御器谷法律事務所

私的独占に関する判決と審決

「私的独占」に関しては、次のような裁判所の判決や公正取引委員会の審決があります。

(1) 野田醤油(しょうゆ)事件東京高等裁判所 昭和32年12月25日判決
 プライスリーダーによる再販売価格維持行為を「支配」と認めた。
「私的独占を成立せしめる行為として他の事業者の事業活動を支配するとは、原則としてなんらかの意味において他の事業者に制約を加えその事業活動における自由なる決定を奪うことをいうものと解するのを相当とする。しかしこのことから一定の客観的条件の存するため、ある事業者の行為が結果として他の事業者の事業活動を制約することとなる場合はすべてここにいう支配に当らないとするのは狭きに失するものといわなければならない。なんとなれば、法は支配の態様についてはなんらの方法をもつてするかを問わないとしているのであつて、その客観的条件なるものが全く予期せざる偶然の事情であるとか、通常では容易に覚知し得ない未知の機構であるとかいう特別の場合のほかは、一般に事業者はその事業活動を営む上において市場に成立している客観的条件なるものを知悉しているものというべきであるから、自己の行為がその市場に存する客観的条件にのつて事の当然の経過として他の事業者の事業活動を制約することとなることは、当然知悉しているのであつて、かような事業者の行為は結局その客観的条件なるものをてことして他の事業者の事業活動を制約することに帰するのであり、ここにいう他の事業者の事業活動を支配するものというべきであるからである。本件で市場に存する客観的条件とはしよう油業界における格付及びそれにもとづくマーク・バリュー、品質、価格の一体関係から他の生産者が原告の定めた価格に追随せざるを得ない関係をさすことは明らかであり、このような市場秩序の存するところで原告がその再販売価格を指示しかつ維持し小売価格を斉一ならしめれば、他の生産者はおのずから自己の製品の価格をこれと同一に決定せざるを得ざるにいたり、その間価格決定につき独自の選択をなすべき余地はなくなるというのであつて、これがすなわち原告の価格支配であるとする審決の所論は、そのような市場秩序があるといい得るかどうか、原告が小売価格を斉一ならしめているかどうかの事実の有無は後に見るとおりであるが、それはとにかく、その論理の構造においてはなんら不合理なものあるを見ないのである。」

(2) 雪印乳業・農林中金事件公取委 昭和31年7月28日審決
 融資と生乳の販売等による他の事業者の「排除」。

(3) 東洋製罐事件公取委 昭和47年9月18日審決
 株式所有、役員派遣、供給停止等による支配、排除。
「東洋製罐は、本州製罐、四国製罐、北海道製罐および三国金属の事業活動を支配し、また、かん詰製造業者の自家製かんについての事業活動を排除することにより、公共の利益に反して、わが国における食かんの取引分野における競争を実質的に制限しているものであり、これは私的独占禁止法第二条第五項の規定に該当し、同法第三条前段の規定に違反するものである。」

(4) 日本医療食品協会事件公取委 平成8年5月8日審決
「協会及び日清医療食品は、六一年協定及び登録方針に従い、医療用食品の登録制度、製造工場認定制度及び販売業者認定制度を実施することによって、医療食品を製造又は販売しようとする事業者の事業活動を排除するとともに医療用食品の製造業者の販売先並びに医療用食品の販売業者の仕入先、販売先、販売価格、販売地域及び販売活動を制限してこれらの事業者の事業活動を支配することにより、公共の利益に反して、我が国における医療用食品の取引分野における競争を実質的に制限していたものであって、これは、独占禁止法第二条第五項に規定する私的独占に該当し、同法第三条の規定に違反するものである。」

(5) パチンコ機製造特許プール事件公取委 平成9年8月6日審決
 特許プールによる新規参入の排除。
「一〇社及び遊技機特許連盟は、結合及び通謀をして、参入を排除する旨の方針の下に、遊技機特許連盟が所有又は管理運営する特許権等の実施許諾を拒絶することによって、ぱちんこ機を製造しようとする者の事業活動を排除することにより、公共の利益に反して、我が国におけるぱちんこ機の製造分野における競争を実質的に制限しているものであって、これは、特許法(昭和三四年法律第一二一号)又は実用新案法(昭和三四年法律第一二三号)による権利の行使とは認められないものであり、独占禁止法第二条第五項に規定する私的独占に該当し、独占禁止法第三条の規定に違反するものである。」

(6) パラマウントベッド事件公取委 平成10年3月31日審決
 同社仕様書による入札による排除、落札予定者・落札価格決定による支配。
「パラマウントベッド社は、財務局発注の特定医療用ベッドの指名競争入札等に当たり、都立病院の入札事務担当者に対し、同社の医療用ベッドのみが適合する仕様書の作成を働きかけるなどによって、同社の医療用ベッドのみが納入できる仕様書入札を実現して、他の医療用ベッドの製造業者の事業活動を排除することにより、また、落札予定者及び落札予定価格を決定するとともに、当該落札予定者が当該落札予定価格で落札できるように入札に参加する販売業者に対して入札価格を指示し、当該価格で入札させて、これらの販売業者の事業活動を支配することにより、それぞれ、公共の利益に反して、財務局発注の特定医療用ベッドの取引分野における競争を実質的に制限しているものであって、これらは、独占禁止法第二条第五項に規定する私的独占に該当し、独占禁止法第三条の規定に違反するものである。」

