自分に所有権があると信じ、かつそう信じることにつき過失がない場合
10年
所有の意思、平穏(占有の取得につき暴行などの違法手段を用いていないこと)、公然、占有の継続
占有の開始または権利行使することができる時から
上記以外の場合
20年

(イ) 消滅時効(権利の消滅する時効)
T原則
1)時効の起算点:権利を行使する上での法律上の障害がなくなったときから(法律上権利を行使できる状態になったときから)、例えば弁済期が到来したときなど
 
2)時効期間
@債権の消滅時効
 民法上10年で時効によって消滅すると規定されております。もっとも商行為によって生じた債権(商事債権)は 5年で消滅するという商法上の規定があります。また、後述するように、各種の短期消滅時効が規定されておりますので注意が必要です。

A債権または所有権以外の財産権の消滅時効
 民法上20年で時効によって消滅すると規定されております(ただし解除権や取消権等は債権に準ずるものとして債権と同様に10年もしくは 5年の消滅時効期間が適用されるとする判例が多いようです)。

B確定判決またはそれに準ずる公権力により確定した権利の消滅時効
 確定判決などは、民法上、たとえ10年より短い期間を定めてあっても時効期間が10年になると規定されています。
    
U時効期間一覧(あくまでも参考であり、事案によって期間が異なる場合があります)
(1) 売買
権利 時効期間 時効の起算点
生産者、卸売商人、小売商人の商品売却代金請求権
2年
弁済期が定まっているならそのときから、定まっていなければ契約成立時から
上記以外の売買代金請求権、目的物引渡請求権など
10年
(商事債権であれば 5年)

(2) 消費貸借
権利 時効期間 時効の起算点
貸金債権
10年
(商事債権であれば 5年)
返す時期を定めたのならそのときから、定めてなければ借りたときから相当期間経過後

(3) 賃金、報酬
権利 時効期間 時効の起算点
労働者の給料 2年
請求できる日から(給料日等)
取締役の報酬 5年

(4) 工事の請負代金等
権利 時効期間 時効の起算点
工事の請負代金請求権
3年
工事が終了した日から
ただし、特約があればそれに従う
居職人、製造人の債権
(※1,※2)
2年
居職人、製造人が相手に対して有する債権
ただし、特約があればそれに従う
※1 居職人とは、自分の仕事場で注文を受けて、他人のために仕事をする者、具体的には美容師、クリーニング業など。
※2 製造人とは、注文を受けて物に加工して他の物を製造する者、具体的には家具製造人、靴職人など。


(5) 損害賠償請求等
権利 時効期間 時効の起算点
債務不履行による損害賠償請求権
10年
5年
(商事債権)
本来の債務の履行を請求できるときから
不法行為による損害賠償請求権
3年
(不法行為の時から20年)
損害及び加害者を知ったときから
不当利得返還請求権
10年(原則)
権利発生時から

(6) 手形に関する権利
権利 時効期間 時効の起算点
約束手形の振出人、為替手形の引受人に対する請求権
3年
満期日
裏書人、為替手形の振出人に対する遡求権
1年
拒絶証書の作成日付、その作成が免除されている場合は満期の日から
保証人に対する遡求権
1年
呈示期間経過の翌日
手形を受け戻した裏書人、保証人以外の裏書人、為替手形の振出人に対する再遡求権
6ヶ月
手形を受け戻した日または訴えられた日から
満期白地手形の白地補充権
5年
手形の振出日から

(7) 小切手に関する権利
権利 時効期間 時効の起算点
所持人から裏書人、振出人に対する遡求権
6ヶ月
呈示期間経過の翌日
小切手を請け戻した者のその前者に対する再遡求権
6ヶ月
小切手を受け戻した日又は訴えを受けた日から
支払保証をなした支払人に対する小切手上の権利
1年
所持人については支払い呈示期間が経過した翌日から、再遡求権についてはその者が小切手を受け戻した日または訴えを受けた日から

(8) 公訴時効 - 刑事訴訟法第250条
人を死亡させた罪、禁錮以上(※) 時効の起算点等
罪責 時効期間
犯罪行為が終わったときから。
なお、共犯の場合には、最終の行為が終わった時から、すべての共犯に対して時効の期間を起算します。
犯人が国外に逃亡している場合等には、時効の進行が停止することがあります。
平成16年改正。

平成22年4月改正施行
殺人罪等、死刑を含む罪についての時効は廃止されました。
無期の懲役又は禁錮にあたる罪
30年
長期20年以上の懲役又は禁錮にあたる罪
20年
上記以外の罪
10年
上記※以外
罪責 時効期間 時効の起算点等
死刑にあたる罪
25年
犯罪行為が終わったときから。
なお、共犯の場合には、最終の行為が終わった時から、すべての共犯に対して時効の期間を起算します。
犯人が国外に逃亡している場合等には、時効の進行が停止することがあります。

無期の懲役又は禁錮にあたる罪
15年
長期15年以上の懲役又は禁錮にあたる罪
10年
長期15年未満の懲役又は禁錮にあたる罪
7年
長期10年未満の懲役又は禁錮にあたる罪
5年
長期5年未満の懲役、禁錮又は罰金にあたる罪
3年
拘留又は科料にあたる罪
1年

(9) 税金の消滅時効
税金の種類 時効期間 時効の起算点
所得税
5年
(ただし、不正行為により納税を免れた場合は 7年)
法定納期限から。
ただし、納付の督促や差押えが行われた場合には、時効は中断することもあります。
住民税
固定資産税
法人税
この時効につきましても、遠慮なく当事務所にご相談下さい

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