(7) エム・ディ・エス・ノーディオン事件公取委 平成10年9月3日勧告審決
「ノーディオンは、日本メジフィジックス及び第一ラジオとの間において、それぞれ、平成八年から一〇年間、その取得、使用、消費又は加工するモリブデン九九の全量をノーディオンから購入する義務を課す契約を締結して、他のモリブデン九九の製造販売業者の事業活動を排除することにより、公共の利益に反して、我が国におけるモリブデン九九の取引分野における競争を実質的に制限していたものであり、これは、独占禁止法第二条第五項に規定する私的独占に該当し、独占禁止法第三条の規定に違反するものである。」

(8) 北海道新聞社事件公取委 平成12年2月28日審決
 商標登録、通信社への働きかけ、大幅割引による広告集稿等による函館新聞社の排除。
「道新社は、函新社の参入を妨害しその事業活動を困難にする目的で講じた函新社が使用すると目される複数の新聞題字の商標登録の出願等の函館対策と称する一連の行為によって、同社の事業活動を排除することにより、公共の利益に反して、函館地区における一般日刊新聞の発行分野における競争を実質的に制限しているものであり、これは、独占禁止法第二条第五項に規定する私的独占に該当し、独占禁止法第三条の規定に違反するものである。」

(9) 有線ブロードネットワークス事件−公取委 平成16年10月13日勧告審決
「有線ブロードネットワークス及び日本ネットワークヴィジョンは、通謀して、キャンシステムの音楽放送事業に係る事業活動を排除することにより、公共の利益に反して、我が国における業務店向け音楽放送の取引分野における競争を実質的に制限していたものであって、これは、独占禁止法第2条第5項に規定する私的独占に該当し、独占禁止法第3条の規定に違反するものである。」

(10) インテル事件−公取委 平成17年4月13日勧告審決
インテル社製CPUにかかわる割戻金ないしMDFと称する資金の提供という、いわゆる忠誠リベートを提供することにより競争事業者製のCPUを購入させないようにしたことが、「排除」と認定された。
「日本インテルは、前記事実の2(1)記載の5社に対するCPUの販売に係る競争事業者の事業活動を排除することにより、公共の利益に反して、国内パソコンメーカー向けのCPUの販売分野における競争を実質的に制限しているものであって、これは、独占禁止法第2条第5項に規定する私的独占に該当し、独占禁止法第3条の規定に違反するものである。」

(11) ニプロ事件−公取委 平成18年6月5日審決
被審人が、株式会社ナイガイとのアンプル用の生地管の取引に関し、株式会社ナイガイ及び内外硝子工業株式会社の輸入生地管の取扱いをやめさせ、又は一定限度に制限する目的で、(1)株式会社ナイガイに対してのみ、平成7年4月以降の販売価格の引上げ、手形サイトの短縮及び特別値引きの実施の取りやめを申し入れた行為、(2)平成9年6月及び7月ころの株式会社ナイガイのアンプル用生地管の発注に対し、当該発注に係る生地管が同社が輸入している生地管と同品種のものであることを理由に受注を拒絶した行為並びに(3)平成11年3月ころ以降、前記(1)の販売価格の引上げを前提として、株式会社ナイガイの生地管購入代金債務に対する担保の差し入れ又は代金の現金決済のいずれかの条件以外での生地管の取引には応じないとした行為は、独占禁止法第3条の規定に違反するものである。

(12) NTT東日本事件−公取委 平成19年3月26日審判審決
被審人が、光ファイバ設備を用いた通信サービス(以下「FTTHサービス」という。)の提供において、平成14年6月1日以降行った別紙1記載の行為は、被審人の光ファイバ設備に接続して戸建て住宅向けFTTHサービスを提供しようとする事業者の事業活動を排除することにより、東日本地区における戸建て住宅向けFTTHサービスの取引分野における競争を実質的に制限していたものであって、これは、独占禁止法第2条第5項に規定する私的独占に該当し、同法第3条の規定に違反するものであり、かつ、当該行為は、既になくなっていると認める。
 (別紙1)
被審人は、平成14年6月1日以降、戸建て住宅向けのFTTHサービスとして新たに「ニューファミリータイプ」と称するサービスを提供するに当たり、被審人の電話局から加入者宅までの加入者光ファイバについて、1芯の光ファイバを複数人で使用する分岐方式(以下「分岐方式」という。)を用いるとして、ニューファミリータイプのFTTHサービスの提供に用いる設備との接続に係る接続料金の認可を受けるとともに、当該サービスのユーザー料金の届出を行ったが、実際には分岐方式を用いず、電話局から加入者宅までの加入者光ファイバについて1芯を1人で使用する方式(以下「芯線直結方式」という。)を用いて当該サービスを提供した。被審人は、当該サービスのユーザー料金を、当初月額5,800円、平成15年4月1日以降は月額4,500円と設定したが、いずれも、他の電気通信事業者が被審人の光ファイバ設備に芯線直結方式で接続してFTTHサービスを提供する際に必要となる接続料金を下回るものであった。

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